スライムって雑魚キャラじゃないの…?手ごわいっていうか死ねる
勇者の初めての戦闘....
孤独な闘い...激しい攻防....痛恨の一撃
彼はそれでも諦めず闘いを挑む!!
「お金を稼ぎます」
昨日起きた悲しい事件によって財布がそこを尽き、宿屋を追い出された俺たち(勇者パーティー)は次の行動を高らかに宣言した。
この世界には魔物というものが存在し凶暴で被害が出ることも少なくない。町や村が襲われずに人が平和に暮らしていけるのは教会があることによって結界が張られるのだという。ゆえにどの村や町にも必ず教会があり神父様がいる。そして、その魔物は時に素材となり様々な加工品となったりあるいは魔物が持っているものがそのまま強力な装備品というケースもあったりする。
「それでその素材や装備品をお金に換えてくれるのがこのモンスター換金所ってわけか。まさか俺がこの店に来ることになろうとは」
魔物を狩って生活するというのは不安定で危険だが、同時に増えすぎた魔物を減らし行商人や旅人を守るという役割を担っており子供たちからの人気は高い。子供の頃になりたいランキング上位だが実際安定とはかけ離れた職業であり、大人になるとなりたくないランキング下位になる。
「それは、他の町の話でここら辺の魔物は比較的弱くて誰でも勝てるから商売として成り立たないのよね」
ここらに出る魔物は比較的弱いどころかおそらく最弱レベルだ。だからこそ素材の価値はなく売り上げは上がらない。酒場の皿洗いの方が稼げる。
「それはそうだ。だが、俺たちは使命をもった勇者だ。戦いの経験値を得る必要もある。ならば戦って強くもなりお金も溜まるこの方法が一番だ」
「そういやそうだったわね」
「そう、このままじゃ俺は王様のお金で酒場を盛り上げただけのやつだ。バレたら確実に国に追われる」
国に追われるという響きはカッコいいが理由が酷すぎる。
こうして俺たちは町の外に出ることになった。起伏が少ない草むらにところどころ木がありその木の数の倍ほどの数の魔物が視界に入る。
「じゃあさっそく初バトルといこうか。ジーニャこれが勇者の伝説の始まりになるぜ」
「そうね、死んだら語り継いであげるわよ」
そばの木の日陰で横になる。怖いのは魔物が襲ってくることよりこの状況を王様に告げられることかもしれない。
王様から貰った装備はここらの魔物にたいては十分すぎるほどの装備だった。ほんとなら、、、
「ねえ、ユウちゃん無理よ。そりゃ全身鉄装備は防御力すごいしここらの魔物が何してもそりゃ無傷で済むよ」
おまけに剣も鉄の剣。見た目は誰が見てもいっぱしの冒険者だった。ただ問題はその中身。本人がいっぱしどころか初心者も初心者なのだ。
「お、、重い、、、そりゃそうだよな鉄だもんな。よく考えてよ。全身に鉄を付けて動ける人いる?」
「まあいっぱしの冒険者はみんな付けてるよ。でもユウちゃん普通の人じゃん。なんか勇者なだけで」
「なんか勇者なだけ....」
「どこからでもかかってこい!」
目の前にいたスライムが反応した。
鉄の装備は諦め元々着ていた服を売りその金で購入した旅人用の動きやすい服を武器はその辺に落ちてた良い感じの木の枝にした。
「ねえ、ジーニャ俺さこういう時いつも思うんだよ。最初から強い装備なら無双できるよなーってなんで最初は棒とか弱そうな剣なんだろって。でも、違うんだよ。みんな最初は使えないんだよ。慣れてない武器使うのが強いとは限らないんだよ」
「いいからはよスライムと戦えや」
横になり日陰でそれを見るジーニャ。
スライムに向けてダッシュし手に持っていた木の枝を思いっきり振り下ろす。スライムは避けず攻撃は命中するがそのプルプル具合に大きく跳ね返る。そこでよろけたところでスライムが体当たりしたきたがそれをギリギリで避ける。体当たりの後、敵を見失ったスライムが一瞬止まるとその隙を逃さず再び木の枝を振り下ろす。
「ちっなかなかやるな!」
うっわこいつまじでスライムと良い勝負じゃん。
「ユウちゃーんがんばれー」
本音を押し殺す。
スライムの基本的な攻撃方法は体当たりだ。大きさは個体にもよるがおよそ1メートルほど。膝ぐらいだ。そしてこれはあまり知られていないがプルプルのくせに重さは50キロほどある。想像してみて欲しい。50キロの塊が自分に対して突っ込んでくるという状況をしかもやつらは割と速い。戦い慣れていれば問題ないがこの主人公は昨日突如勇者として祭り上げられただけの一般人である。つまり、体当たりしてくるスライムに対して剣を振り下ろしたがそれを空振りみぞおちにスライムがぶつかり悶えている今の状況は至極当然であった。
「ジ、ジーニャおれはもうだめだ、、墓は作らなくていい。ただたまに俺のことをお、も、いだし、て、、、」
「これで死んだら町中から笑いもんよ、しょうがないわね」
ジーニャは手のひらから火の玉を出すとそれをスライムにぶつけた。その瞬間スライムは爆発し、勇者パーティー初めての戦闘は勝利で幕を閉じた。
「、、、言ったじゃんか」
「ん?大丈夫ー?ユウちゃん」
「スライム弱いって言ったじゃんかよ!!え、強いじゃん最強じゃんちょー痛いよ!!弱すぎて誰でも狩れるから商売にならないって話はどこ行ったの!!」
スライム狩りというより魔物を討伐する際は基本的に10人以上のパーティーを組む。スライムに関しては3人ほどで討伐するのが基本的な流れである。1人が盾などで囮になりスライムが突っ込んできたところで2人が網などで動きを封じる。
「まあある程度の冒険者は一人で難なく倒すけどね。ここまでスライムと熱戦を繰り広げるなんて思わなかった。なんかあんまり期待せず行ったサーカスが思ったより完成度高かった的な」
「誰がサーカスだ!誰がピエロだ!遊び人じゃねえよ!勇者だよ!」
「なんだよ!ジーニャ!なんでジーニャはそんなに強いんだよ!!ジーニャがもう戦ったら良いじゃんかよ!!」
めんどくさい。
「そりゃー私って町随一の魔法使いだし。でもね、ユウちゃん私が倒したらだめなのよ。私って火の魔法の使い手だからさー何倒しても何も残らないんだよね」
.....え?
スライムがいたところを見ると確かにそこには何も残っていなかった。跡形もない。生えていた草すらない不毛の地と化していた。
「じゃあ今日俺たちなにもしてないっこと?」
「いや、ユウちゃんレベル上がったよ、、きっと」
「.....きっと...」
「てれてれってってってー」
口で言われた。慰めにもならなかった。お金はまだない。
冒険の書
場所 モンパの町 仲間 ジーニャ 残高 0
スライムって50キロからあるんですって
俺の友達が48キロなんで
友達が体当たりするより攻撃力あるってことですね。
スライムが強いのか、友達が細すぎるのか