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アルファーの憂鬱


 槍術士アルファーが率いる冒険者パーティーは戦闘に突入しようとしていた。相手は体高2メートル半、強靭な肉体を武器にした魔物。通称”ひとつ目”だ。

「初撃は俺が受ける!ブラボーとチャーリーはいい位置取っとけよ!」


 アルファーは正面から突っ込むと”ひとつ目”の皮膚一枚を目標にした間合いで槍を叩きつける。それを牽制としてさらに半歩踏み込み腹部を突いた。浅いが十分なダメージだ。

 ”ひとつ目”は怒りに任せて雄たけびを上げ、細めの木の幹をたたき割っただけのようなこん棒を右手で振り上げる。すかさずアルファーは距離を保ちつつ右に回り込んだ。目標を違えたこん棒のスイングはインパクトもフォローもバラバラだ。転ばないまでも前につんのめってバランスを崩した。

 そこで身長2メートルの大男、重装盾のブラボーが交戦地点に追いついた。ブラボーは”ひとつ目”の両肩をつかみ引きずり倒す。最後はチャーリーが大口径の魔法銃でとどめを刺した。


 魔物が絶命したことにより戦闘域が解除され「狭間の迷宮」が本来の姿に戻る。それは底の見えない中空に浮かんだ回廊だった。

「やったね!」「あたしらの出番なかったー」

 治癒士のエミリーと魔導士のダイアナも今回の戦闘では出番がなかったが、パーティーでは欠かせないメンバーだ。アルファーもそこは熟知している。

「まあこれくらいの魔物ならな。報告の証拠は手首でいいか」


 迷宮の探索には報告義務がある。未到達エリアの到覇報告は報酬が高価だ。だが他の冒険者パーティーの報告との相互検証が必要なため、報酬の支払いはどうしても遅れる。魔物の討伐報酬は魔物のランクによって様々だが、即日支払われる。だから「何を倒したか」の証拠を持ち帰るのだ。

 アルファーはサブ武器の手斧で”ひとつ目”の手首を切り落とし、ブラボーと協力して死骸を回廊の外に落とした。

「これだけじゃ大赤字だからな。先へ行こう」


 アルファーは街道パトロールのアルバイトから冒険者に転身して半年。パーティーメンバーの経験、探索での手際、戦闘での連携など申し分ないと感じていたが、それでも腑に落ちないことがあった。


 この仕事は、どうにも割に合わない。


 パトロールのアルバイトは決して高収入とは言えなかったが、収入は確実だったし週2日の非番は保証されていた。乗馬の技術が必要だったが研修も受けさせてもらえた。

 公務員的な仕事より、自分の身一つで成り上がっていくというあこがれもあったかもしれない。だが現実はどうだ?


 生還を第一に考えたプランだと宿代も稼げない大赤字。多少の危険を冒して先に進んでも一気に武器を新調するような報酬は望めない。


 命がけでその日暮らしをしているのではないか。


 冒険者とは聞こえはいいがとんだ底辺職なのではないか。


 そんなことをアルファーが考えていると

「リーダー前!来るよ!」


 目の前にグレーの光が広がり、底なしの狭間が消え「戦闘域」が広がった。


 現れた魔物は翼で自在に飛び雷魔法を操る”雷撃アリーマー”だった。

この作品は異世界のガンガールは引き金を引かない  https://ncode.syosetu.com/n2467ib/

の中間スピンオフ作品です。是非合わせてお楽しみください。

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