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はじめての別れその2

 集落を出て歩き始めてから一時間、あのレンガ作りの集落はもう完全に見えなくなっていたが、あの霊峰は積雪が山頂を彩っているのが分かるほど、遠目からでも山の輪郭がクッキリと視認できた。


「……で、そこの橋を渡ったら次は方向転換して西から北、一つ目の集落は無視して二つ目の集落で母親の情報を仕入れること。って、聞いてるかリアム?」

「聞いてる、聞いてる。あの橋を通り過ぎたら北で、集落で情報収集」

「あぁ、それでいい。あと一つこれは絶対に守れって言ったのは覚えてるか?」

「えっと、確か禁足地出身って誰にも言わないことだっけ?」

「あぁそうだ。私らからすれば禁足地は聖域だからな、そんな場所に住んでましたって言われても誰もあんたの話なんて信じないだろう。それが原因で情報を集めるどころじゃなくなるだろうし、ただでさえあんたの容姿的にも厄介ごとに巻き込まれそうだし……」

「そう何回も言わなくても分かってる、ノリス」


 リアムは面倒くさそうにノリスにそう言い返すと、小言から逃げるように歩行速度を上げた。さらに三十分ほど歩き続けていると、前方に朽ちた吊り橋が見えてきた。

 その吊り橋を支える橋柱は変色し腐朽しているのが見て取れた。他にも橋板がなくなっている箇所があったり、紐も解きかけていたりと、生半可な精神では足が震えて渡り切るどころか、まず最初の一歩を踏み込む勇気すらでないだろう。橋板を踏み外さないように足元に目を配ると、今度は立ち竦んでしまい進むことも戻ることもできなくなる。なぜなら、日中にもかかわらず底が見えず、深淵が広がる百メートル規模の地割れ、大地を分断する場所に架かっていたからだ。吊り橋を渡らずに済む方法があればいいのだが、地割れの終わりが見えず迂回できそうにもない。

 リアムが興味本位で地割れを覗き込んでいると、隣ではノリスが吊り橋のチェックを行っていた。それから暫くすると、ノリスは何か納得したかのように大きく頷いた。


「一人ずつであれば問題なさそう、まずは私が渡るから、あんたはそこで大人しく待ってるように、分かったか?」

「分かった。まあ気をつけて、リアムは大丈夫だけど、ノリスは落ちたら助からない」

「……おおう、ありがとう。渡り切ったら合図するから、それまで大人しく待ってろよ」

「何度も言わなくても分かってる」


 ノリスは一歩また一歩と慎重に吊り橋を渡っていく、重心が移るたびにギシギシと板や縄が軋み、恐怖心を植え付けようとする。その後、何度か心が折れそうにもなったが、一度も足を止めることなく、無事最後まで渡り切った。汗を拭う仕草をしたのち、ノリスは対面側から両手を振って、リアムに渡って来るように合図をした。

最後まで読んでくれてありがとうございます。ブックマークや高評価もしていだけますと、作者のトラが飛び跳ねて喜びます。


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