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関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。  作者: 虎柄トラ


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はじめての靴屋その1

 無駄骨だった集落を脱出してから、次の集落にたどり着くまで五日かかった。スニーカーを傷めてさえいなければ、三日は短縮できていたかもしれない。ノリスお勧めの集落もまた廃墟を再利用して作られていた。前回が中規模サイズの町だとすれば、今回は小規模サイズの村といった印象を受けた。

 大半の建物は庭付きの一軒家で、その間を縫うようにビルも何棟か立ってはいたが、そのどれもが低層マンションで、リアムが飛び降りたような中層マンションは一棟もなかった。正確には元低層マンションといったほうが正しいのかもしれない、なぜならある一棟を除いて、他は全て瓦礫の山と化していたからだ。この集落で一番高い建物、三階建てのマンションも他にもれず、ボロボロな状態だったが、魔宝石を使用するための動力部が奇跡的に無事であった。

 そこで人間はそのマンションを住居して使用するのではなく、市場として活用することにした。天候を気にせず商売ができて、魔宝石の恩恵により家電製品も使用できる。そのなかでも部屋は売り上げ上位十二名にしか割り当てられない特別なものだった。勝者は店舗を持つことが許され、敗者は惨めに廊下で露店を開く。商人の競走意欲を駆り立てるその企ては功を奏し、常に切磋琢磨し合える活気のある市場となった。


 リアムが探していた店もその市場の一角にあった。その靴屋は二階へと通じる階段の片隅にあって、二畳ほどの場所にブルーシートを敷き、靴を修理するための作業台としてはダンボール箱を利用していた。その程度であれば、他店とそれほど違いはないため別に気にすることもないのだが、この靴屋は全くといっていいほど、仕事をしている様子がなかった。ブルーシートを占領していたものは商品の靴ではなく、そのほとんどがアルコール臭漂う空瓶だった。ダンボール箱の上には紐の解けた靴が一足だけ置かれてはいるが、長期間この状態で放置されていたのか、靴全体にホコリがかぶっている。店主はというと、その奥で酒瓶を枕にして爆睡していた。その滑稽な姿を見たことで、自分のスニーカーをこの人間に託していいのかと不安が過ったが、結局はここを選ばざる負えなかった。靴屋は他にもあったが、靴を修理してくれる店はここだけだったからだ。


 リアムは何度か店主に声をかけたり体を揺すってみたが、この酩酊人間は一向に起きなかった。このままではらちが明かないと思った彼女は、さらに激しく体を揺すろうと力を込めたことで、やっと成果が表れた。


 店主は「いってぇ!」と叫び声を上げ目を見開き飛び起きた。普段の彼女であれば、力加減を誤ることはない。人間がひ弱な生き物だと知っている、それに前の集落でおもちがちょっとじゃれただけで、人間が簡単に壊れるのもこの目で見た。そのおかげでノリスの集落にいた頃よりもさらに人間について詳しくなったはずなのだが、無意識のうちに起きようとしない彼に苛立ってしまったらしく、思っていた以上に力を込めてしまったようだ。

最後まで読んでくれてありがとうございます。ブックマークや高評価もしていだけますと、作者のトラが飛び跳ねて喜びます。


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