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王国より帰郷した王妃の謀略 Side:マイナ

 お姉さま……。お姉さまを絶対に許せない……!



「…………」



 地獄のような苦しみの中、私は目を覚ました。

 赤く染まったベッドの上。

 あぁ、そうか。

 右腕を斬られ、重症を負ったのだった。だから血がにじんでしまっていた。


 お姉さまを亡き者にしようとしたら、ルドラが反撃してきて……それで、私は腕を失ったのだ。その後のことは覚えていない。


 気づいたら知らない場所に運ばれていた。


 ここは我が家ではない。

 知らないどこか。


 ぼうっとしていると、部屋の扉が開いた。



「起きられたのね、マイナ」

「誰…………」



 そこには片眼鏡を掛け、綺麗なドレスに身を包む大人びた女性がいた。赤毛が神秘的に映った。



「わたしの名は『ヴァレリア・ラングフォード』。この度、エルドリア王国から帰郷しましたのよ」



 と、静かに語る女性。


 え……『ラングフォード』……?


 それはローウェルの――まさか。この女性は……!



「貴女は……!」

「そうよ。私はローウェルの姉」



 驚いた。ローウェルから妹のリゼリアがいると聞いたことがあったけれど、姉の存在は知らなかった。


「お姉さんがいたなんて……」

「ええ、まあ。エルドリア王国の王子様に嫁いだもので」

「そ、そうだったのですか。ということは王妃様……! 助けてくれたのも王妃様なのですね」

「それより、マイナ……」


「……はい?」


「貴女の姉、クリスのことを教えてくれないかしら」

「クリスお姉さまのことを?」

「詳しく教えてくれたら、クリスの“暗殺”をしてあげる。そのつもりで帰ってきたのだけどね」


「暗殺!?」



 聞きなれない単語に、私はつい声を上げてしまった。

 ハッとなって口元を抑える。

 けれど、ヴァレリアは慌てる様子もなかった。



「大丈夫。ここはラングフォード家の領地だから」



 私はそんな場所まで移されたんだ。……お父様は、私を完全に見放しているようだ。別に構わないけど。



「解かりました。では、クリスお姉さまのことを全て話します」

「ありがとう」



 これまであったお姉さまの悪逆非道の数々。計画的な婚約破棄。ローウェルを陥れたこと。大監獄バーバヤーガへ収監させたこと。

 副団長ルドラと共謀してローウェルや他の騎士も潰したと、悪行を全て話した。


 ……少しウソも混じっているけど、どうせ分からない。


 この方がお姉さまを抹殺してくれるのなら、なんだってするわ!


 すべてを話し終えるとヴァレリアは、静かに立ち上がった。



「いかがでした?」

「良い話を聞けたわ、マイナ」


「では、お姉さまを消してくれるんですね!?」



 期待を向けると、ヴァレリアは笑顔から一点して冷徹に私を見つめた。……な、なに? なんでそんな目を私を……?


 意味が分からなかった。


 ウソ偽りなく、真実を話したじゃない!



「…………情報は入手できた。マイナ、もう貴女に用はないわ」


「え…………」



 頭上から透明な液体が流れてきた。


 それが皮膚を伝うと、急に激痛に苛まれて私は混乱した。



「マイナ、それは『酸』よ」


「いっ……痛い。痛いいいぃぃ! いや! いや、いやああああああああああああああ…………!!」



 さ、酸ですって!?


 なんでそんなモノを私に! え、意味が分かんない! まって、まってよ……お願いだから、命だけは……!!



「ミステル家の関係者は全員許さない」



 は?


 なんで?


 最初から私を殺すつもりだったの…………!?



 ――あぁ、もうダメ……。



 急速に広がる激痛と苦痛。もう耐えられない……。おねえさま……ぜんぶ、おねえさまの……せい、よ。



 こんなことなら……ローウェルなんて誘惑しなきゃ……よかっ――。

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