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関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。  作者: 虎柄トラ


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過去から未来へその1

 あれから……七年もの歳月が経過した。


 リアムは故郷に戻っていた。出発した時は雪景色だった廃村は、季節が変わり雪によって隠されていた青々しい草木が顔を出していた。雪解けにより実家の白かった屋根も、本来の赤い屋根を取り戻していた。横坑も灯篭も道路灯など、お母さんが作ったものは五年程度では何の影響もないようで、問題なく通過することも使用することもできた。

 里帰りしてある感情を除き最初に感じたものは、全体が白から緑に変化したという、本当にシンプルなものであった。


 リアムはあの時と同様にまた白無地Tシャツを三枚ソファーに横並びに広げて、興味なさそうにしているおもちに、無理矢理どれがいいのかと問い詰め選ばせていた。


「ねぇおもち、このなかでどれがいいと思う?」

「……チュウ」


 一枚目には『栗鼠』と二枚目には『百千鳥』そして三枚目には『秋刀魚』と、また達筆な文字でそれぞれ書かれていた。そのなかで、おもちは一枚目の栗鼠(りす)に決定した意を込めて、その上に座り込んだ。


「う~ん、そうかなぁ? リアムはこれよりもこっちのほうが良さそうに思うんやけど?」

「チュウ!」

「やっぱこっちのほうがええって? そうやんな~、じゃこれを着ていくことにしょっかな!」


 おもちは即座に意見を変更し二枚目のTシャツの上に移動した。すると、自分から選べせておきながら、今度はリアムから「着替えられへんから、そこどいて!」と理不尽な罵声を浴びせられた。

 少女が着替えを済ませるまでの間、ハムスターは飛び移った作業机の上で物音ひとつ立てずに大人しくしていた。鳴くことも動くことも寝ることもなく、ただひたすらに待ち続けた。


 機嫌よく着替えている少女の邪魔をしてしまうと、後々面倒くさいことになることを知っている。同じ創造主から創り出された兄妹、どこか性格が似ていることも知っている。そのため少女の地雷原がどこにあるかも手に取るように理解できる。その上、一緒にいる時間も長いこともあって、もしその絆をステータスで表すことができるのであればカンストである。つまり、もう限界値に達していてこれ以上あがることはない。それほどまでお互いに意思疎通できているはずなのだが……この母親譲りの独特なセンスだけは、全くもって理解できなかった。だが、それは似た者同士お互い様でもあった。


 リアムとしても、どうして未だにこの服のデザインの良さを理解できないのかと、おもちに対して不満を募らせたが、いまはそれよりも優先すべきこと、事前に用意しておいた衣服を手際よく着替えていった。

 服装はTシャツにキュロット、ローファー、子供用白衣、そして髪留め用のシュシュにしておいた。一緒に旅をしたあのスニーカーはまだまだ現役なのだが、今回はウェッジがくれたあのローファーを履いていくことにした。靴を変えたのにはリアム的にも心機一転という意味合いもあった。


 持ち物は大まかに腕時計とベルトポーチの二点で、手帳、筆記用具、タブレットケースの小物類はポーチに収納してある。

 腕時計はあの時フラッシュライトに惹かれて購入した、圧倒的な耐久性能が自慢の『タフネスメイト』を継続して使用している。ベルトポーチはボロボロだったので、同型の新品ベルトポーチに、手帳は別れ際にライがプレゼントしてくれた革製手帳に交換した。筆記用具とタブレットケースも新品に交換しておいた。

最後まで読んでくれてありがとうございます。ブックマークや高評価もしていだけますと、作者のトラが飛び跳ねて喜びます。


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