わたしを愛しなかった罰 Side:ヴァレリア
◆Side:ヴァレリア
ローウェルが捕まったことは意外だった。
それ以外は“計画通り”。
わたしはクリスを絶対に許せない。
フェイルノートを奪った憎き女。彼の心にはクリスしかなかった。
何度も気持ちを伝えても最後までフェイルノートは振り向かなかった。
最初に彼に目をつけたのは、わたしだったのに……!
大人になって戦争が勃発。
センチフォリア帝国とエルドリア王国が衝突。
でも、わたしにとってはどうでもいいことだった。そんなことよりもフェイルノートが欲しかった。
もう一度、この気持ちを伝えようとすると彼は、やはりクリスしか頭になかった。戦争が終わったら結婚するとまで断言していた。
……ああ、終わった。
わたしは絶望した。
クリス……クリス!!
だから作戦を練り、わたしは敵国であるエルドリア王国と接近。王妃となる代わりに、莫大な支援を受けられるようになった。
メイドのルーナを仕込んだりしたけど、彼女には期待していない。
それよりもフェイルノートだわ。
彼が手に入らないなら殺すしかないじゃない。
エルドリア王国の暗殺者を雇い、護衛もつけて、わたしは戦場へ向かった。
そこでフェイルノートを目撃。
最後の忘却の魔法を使い、彼の記憶を全て抹消。
ぼうっとしているところを暗殺者の手でトドメを刺した。彼は直ぐに動かなくなり―ー死んだ。
「いい気味だわ、フェイルノート。わたしを愛しなかった罰よ」
と、思ったけれどフェイルノートは微かに息があった。
「…………ク、リス。あいして……いる」
「まだその女の名を口にするの! さっさと死になさい!!」
忘却で忘れているはずなのに、なぜなの!!
彼の愛はそこまで深いものだったの!?
なによ、なによなによ!!
剣を奪い、心臓に突き刺した。今度こそ死んだわ!
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そして、いったんガウェイン騎士団の遠征が終わった。
フェイルノートが死亡し、騎士団は大きく傾いたという。これで騎士団もおしまいね!
そう思ったけれど、辺境伯の支援によって再び持ち直したという。
……よりによってクリスの父とはね。
その後、ローウェルが捕まり、妹のリゼリアも酸を浴びてヒドイ目に遭った。なぜ、我が家だけがこんな不幸な目に遭わなきゃならないの!
あまりにヒドイでしょう。
もういいわ。
次はクリスを消し去るのみ……!
あの女さえ亡き者にできれば、こちらの勝ち。手に入らないフェイルノートも、目障りなクリスも消えてしまえばいいのよ!!
わたしだけが幸せになれればいいの。
絶望的な悲しみを与える為、まずはルドラを暗殺する。かつて彼の兄フェイルノートを葬ったように。




