アルファーの決断
「くそっ、最悪だな」
”雷撃アリーマー”はアルファーのパーティーには嚙み合わせが最悪だった。
飛び回るので近接武器はそもそも届かない。銃は意外と射程が短い上に命中精度が良くないので盾役が対象を足止め出来ないと威力を発揮出来ない。魔法攻撃は詠唱時間から発動時のタイムラグで的を絞れない。
必要なのは弓や投擲武器だが、投げるのに向いてるものは持っていなかった。ダイアナが効果範囲の広い魔法でチマチマ削りながらブラボーがアルファーの手斧を投げては拾い、投げては拾いを繰り返してまぐれ当たりを狙う。というグダグダは作戦しか取れない。一度当たって地面に落とせればアルファーが一気に詰めて槍の一突きで決められるのだが。
その間にもアリーマーの雷魔法は襲ってくる。軽度の火傷を負う程度の威力だが、こちらは雷なので必中なのが腹立たしい。
グダグダな戦闘が続く中アルファーがエミリーに治癒魔法を受けていると、エミリーの予備武器である短剣を手渡された。
「これ、斧よりは投げやすいと思うんです」
その短剣は刀身がくの字に曲がっていた。なるほど、そうかもしれない。それに打開策は何でも欲しいところだった。アルファーは短剣の鞘を抜き、利き腕の右手に短剣、左手に槍の柄を取った。
「よし、やってみよう。ダイアナ!ブラボーが次に斧を投げたら3秒後に”針の雨”だ!いけるか?」
「おっけー。任された!」
「ブラボーは大雑把でいいから奴より上に投げろ!」
「わかった」
「いくそ!」
ブラボーはダイアナの詠唱に合わせるため、被弾を恐れずにゆっくりと間合いを詰めた。さらにゆっくりと振りかぶると、山なりに斧を投げる。
「上手い!」
山なりの放物線の頂点は”雷撃アリーマー”のわずか手前にとり、かつ頭上をかすめるようなコースだ。これなら自然に高度を落とす回避運動を取る可能性が高い。
とっさにこういう判断ができる仲間は頼もしい。そう思いながらアルファーは駆け始める準備をする。
アルファーが”雷撃アリーマー”目掛け駆け、その1秒後にダイアナが魔法で針の雨を降らせる。
これも上手い。アリーマーの正面前方2メートルから、頭を目掛けての攻撃だ。アリーマーはまた高度を下げて回避する。
アリーマー目掛けてダッシュしていたアルファーは、駆けながら右手を真上に振りかぶり、真っすぐと直線的な軌道になるように短剣を投げる。短剣は腹部に命中した。
ダメージに耐え切れず、アリーマーは落下する。
「うおおおおおおおおっ!!」
アルファーは仰向けに倒れたアリーマーに飛び掛かり、心臓を槍で貫いた。
「ランク的には、こんな苦戦する魔物じゃないはずなんだけどなぁ」
迷宮から帰還したパーティーは、ベースキャンプの村へ向かう道中で反省会だ。
「すまねぇ、今回は俺が役に立たな過ぎた」
と、チャーリーが謝る。
「気にすんな。それぞれ役割はある。力を出せる時に役に立ってくれればいい」
「とはいえ、弱点を補うメンバーが欲しいってのはあるかもね」
「そうすると、採算ラインがあがっちまうんだよなぁ。今でも結構ギリギリでやってるのに」
「じゃあ、いらない子を追ほ」「駄目だ駄目だ駄目だ!」
「俺は仲間を見捨てることなんて絶対しない!」
「リーダー!」
「よし、マルボークのギルドへ行って、仲間を探してみようか」
今話の戦闘では全くの空気だったチャーリーくん。同じ世界の銃使いでも「ガンガール」の主人公は、第一話でおよそ25メートルのヘッドショットを馬で走りながら決めました。何故こんなにも差がついたのか。チャーリーはタンク役の仲間が敵を止めてくれる為、無駄玉を撃つことを避け確実な距離まで接近してとどめを刺す役に徹していました。そのため冒険者をしていても射撃技術が向上しなかったのです。