始まり
第二話 始まり
俺は確かに昨日まで現実世界にいて、ベッドに横たわって眠ったはず。犬だったルナは人間の姿で、母さんも美咲も当たり前の様に生きている。
もはやこれさえも現実なのかが、頭の中の思考回路がショート寸前なんですけど。
「なんだこれ?どうなってんの?え!?俺生きてる?死んだ?にしても出来すぎてない?」
「お兄ちゃん何をさっきからぶつぶつ言ってんの?ほら、お兄ちゃんはこっち!」
俺は美咲に言われるがままに行動をした。
母さんが俺の方を見てニヤニヤしていた。
「母さんな、なに?」
母さんが急に俺の方へ近づき飛びついてきた。
「ユイキィー!思ったより早く死んてくれてお母さん嬉しい!」
親が息子の死に喜んでいるのは普通では可笑しい事ではあるが俺もそこまでバカじゃない。話を聞けば見えてくる理由もあるだろう。
ルナが人間の姿をしている事自体がもう驚きでしかないんだ。今後何が起こっても驚けない自信しかない。
「色々話す事は沢山あるんだけど、また皆んなで朝食を囲めるなんて幸せ!」
そう母さんが口にして皆んなで頂きますをした。
にしても、前に住んでいたマンションとは一転して、かなり素敵な一軒家だ。
この世界にはTVやスマートフォン、機械的なものは存在はしていないようだし、母さんも魔法のような原理で火を消していた様にも見えた。
俺は小説やアニメでみていた異世界転生な世界に来てしまったというのか……。
朝食を終わらせると、ルナが見せたい物があるからと俺を外に連れ出した。
母さんと美咲は玄関先で俺とルナを見送ってくれた。
「美咲、ユイキをお願いね。」
「うん!お兄ちゃんはこの世界をきっと変えてくれる!」
俺はルナと森奥深くへと歩いていく。
「で、ルナ。今どこに向かってるんだ?」
ルナは頬を赤くし、ニコリと笑い嬉しそうに俺を見た。
「ユイキ、ごめんね。今から連れていく場所は今よりも元の時代を見せるためなんだ。私達が出会うもっと前の……。」
ルナが口にした意味が全く分からなかった。
俺とルナが出会うもっと前? 何を言っているのか分からなさ過ぎる。とにかくそれを見せられる事で今よりも疑問が少しずつ減っていくのであればと、俺自信興味も少しずつ出てきていた。
「着いたよ!」
ルナは立ち止まりそう言ったが、周りは何もなくただの森の中。
ルナが掌を上に突き出し、計算式の様な物と見た事のない文字が左右交差して回る魔法陣を出した。
「ユイキ!持っている赤い石を魔法陣の中心に投げてほしい」
「え!?あれ前の世界に置いてきちゃったよ」
俺は、あの時眠りについたままこっちの世界に来てしまった為、ルナの遺骨から全て放置してきてしまっていた。というかそもそも、俺は遺体としてベッドに横たわったままなのだろうか? いやいや細かい事は後でいい。
「ユイキ、念じれば大丈夫!目を閉じてあの赤い石を頭に浮かべて握り拳をオデコに当てるんだ」
ルナに言われるがままやってみた。すると身体全身が熱くなり握っていた手の中に何かを感じた。
目を開け開いてみると、あの小さな直径五ミリ程度の赤い石が現れた。
「さすがユイキ、やるなぁ。」
俺はその赤い石を魔法陣に投げ込んだ。
すると光を全体に放ちだし、空が溶ける様に裂けはじめ、景色が開いていく様に溶け出していき、俺の目前にまた別世界の光景か現れた。
「ルナ、ここは?」
「さっきいた場所とは変わらないよ!でもあそこであってあそこではない場所。これが本当の別次元世界。アポールレナジェンド!」
俺の目に映ってきたものはもう、夢を超えた世界だった。雲に続く程の高い城、華の有名な遊園地にある城を、華の有名なアニメの道具で照らしてデカくしても、追いつかないくらいの佇まい。
今ルナと歩いているのは、城に続く橋に見える。下を見下ろせば雲が広がる。にしては高過ぎて怖いが全てが美しく見えた。
「ユイキ、ここは私が生まれた世界であってユイキのお母さんも生まれた世界なんだ!そして妹の美咲は君の姉さんなんだ。」
はい、余計に意味がわからなくなった。
「ルナ、どう言うこと?」
「話は後々、まず会ってほしい人がいるんだ!」
ますます意味がわからなくなってきた。
そうして俺は、ルナの後を追う様にして城の中へと入る。そして、ルナが言っていた会ってほしいと言う人がいるだろう、かなりでかい扉の前に着いた。
「ドン!!!!」
ルナが扉を蹴っ飛ばし無理やり開けた。
ルナは慣れた様に部屋に入る、その部屋奥は一面ガラス窓に外は、小説をアニメ化にしたような、冒険者が行き交う街並みだった。
そして目の前に座っている人がこの国で一番偉い王様であるらしいんだが、どこか知っているようなシルエットだった。
「ルナちゃん扉開ける時はゆっくり両手でって教えたでしょ……」
王様はルナそう話した。その怒れなさそうな弱々しくも優しい声、聞いたことのある様な声だ。しかし逆光で姿が影になって見えない。
「っよ!ジジイ元気だったか!?」
ルナは王様だろう方にジジイ呼びをした。それを見ていた通路を挟むよう左右に5人ずつメイドが10人程と、騎士だろう戦えそうな人が3人ルナに対して驚いた顔を見せた。予想からして多分ルナの事は知らない様子ではあった。
「貴様!王に向かってその様な言葉!」
かなり強そうな金髪の貴公子オーラがある、男性の剣士様だろう人が、ルナへと剣を突き出した。が、ルナはびくりともせずに居た。
「よいよい、カイどの、剣をしまってくれ。ルナは私の孫じゃ。」
あの剣士はカイと言うらしい。にしてもかなり主役並みのオーラがあるし、俺なんか一瞬にして殺されてしまいそうだ。
「え!?王のお孫様、、、、でございましたか。飛んだ失礼をお許しください。」
俺はルナが一方的過ぎる行動に問題はある気はしたが、向こうの世界でのルナの性格も確かにそうだった。
生意気でわがままで甘えん坊。俺はそんな変わらずのルナの姿を見て少しクス笑いをした。
王はルナに問い出した。
「そいでルナや、ついにこの日がやってきたんだね。そしてユイキや、久しぶりじゃな……。」
王様は数歩前に足を出し逆光から姿を見せた。
目の前に現れたのは、俺がまだ小学低学年だった頃、凄く優しくしてくれた、何でも褒めてくれて、怒ることもできない弱々しくも優しい声、背も高く素顔は凛として少しハーフ顔なカッコいいじいちゃんだった。
「じい、ちゃん? 」
かなり周りは驚いてはいるが、俺からしたら俺のじいちゃんでしかないから、それ程偉いこの世界の王様と言う実感はない。
俺は涙を浮かべ、すごく会いたかったと一言こぼした。
「ユイキ、、、。大きなったのう。彼女の一人や二人できたんちゃうか?」
じいちゃんには申し訳ないが、っまその反対な人生だっだ事は伏せておこう。
「ま、まあね……」
ルナが顔だけを振り返らせ、後ろに立つ俺にニヤリと嘘つきと心の中で言ってきた様に感じた。
じいちゃんは俺に言いづらそうに話かけ始める。
「ユイキや。驚かんでほしいんだが、今から語る事は少しばかり長くなるんだが聞いてほしい。そして皆も聞いてほしい。今から話すことは、今後この世界を守るためにも理解をしておく必要がある。そして今日その時がきたと言うわけじゃ。」
どこか、じいちゃん自分の事をかっこいいなんて思っているようにも見えた。
言いたかったセリフが言えて満足そうでなによりだ。
「私、刺されたのよね。それで倒れて救急車の音もして、そこからの記憶が……。」