はじめての救出その2
発掘品は主に商人を通して各集落で販売されることが多い。発掘者が命からがら見つけ出した品の数々、その大多数は壊れ果て使い物にならない残骸ばかりで、彼らが思い描くような完動品に出会うことは、生涯で一度あるかどうかと言われている。ただそれでも失われた技術を用いて作られているため、それが残骸だとしても非常に重宝される。腕利きの発掘者ともなると、収集家から直接依頼をされることもある。
ウィルがどうやって地下四階に入り込めたのかという話に戻るわけだが、彼はこの兵器施設にある緊急脱出口から侵入したらしい。この周辺一帯には膨大な地下鉄網が張り巡らされていた。過去の大戦で崩落したことで、修復されることもなくそのまま放棄された。そして人間たちの記憶からも自然と忘れ去られていった。
その崩落した地下鉄へと続く緊急脱出口を探し出し、急勾配の脱出用スロープを這い上がり、この地下四階にたどり着いた。崩落の影響で地下鉄側の扉は歪んでいたが開閉には支障がなかった、ただ開錠するのに一苦労したようだ。地下四階側の扉は施錠されていなかったらしく、そのまま扉を開けるだけで入ることができた。
ウィルの話を聞くたびにリアムは、疑問が解決していくどころか疑問が増えていった。そのなかでも特に気になったことを彼に尋ねることにした。
この区域を隅から隅まで探索したが、地下鉄の出入口なんてなかった。彼は一体どうやって発見したのだろうか。次に地下四階にも扉があると言っていたが、それも見当たらない。もし、その扉が存在するのであれば、ウィルは項垂れ体育座りをしたままで、なぜ何も行動しようとしなかったのか。地下三階への移動手段がない、もうこれ以上進めないと分かれば、その場で留まらずに退却を選ぶはずだ。なぜなら、食料が尽きれば人間は活動停止するからだ。
そして最後の疑問は、天井に穴が空いたというのに全くの無反応だったことだ。あれほどの衝撃波を浴びて轟音を聞けば、普通は自分の置かれた状況を確認しようとするはずなのに、ウィルは顔も上げないし姿勢も変えなかった。そんな人間の心境が気になった。
最初はウィルも怯えながら話していたが、途中からは話し相手を無視するかのように一人でに盛り上がっていた。そんな彼の歓喜の時間をリアムは容赦なく中断させた。二時間以上延々と彼の一人語りを聞き続けたことによる飽き、さっさと疑問を解決したいという衝動に駆られ、悠長に耳を傾ける余裕がなくなっていた。
「ウィル三つほど気になることがある」
「……あっ、はい。なん、なんでしょうか?」
「地下鉄の入口って、どこにあった? ここは壁しかないけどドアはどこ? 天井が落ちてきたのに動かなったのはなぜ?」
ウィルはリュックサックから水筒を取り出し、残り僅かな水で喉を潤わせると、リアムの問いに対して矢継ぎ早に答えていった。
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