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最高の朝と深い森へ

「おはよう、クリス」

「お、おはようございます……」


 晴れやかな笑顔で起床するルドラ。朝日と見間違えるほどとても爽やかすぎて(まぶ)しかった。

 いえ、それよりもこの状況。

 昨晩はどうしたっけ……?


 まるで記憶がない。

 また記憶障害かなと心配になったけれど、直ぐに思い出した。

 晩餐(ばんさん)でお酒を(たしな)み、あっさりと酔いつぶれてしまったのだ。

 ああ、それで。


 でもベッドを共にするなんて……酔った勢いかも。

 まあいいか、おかげで朝から幸せ。



「朝食にしよう。それから深い森へ」

「ありがとうございます」


 ルドラは約束を憶えてくれていた。そう、今日はあの森へ向かい記憶を辿る。真実を知るために。


 ・

 ・

 ・


 朝食はあのメイドではなく、バルザックが作ってくれた。

 事件後、メイドのルーナは解雇。

 今はどこにいるか分からない。

 この邸宅(いえ)周辺は、数人の騎士と番犬が常駐していると聞く。だから、そう簡単には復讐には来れないはず。安全ね。



「――それにしても、バルザックの作る朝食はとても美味しいね」



 満足そうに微笑むルドラ。

 まさか、ここでもバルザックの手料理を食べることになるとは思わなかった。けれど、彼なら間違いない。シェフ顔負けの極上の味なのだから。


「そう言って戴けて光栄の極みでございます」


 誇らしげに腰を折るバルザック。

 今後も連れ歩こうかとわたくしは考えた。


「そういえば、バルザックは元騎士のようだね」


 ルドラがそう視線を送ると彼は「はい、遥か昔のことですが」と遠慮するように言葉を返す。へえ、知らなかった。

 バルザックは、わたくしが幼少の頃から仕えていた執事。だから、それ以前のことは知らなかった。普段、身の上話をするタイプでもなかったから。


 もしかしたら、はじめてバルザックのことを知ったかもしれない。


「ガウェイン騎士団の前身『モルゴース騎士団』の騎士団長だったはず」


 しかも英雄的行動によって帝国を勝利に導いた――と、とルドラは両肘をテーブルにつき両手を組んで意味深に語った。


 モルゴース騎士団。

 そういえば、子供の頃にお父様がよく話してくれたような。


「いえいえ、とんでもございません。私はただの執事でございます」


 やはり語りたくないのか、バルザックは認めなかった。


「そうか。ならいい」


 一方のルドラも深追いはしなかった。



 朝食を食べ終え、庭に出た。

 いよいよ『深い森』へ向かう時が来た。


 今日はやや曇り。雨が降るかもしれない。だとしても向かわねばならない。そんな気がしていた。



「ルドラ様、わたくしの準備は出来ております」

「ああ、では向かおうか」



 馬の手綱を引くルドラ。

 この黒い馬に乗って深い森を目指すという。確かに雨が降りそうだから、早めに行った方がいい。

 それに、久しぶりの乗馬には心が躍った。


「で、では……」

「大丈夫。私が支えるから」

「ありがとうございます」


 ひょいと馬に乗り、背後にはルドラが軽快に乗馬。


 そして、馬も森を目指して走り始めた。

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