はじめての虚言その3
それから数秒後、数人の嘲笑う声がドア前でピタリと止まると同時にドアが開錠した。人間は全部で四人いた。そのなかにリアムを部屋まで案内した人間たちの姿はなかった。四人のうち三人は部屋に入ってきたが、残り一人は彼女を一瞥しただけで部屋に入ることはせず、外で静かに待っていた。三人のうちの一人が目配せすると、両脇にいた人間たちは後ろに下がっていった。
リアムは言葉を発することなく、こちらに見下ろし近づいてくる人間に視線を向けた。服装は白いジャケットに白のパンツ、リアムが羽織る白衣よりも若干暗めの白色。ジャケット、パンツどちらも汚れ一つなく折り目もあり、普段から綺麗にしているのが見て取れた。汚れが目立つため白系の服は好まれないとノリスから聞いていたこともあって、はじめて自分と同じ色合いの服を着ていたことに、少しだけ彼女は親近感を覚えた。
彼女の白衣は洗濯不要、なぜならあのお母さんの手が加わっている、見た目以上に頑丈で刃物や銃弾は通さず、シミに汚れ、匂いなどが付着したとしても数日もあれば、何もしなくても自然と消え去り新品のように元通りになる。
ノリスと比べてこの人間は背丈もあり体格もガッチリとしている印象を受けた。胸部はノリスと大差はないが、たぶん今回こそ男で間違いなさそうだ。その人間は穏やかな声で話しかけてきた。
「やぁはじめましてお嬢さん。僕はグラファス、ここの代表を務めています。部下から話は聞いたけど、君はお母様とはぐれてしまったそうだね。本当にいいタイミングで訪ねてくれたよ、なんと僕は君のお母様と知り合いなんだ。それでね、彼女が今どこにいるのかも僕は知っているから、君さえよければいつでも案内するよ?」
「お母さんの友達! お母さんはどこにいるの? リアムを今すぐそこに連れて行って!」
「あぁもちろん連れて行ってあげるよ。案内する前に僕のお仕事を手伝って欲しいんだけど、お願いできるかな?」
「その仕事って何?」
「とっても簡単なお仕事だよ。もう少ししたら、スーツを着た男の人がここに来るから、その人の遊び相手になって欲しいんだ」
「――どんな遊び?」
「そこは別に気にしなくていいよ。その人が君で勝手に遊ぶだけだから、君は何もしなくても大丈夫。それじゃその人を呼んでくるから、君はイスに座ってただただお人形のように待っていてくれると助かる」
リアムは頷き「――了解した」と返答すると、グラファスは目を細め「いい子だ」と言い残し、部下とともに部屋をあとにした。部屋の外にいた部下だけは彼らについて行かず、その場に残っていた。
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