はじめての救出その1
地下四階は他の地下階層の四分の一ほどの大きさに、縮小したかのような空間が広がっていた。リアムが落ちた場所は、ちょうど地下四階の中心に位置していた。ワンルームで高さ三メートル、横幅奥行ともに二十五メートルという空間は、工場としては狭いかもしれないが、ここは他と違って部屋が分かれていなかったり、物がほとんど置かれていないこともあって、他の階層に比べて広く感じた。
物があるといってもリアムと一緒に落ちてきた瓦礫と、壁に横並びで取り付けられた配電盤、分電盤、制御盤の三点セットがあるだけだった。その三点セットの前では、リュックサックを背負った人間が項垂れ体育座りをしていた。また人間の足元には棒状の金属が転がっていた、どうやらこれを叩いてあの音を出していたようだ。
リアムはこの人間が、一体どうやって入り込めたのか不思議でならなかった。この地下四階は四方八方壁で塞がれている上に、地下三階へとつながる移動手段が存在しない。リアムが天井を破壊するまで、ここは完全な密室空間だったからだ。
リアムはその疑問を解決するため人間に近づき「質問がある」と声をかけたが、返事も顔を上げることもなく無反応そのものだった。呼吸もしているし、体も小刻みに震わせているから生きてはいるはずなのに、なぜこの人間は反応しないのだろうかと、また新たな疑問が生まれようとしていた時だった。
目の前でうずくまる人間が小声で「……ごめんなさい」となぜか謝罪してきた。今まで出会ったことがないタイプの人間と接触したことで、初期リアムが再誕してしまった。
「――謝罪、意味不明?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「――謝罪不要、侵入目的発言」
「はい、ごめんなさい。言います、言いますからどうか殺さないで……」
「――目的発言」
「はい、それはですね……えっと、あの~、何と言いますか」
「――早急回答」
リアムのさっさと質問に答えろという圧を感じ取ったのか、彼はすぐさまここに訪れたわけを吐露し始めた。
リアムとしてはただ地下四階の侵入方法だけを教えてくれれば、それだけでよかったのだが思った以上に圧が効いたらしく、あれこれと聞いていないことまで語りだした。
この人間の男の名前はウィルというらしく発掘者を生業にしているらしい。発掘者とは世界中を駆け巡って、機械兵器のような過去の遺産を探し求める、ロマンを生きがいにしている人間たちのことを指す。で、彼はまだ発掘者一年目という新人で、しかも今回がはじめてのソロ探索だった。またリアムとは反対側、南方面からではなくて北方面から来たようだ。もし、彼がリアムと同じ南方面から向かっていたのなら、もれなく亡骸樹林で行方不明になっていたことだろう。
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