偽者の騎士団長
記憶を取り戻したところで邸宅へ。
戻ると早々に異変があった。
え……なんだか騒がしい。
庭に到着するとバルザックが慌ただしく駆け寄ってきて、息を切らしながら汗を拭っていた。
「た、大変です。お嬢様……ルドラ様」
肩で息をするほどにバルザックはパニック状態だった。
「なにがあったの?」
「お二方が不在の間に起きたことです。大勢の騎士が押し寄せて……『今のフェイルノートは偽者だ!』と、そのように騒ぎ立ててきたのです」
すると庭には10人、20人と騎士が増えていく。
ガウェイン騎士団だけではない他の騎士団も乗り込んできていた。どうしてこんなに……!?
はっとルドラの方を向くと、彼は仮面をつけていた。
「何事だ」
彼は『フェイルノート』として騎士たちに問う。
大勢いる騎士の中のひとりが前に出て「あなたは偽者のフェイルノートだ! ならば騎士団を率いるはこの私。そして、クリス様もあなたに相応しくないというわけだ」と、厳しい口調で言い放ってきた。
な、なんでそうなるの……!
「ほう、ならば“決闘”を望むか」
人数は更に増え、30人ほどがルドラを取り囲む。いくらなんでも、こんな人数相手では……。
ていうか、なんでこんなことに。
気になってバルザックに聞いてみた。
「こうなった原因は?」
「ヴァレリア様です。彼女が騎士たちに情報を吹き込み……このような事態に」
ヴァレリア!
そう、わたくしとルドラの仲を引き裂こうというのね。
でも、そうはさせない。
わたくしは勘違いを正す為に、騎士たちに真実を放そうとした――けれど。
「いいんだ、クリス」
「でも……!」
「彼らは私が偽者のフェイルノートだという。ならば、ここで“本物”であることを証明しよう」
「え……」
「大丈夫。兄さんの強さは間近で見て感じているからね」
そうね。ルドラならフェイルノートを演じられる。双子なのだから!




