姉妹のような関係その2
レイはそう言うと、リアムにしがみつき泣きじゃくるライをくすぐったりと、思い付く限りの手を使って無理矢理引き剥がした。隙を見せるとまた抱き着こうとするため、最後には羽交い絞めにしてリアムのもとに行けないようにした。
リアムは自分に両手を伸ばし号泣するライに背中を向け、身支度を整えていった。そうしないとまたあの嫌な感情を溢れてくる。右胸あたりがチクチクと刺されるような痛みに似たあの感情。荷物はベルトポーチのみ、あとは白衣を羽織りスニーカーを履くだけ、身支度自体は十秒程度で事足りる。最後に忘れ物がないか再確認したところで家を出た。その時も一度も振り返ることはなかった。防扉を目指して歩いていると、暗くて判別できないが防扉付近に人影が見えた。こっちがまだ判別できずにいると、向こうから聞き覚えのある声を耳にした。
「おはようございます、リアム様。ダート様もあちらにいらっしゃいますよ」
「イデアがいるのは何となく予想していたけど、ダートもいるの? なんで?」
「それはダート様ご本人にお尋ねください」
「うん、分かった。それでイデアも今日出発?」
「はい、リアム様はご存じかと思いますが私は集落には一日しか滞在しません。まああの時みたいに例外もあったりはしますが……」
「――そんなことあったかな、じゃまた。ダートのとこ行ってくる」
「はい、いってらっしゃい」
イデアに別れを告げて、もう一つの人影が視認できる距離まで近づくと、ダートは気恥ずかしそうに「よお」と一言だけ発した。
「――ダート、なにかよう?」
「いや、特に用はねぇよ。ただなんだその、まあ見送りぐらいはしようかと思ってな。短い期間だったが、同じ屋根の下で生活したんだしよ。つうか、あれだろライから逃げるのに苦労したろ?」
「――解除するのに苦労した。レイの援護がなければ不可能だった。ライは強敵」
「だろうな……お前のこと気に入ってたからな。それはもう姉妹のように好いていたからな」
「用件はそれだけ?」
「……あぁそれだけだ。母親探し頑張れよ。なんつうか、休憩したくなったらいつでも帰ってきていいぞ。これは今から旅立つやつにいう台詞じゃねぇか。あとあれだ、最後にカッコ良く開けて見送ってやりたいところなんだが、俺だけじゃ到底無理だからよ。それとタイミングは任せたぞ!」
「――感謝、そして了解した」
リアムは別れの挨拶を済ませると両手で防扉に触れた。反対側ではダートも同様の行動をして合図を待っていた。深呼吸を数回したところで開扉の合図を出そうとした瞬間、後方から呼び止める声が聞こえた。
振り返るとそこには息を切らし駆け寄ってくるレイとライの姿があった。二人は寝間着の上に毛布を羽織り素足と急いで来たのが、すぐに分かる身なりをしていた。
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