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最果ての目的地その2

 あのガラス扉を穿った時と同等の力でマンホールの蓋を殴りつけたが、拳は跳ね返された上に無傷のままだった。


「――あれよりも硬いんか。なら、今度はこれぐらいでいってみよか!」


 リアムは先ほどよりも力を込めて拳を叩きつけたが、それでもビクともしなかった。その後も何度か挑戦してみたが、ダイヤモンドはおろかタングステンですら、粉砕できるほどの力をもってしても、この蓋を破壊することはできなかった。

 マンホールから内部に侵入できないのなら、この土地を掘り進めていけばいいのではと考えたリアムは、今度はマンホール横の自分がいま立っている足元めがけて拳を放った。


「――やっぱりこっちもあかんか。リアムでも壊せないもんがあるなんて思いもせんかったわ。どうしよう、お母さん」


 リアムは自分の身体能力に絶対的な信頼を寄せていた。それはそうだ、お母さんが全身全霊をもって愛情を注いで創ってくれたから、その体を用いればできないことはない。自我が芽生えたその日からそう信じてきたが、その信頼がはじめて揺らいだ。それと同時にある疑問も浮かび上がった。全力で殴っても壊せないものを作れる人は、この世界においてお母さんぐらいしかいないだろうと。

 そんな新たな発見を、期待を見出したのはよかったのだが、あとはこの蓋をどうやって開けるかということぐらいか。今まで実力行使で何とかしてきた彼女にとっては、今回の問題はなかなか難易度が高いものとなった。

 

「この先に、お母さんに関係する何かが絶対にあるはずやのに、どうやってこれ開けたらええねん⁉」


 リアムは頭を抱えて絶叫していると、その声に反応したおもちは定位置から飛び降りマンホールに着地すると、そこでヒントとなるジェスチャーをした。


「――うん? おもち、これがどうしたん? あ、あぁ~この窪みってあれやん! カードがピッタリ収まる大きさやんか⁉」


 マンホールの蓋には持ち手用の窪み以外にもIDカードに合わせたような長方形の窪みがあり、その上部には小さなレンズがはめ込まれていた。


 リアムはIDカードを取り出すと、早速その窪みにはめ込んでみた。すると、ガチャンと開錠する音が聞こえ、数秒後にマンホールから離れるようにアナウンスが流れた。そのアナウンスは足元から聞こえてきたが、蓋にはスピーカーも隙間の一つなかった。その謎技術を体験したことで彼女の淡い期待は確固たる確信へと変わった。

 なぜなら、この振動による音声技術は過去にお母さんが、試作品としてあの家で作ったことがあるものだったからだ。あの時は発生装置に生身の体を直接触れていないと雑音だらけで聞き取れなかったが、このマンホールに使用されているものは問題を解決した改良品、衣類を身につけていても雑音も入らず澄んだ音声で一字一句、何の支障もなく聞き取れた。


 思い返せばここに来るまでの間にも、お母さんが製作に関わったであろうものを何度も見てきた。 魔宝石兵器開発局や鉱山跡地にあった自動で点灯する照明に、魔宝石を置くだけで起動する機械の数々、そういえば機械兵器の動力源も魔宝石だった。あの外へと続く道路灯、その先にあった灯篭、実家の各設備も魔宝石で動いていた。そのどれもが前述の扱い方に酷似していた。

最後まで読んでくれてありがとうございます。ブックマークや高評価もしていだけますと、作者のトラが飛び跳ねて喜びます。


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