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関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。  作者: 虎柄トラ


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過去から未来へその5

「――どうして二人がここにおるん?」

「おっ、やっと目を覚ましたか。あ~、僕らもお前みたいに旅をしようと思ってな。で、どうせならお前に会いに行こうっていう話になって、それで会いに来た」

「――つまりどういうこと?」

「だよな、僕自身も説明していて何を言ってるんだと思ってるよ。まあこれらは全部僕の案じゃなくて、ライによるものなんだよ。どうしてもお前に会いたかったらしいぞ、いつまで経っても会いに来ないお前が悪い。僕もさすがに五年放置はどうかと思うぞ?」

「人間の五年は長いんやったっけ。そっか、そうやったな――二人がこんなに大きくなってるんやもんな」

「まあそういうことだ。だからといって、僕たちは後悔も謝罪の言葉もいらないけどな。またお前と会えたんだから、それでいいじゃないか」 


 リアムがレイと談笑を続けているなか、その会話に入ることもなくただ一心不乱にライは、離れていた時間を埋めるように抱擁を続けた。


 それから二時間後、やっと解放されたリアムは二人をつれて家に帰ると、各設備について説明をしたり自分がどういう存在なのかなど、二人が知りたいであろうことを自ら吐露していった。そのなかで、二人が一番驚いたものは、家の中にある設備ではなくて、光学迷彩により他人には認識されない隠れ家そのものだった。逆に一番興味がなかったことは、リアムが人間ではなくて創られた存在、人工生命体だったこと。それを聞いたことで、リアムは心の底から二人に、そして会いに来てくれたことに感謝した。


 今日、リアムはおもちとともに世界一周の旅に出るはずだった。母親探しの旅は終わった、その次の目的を自分が何がしたいのかを探し求める旅。そのために前日から準備もしていたし、旅支度は完璧いつでも出発可能だった。だけど、予想外の来訪者出現により、その計画は脆くも崩れ去った。その代わりおもちとの二人旅から、レイとライを加えた四人旅に変更となった。


 いまではその計画が変更されてよかったと噛みしめてリアムは、余った衣服を重ねて作った簡易布団で、あの頃のようにライと一緒に睦まじく眠るのだった。レイは体がバキバキになるのを承知の上で、あの硬いソファーに体を預けて就寝した。


 翌日、もう一度旅支度を済ませたリアムは二人と一匹と一緒に家を出た。ドアを閉める時に今度はもっと色んな体験をして帰ってくると、お母さんの白衣に向かって決意表明をした。


 万年桜にもたれかかっていた皺くちゃの白衣。雪解けしたことで見つけることができたお母さんの形見であり、あの夢物語が真実であり嘘ではなかったと、証明してしまった証拠品。発見した時は打ちひしがれて、手に取ることも見ることもできなかった。だけど、いまはその白衣がリアムを奮い立たせてくれる。


 リアムとおもちは七年前と同じく、万年桜に深々と頭を下げ「留守番お願いします」と別れの言葉を述べた。


「お~い、何やってんだ。さっさと行こうぜ!」

「リアム早く行こうよぉ……って、それ何してるの?」

「この木は守り神、だから留守番を頼んだ」


 リアムがそう返すと、二人もまた「留守番お願いします」と声を揃え拝礼していた。


 その姿を見たリアムはこの二人となら、一生涯忘れることのない最高な旅になる、そんな期待に胸を弾ませるのだった。

最後まで読んでくれてありがとうございます。ブックマークや高評価もしていだけますと、作者のトラが飛び跳ねて喜びます。


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