姉妹のような関係その1
そのことを危惧して目覚めてから五分経過したが、未だに指一本も動けずにいた。傍から見れば実に微笑ましい光景ではあるが、今はそういう状況に浸っている時間はない。なぜなら、イデアからの情報をもとに次の目的地に向かわないといけないからだ。リアムが旅に出たのもそれが理由、それこそが彼女の原動力であり全ての行動原理。今も変わっていないはずなのに、体が動かない――動かしたくない。どうしたものかと悩める少女をハムスターは全力で煽りまくっていた。
「チュ~?」
「うるさ~い、リアムだって起床できるんなら、とうにやってるわ!」
「……リアムどうしたの?」
「なに大声出してんだよ。それに起きるにはちょっと早くないか。外、まだ暗いし……って、親父のやつどこ行った?」
「――不覚、この倉鼠の策略にまんまと嵌ってしまった」
その叫びが良くも悪くも兄妹を夢の世界から帰還させるアラームとなった。いつもなら、みんな揃ってまた二度寝を満喫するところだが、今日はそうならないし、今後一生ないだろう。ただライが目を覚ましたことで、やっとベッドから起き上がれる。あとはその理由付け、問題はその理由が全く思い付かないことぐらいだ。おもちも二人が目覚めてから、だんまりを決め込んでいて何も期待できない。なら、自分で道を切り開くしかないかと決心し言葉を紡ぐ。
「リアム起きるから、離れてくれる?」
「……もう起きるの? まだ朝早いよ、もっかい寝ようよ」
「今日はダメ。もう起きる、じゃないと出発が遅れる」
「……出発?」
「うん、リアムは今日この集落から出て行く」
「……でていく、ここを?」
二人の会話を聞きながらレイは目覚めてから感じていた違和感が何なのか理解した。家族のなかで一番朝に弱いはずの親父が家にいない、それに朝っぱらから小難しい顔をしているリアム。親父はリアムが今日、旅立つことを事前に知っていたのだろう。リアムの性格上、見送られるのが面倒くさいとかで、僕たちが寝静まったタイミングを見計らって、コッソリと抜け出そうとしたのだろう。しかし、この状況を見る限りその計画は破綻しているのではないか。
「なあリアム。このこと親父にはもう言ったのか?」
「言ってない、それ以前にダートを見ていない」
「そうか、分かった……で、ライそろそろ離れてやれ。リアムがいつか旅立つことはここに来た時から、分かっていたことだろ?」
「いやいやいやいや、絶対にいや! リアムはどこにもいかないの! わたしとずっと一緒にいるの!」
「……リアム、ちょっと待ってろ。今からこいつをどうにかするから」
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