第18話 寝ず離任窯
エネを助けてから五日が経過した。
ここまでの道中、食料といえば俺が野生の動物を捕まえて捌き、ニャイナに魔法で水と火を出してもらい、エネには近くで山菜を集めてもらった。
大体は寒いのもあって主に鍋料理を作って食べていた。
「上手い 1人じゃ中々こういった料理を作ることができなかったからなんか感動だ」
「でしょ! 魔法の力は偉大なのだ」
ニャイナの言う通り魔法様様だ。
火のおかげで獣避けにもなるし、風呂にも困らず、ニャイナが奮発して温泉を作ったりしていた。
意外と合流してからは優雅な旅になった。
これぞ魔法の無駄使いというやつではないだろうか。
そしてルブレカからジェルタまでの道のりが半分を過ぎた頃、間にあるダカリゼッタという村に到着した。
この村ではジェルタ国からの支援を受けていて、尚且つルブレカ兵ともうまくやっていけている数少ない場所のようだ。
なんでも噂ではこの村に手を出したルブレカの兵士が、次の日に変死死体となって見つかったらしい。
「と噂で聞いたんだが ニャイナってホラーとかは大丈夫か?」
「わぁお ホラーは流石に怖いですね 私魔女ですけどお化けとか大の苦手なんです!」
「そういう割には目が輝いているぞ」
「ニャイって! でも怖いのと、見たいのは別です!」
村ではお化けや祟りと言われているらしいが、そんな奇妙な現象が起こる様になったのもジェルタ国の民がこの村の四方に祭壇を建設してからだそうだ。
ニャイナがあまりにも見たい! と言うので見学に行ったが
「以上は感じられないな ただの石像のような‥‥」
祭壇を見たけど特に害とかはなさそうだし、放っておくか
「さて先ずは宿探しと飯だな」
「やったー! エネお腹減ってぺこぺこ」
「好きなもの食べていいぞ ニャイナは食べすぎ注意な」
飯と宿を探していると、親切な村の人からご当地グルメを聞いた。
なんでも、この村では寝ず離任窯という鍋が絶品らしい。
今の季節でしか取れない離離ノ草という野菜が山の幸の味を極限に引き出すのだそうだ。
それは是非食べてみたい。
後ろで騒がしい二人を見ると、よだれが滴っていた。
皆、物凄く食べたいのは一緒だったようだ。
はやく荷物を置いて、噂の鍋を食べに行きたかった俺達は直ぐ目についた宿に決めた。
「うん、とりあえずここでいっか」
ガチャとドアを開け中に入ると外と比べ意外と中は綺麗に磨かれアンティーク調の家具が置かれていた。
そのバランスが宿の雰囲気をより引き立たせていた。
「すみません。あの、三名でお願いしたいんですが」
この店の受付のおばさんだろうか? 奥から急いで出てきた。
「はーーい。三名様ね。140ジェルになります」
「意外と安いな」
「そうなのよ、旅の方にはね優しくしろってジェルタのシエンタ様が仰ってたからね 無期間限定の特別サービスよ」
宿のおばちゃんが大幅にまけてくれて助かった。そんなに持ち合わせがないからな。
「エルトさん良かったですね」
「あぁ、安くしてもらえたしな」
「違いますよ。こんな可愛い女の子二人と一緒の部屋なんですから」
「それはいつもと変わんないだろ」
俺たちは荷物を宿に置いて噂の 寝ず離任窯 のお店に向かった。
「さぁてと 早速行きますか」
「どんなゲテモノ料理でしょうね」
「なんでゲテモノ限定なんだよ」
ニャイナがうずうずと料理の創造をしていると
「エルトお兄ちゃん、ゲテモノってなに? 美味しいの?」
「え? んー分かりやすく言うと、ゲテモノは見た目が怖い料理ってことかな」
「こわいの!? じゃヤダ!! わたし行かない」
「待て待て 大丈夫だって。ゲテモノ料理じゃない…はず。…あーーもうニャイナが余計なこと言うから」
俺も想像したせいで段々食欲がなくなってきた。
お店ののれんをくぐり俺たち3人は席に着く。
「ヘイ! お客様いらっしゃい! ご注文は? 今なら当店オススメ寝ず離任窯が季節で美味しいよ!!」
「あのそれはゲテモノーー」
言いかけたニャイナの口をふさいで俺がすぐに
「あの、寝ず離任窯ってどんな食材とか入っているんですか?」
「寝ず離任窯は離離ノ草をメインとした山ノ手昆布から採った出汁をベースに牛と練堀芋、木の芽ノコを入れて食べるのが特徴でっせぃ」
「おぉ!!」
店主の話を聞いて急にお腹が空いてきた。
ゲテモノと疑って申し訳ない。
「ではそれを三人前分お願いします」
「ヘイ!わかりやした!!」
店主が厨房にオーダーを通しに行った。
「ゲテモノじゃないんですね~」
明らかにガッカリするニャイナは放っておいて心配そうなエネに声をかけた。
「心配しなくて大丈夫だよ ゲテモノじゃなくて普通に美味しそうだし」
安心したエネのテンションは上がった。
「ホントに!! やった。エネお腹ペコペコ」
会話も盛り上がった直後、直ぐに鍋に食材を入れて運ばれてきた。
ぐつぐつと沸騰する熱々の鍋から出汁の利いた良い匂いが鼻を突き抜ける。
「よし じゃ食べるか」
「おーーー!!」
あっという間に平げた。
「最高だ」
寝ず離任窯を完食した俺達は宿に向かって歩いていた。
「いや~ゲテモノじゃなかったですけど私は満足です! エネちゃんも美味しかった?」
「うん! めちゃおいしかった! まだまだ食べれるよ」
「エネちゃんは育ち盛りだからいっぱい食べようね」
「エネいっぱい食べるよ」
「沢山食べるとドンドン成長して最終的にはムキムキになることができますよ」
「え… ムキムキ!!! いっぱい食べる!!」
エネはムキムキになりたいのか。
…否定するつもりはないけど、なんかいやだな…




