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関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。  作者: 虎柄トラ


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はじめての腕時計その1

 リアムはコンテナから出ると、地図に描かれた集落を目指して一直線で駆けた。確かに集落はそこにあった。そこは測ったかのように綺麗に半分だけ地下に埋もれた建物が、とても印象的な見捨てられた集落だった。外窓から中を除いてみても、過去に人間が生活していた形跡はあるが、いまでは誰も寄り付かないネズミの巣窟となっていた。


 その後、リアムは伽藍堂となった集落を少し探索してみたが、日が落ちただでさえ視認しづらい環境、天井には蛍光灯が一定間隔で取り付けられてはいるが、肝心の動力部が故障しているのか、無用の長物と化していた。この集落では動力源として魔宝石以外にガソリンも使っていたようだ。発電機に入っていたガソリンは腐っていて使い物にならない。ポリタンクには予備のガソリンが入ってはいたが、それらも全て腐っていた。試しにそれでも使えないかと、エンジンを再稼働させようとレバーを引いたが反応はなかった。暗闇の中を手探りで何とか光源を手に入れようとしたが、それも無駄骨に終わった。


「――なんもないし、だれもおらん。というかなんも見えんし、照明器具も全滅。もう寝る!」


 リアムは自分にそう言い聞かせると、反響する自分の声を聞きながら部屋の片隅で眠りに就いた。探索時に発見したこの部屋は他よりも荒れていなかったため、今夜はここで寝ることにした。いつも寝る時は白衣を脱いで畳むのだが、今回だけは脱がずに着たままだった。

 不貞寝による弊害により、おもちの寝床もまた異なっていた。このままでは潰されると思った彼は、リアムが横になる前に胸ポケットから飛び出ると食器棚に向かった。ガラスのドアを開けて中に入り、乱雑に並ぶ食器をどかし寝床を作ると、満足したように体を丸めた。リアムのように積もりに積もったホコリを気にせず眠ることができず、ホコリのかぶっていない場所を探した結果、彼が見つけた安全地帯はここであった。


 リアムはまた昨日に引き続き、爆音によって目を覚ました。ブォーンという騒音を響かせながら、何か正体不明の機械が集落内を走り回っている。亡骸樹林にいた銀色の木とはまた別種、同型であればガシャンという駆動音があるはずなのに、こっちはその音が一切しない。つまり、この機械兵器の移動方法は歩行ではない、その時点で別型だと断言できる。


「昨日に引き続き今日もですか、そうですか!」


 リアムは安眠を邪魔されたことに憤りを感じながら起き上がると、安寧を取り戻すための戦闘に備えてストレッチを開始した。ふと視線を下ろした時に、いつも膨らんでいるはずの胸ポケットが平たいことに気づいた。

 リアムは「――おもちおらんやん?」と囁き、白い毛玉がいないか周囲を見回すながらストレッチを続けたが、結局最後まで見当たらなかった。どうせそのうち戻ってくるだろうと、探すのをあきらめて騒音の原因を確認するために部屋を出た。向かっている途中でまた視線を下ろすと、今度は胸ポケットが膨らんでいた。いつ潜り込んだのかは不明だが、戻ってきたのなら一声かけろと心の中で呟くのであった。

最後まで読んでくれてありがとうございます。ブックマークや高評価もしていだけますと、作者のトラが飛び跳ねて喜びます。


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