表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。  作者: 虎柄トラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/84

はじめての工場見学その5

 おもちが起きていれば何か知恵を授けてくれるかもしれないが、一度眠りに入ると自分で起きようとしない限り、爆音を鳴らそうが激臭を嗅がせようが衝撃を与えようが、ありとあらゆることをしても目覚めない。何度か自分ひとりで考えて行動しなければならない、こういう状況に陥ったことがある。その度に彼女は悪態をつきながら解決していった。

 二人の解決方法には剛と柔のように相反する。おもちが策を巡らせて解決する頭脳派とすれば、リアムは力でねじ伏せ解決する脳筋派。ただ例外も存在しないわけでもない、過去に訪れた集落で起きた出来事のような彼女に害が及びそうになった場合は、即解決できる手段を選ぶ。そういった点においては、この兄妹はよく似ているともいえる。


「階段でもエレベーターでも行けない。音的にはこの下っぽいんよな。きっとこの壁もあのドアに近い耐久やと思うんやけど、ただ厚さが分からんのよな。まあ掘ってみれば分かることか」


 何度も金属音を聞き続けたことで、リアムはいま座っている位置から直径五メートル以内に、発生源があると目星をつけた。ならば、やることはただ一つ道がないなら作ればいい。ドアを穿った時よりも気持ち力を込めると、彼女は立ち上がり床に向かって拳を振り下ろした。

 衝撃音とともに破片が飛び散り粉塵が舞ったが、一撃では床を貫通することはできず、一メートルほどのクレーターができたのみだった。思った以上に厚い壁に覆われていることを知ったリアムは、不満を漏らしつつも半円の中心部めがけて、さらにもう一撃を繰り出した。二撃目は見事に床を貫通したのだが、自分がどこに立っているのかというのを忘れていた。


「あ~、床を壊したらこうなるやんな? いや、分かっとったし!」


 リアムは床だったものと一緒に落下しながら自問自答しては、あえてそうしたと自分に言い聞かせた。地下四階にたどり着いたはいいが、舞った粉塵により視界が確保できない。粉塵が落ちるまでの間、ハウスダスト満載な環境下で待機していても彼女としては何の支障もないが、ただその大人しく待っている時間がいまは惜しい。


「こういう時はアレに限る!」


 リアムはおもむろに両手を広げてフゥーと息を吐くと、腕を伸ばしたままパチンと勢いよく手を叩き合わせた。ただ手を叩くという単純動作だが、音速にも近い速度で行われるそれは全くの別物。そよ風は暴風に微音は轟音となる、衝撃により足元に転がっていた瓦礫は壁沿いに拡散し、視界を妨げていた粉塵も四散したことで、やっと周囲の状況を確認することができた。

最後まで読んでくれてありがとうございます。ブックマークや高評価もしていだけますと、作者のトラが飛び跳ねて喜びます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ