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荒野の木造集落その5

「リアム~! もうお昼の時間だよ~。ご飯食べよ~」

「――了解。作業中止する」


 リアムはその呼びかけに応じ、手に持っていた金槌を足元に置いてダートの家に向かう。玄関前では水桶を持ったライが満面の笑みで待ち構えていた。飲み水としても使用できるほど、澄んだ水で手についた汚れ落としていく。これはここの人間がいつも行っていることであり、逆にそれをしなかった場合、途轍もなく怒られる、というか怒られた。

 水たまりの一つも発見できない荒んだ大地にもかかわらず、この集落では貴重な水をさも当たり前のように使っていたりする。ここら一帯は年に数回、季節風による恵みの雨が降る。その雨水が地面に染み込み地下水となるのだが、その地下水が集落の真下を沿うように流れている。それをポンプで汲みあげて生活用水として使用している。また住民が二十人程度しかいない小さな集落ということもあって、水源が枯渇せずに済んでいるようだ。集落には井戸以外にも貯水池があり、そっちは主に潅水用となっている。


 リアムがタオルで手を拭きながら家に入ると、ダートの姿はなくレイが一人で昼食の用意をしていた。献立は定番のふかしたジャガイモと数種の野菜を煮込んだ塩スープ。誕生日など何かの記念日ではない限りは、ここの人間は基本的に毎日これを食している。これらの野菜は集落にある畑から取れたものであり、また鶏などの家畜も少数ながら飼育している。鶏卵は大体、三日に一度の周期で朝食に出てくるようだ。住民分の鶏卵が毎日、手に入らないため順番制になったらしい。ダート曰く、昔に比べて卵を産む頻度が減少しているらしい。


「二人とも先に食べててもいいぞ。僕は親父を呼びに行ってくるから」


 レイは二人分のスープをよそいテーブルに置くと、駆け足で外に出て行った。彼が向かった先はリアムの手によって新たに建設された監視塔。ここでダートを含めた大人数名が交代交代で見張りをしている。木で組み上げた高さ四メートルほどの簡易的な建造物。これで高所から安全に外の様子を確認することができる。

 元々、こんなものを作る気など彼女は一ミリもなかった。本人としてはダートの家を改築した際に余った木材を仮置きするために、ただ闇雲に積み重ねていただけである。それに目をつけたレイがあれこれと注文したことで、いまの監視塔が完成した。あと少し判断が遅かったらライの計略によって、キャンプファイヤーとして盛大に燃やされていたかもしれない。

最後まで読んでくれてありがとうございます。ブックマークや高評価もしていだけますと、作者のトラが飛び跳ねて喜びます。


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