第16話 救出
幾多の水の塊を避けて進む
すばやく剣を錬成して足場を作り空中で一瞬 固定する。
踏み台にして攻撃を上空や左右に避けて進む。
本当ならもっと大きなものを錬成して足場にするのが適しているが‥‥
俺は生憎 剣ばかり錬成していたから
他の物を錬成すると錬成する速度や具現化した時の強度、時間 そして錬成できる数が圧倒的に少なくなる。
思った以上に距離が遠く感じる
「くッ―――――、まだ半分か」
あの子に近づけば近づく程、水の塊の強度やスピード、そして数が増してくる。
このままじゃ…
「!!」
ブシャン!! と水面の下から木の根が飛び出してきた。
生き物のように動く木の根は剣の足場を叩き落とした。
こいつ
「木も操るのか?!」
やばい
バランスを崩して落ちていく。
その先には待ち構える木の根達
「くそ」
水に落ちれば向こうの手のひらだ。
こうなったらあれを‥‥
「!! 風が」
すると風が吹いた。
人工的に風が集まっていく。
その方向 後ろ側を振り向くと
俺の視界の先にはニャイナが箒を持って構えていた。
『汝の危に救世を!! フリューゲル ズ シルフォォォオン!!!』
箒の中にある赤い魔水晶が輝き、集めた風を前方に解き放った
当然、その先には俺がいる
「ちょ、準備してるならッ――言ってくれよ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴビュン!!! と解き放った風が水面から出る木をなぎ倒し、湖の水すらも左右へと分かれた。
「おいおいおい! こんなの!! おれ 直撃して大丈夫?!」
風速なんぼだ とか考えてる暇もないくらいの間
勢いよく迫る風の魔法が俺の体を直撃した。
「ッ‥‥ あれ?」
だが思いのほか衝撃はなかった。
「―――おぉおおおおおおお すげぇ!!―――」
むしろその風に包み込まるように風の渦に乗った。
「このままならあの子のところまでいける!」
魔法を肌で感じ改めて実感した
やっぱ魔女なんだなと
そのまま浮かぶ女の子の方へと辿り着いた。
最大限の攻撃が来ることを予想していたが、そうにはならなかった。
むしろ抵抗がなくなった。
力がぬけたように、女の子から精霊達が離れて行った。
「どうしたんだ」
水面へと落ちそうになるその子をキャッチして抱きかかえ、風の勢いに任せて湖の反対岸へ着地した。
「おっと、… まぁなんとかだな」
すぐにニャイナも箒に乗ってこっち側の岸にやって来た。
「エルトさん! さすがっす! 私が風の魔法を使うなんてよく分かりましたね」
「びっくりしたけどさ だってお前、魔女だろ」
「おぉ理解がはやい! 流石エルトさんです」
「こういう時なら風の魔法が楽だろ? 助けるのには」
「でもエルトさん 魔女をなんでも出来る万能だと思っているかもしれませんが、…あの、普通はですね。力のある属性魔法は基本一つしか使えないですよ?」
「え そうなのか」
「はい。 常識です! メイン属性は一つです。サブで他属性を少し ‥‥んー二~三個くらいですかね。使う人がいるのは」
「他の属性魔法を使うのって難しいものなのか?」
「エルトさん!! 考えてみてください。例えばサッカー選手がいるとしますよね? そのサッカー選手は野球選手レベルで野球できますか?」
「どうだろうな…」
「いやいや―――、普通は無理なんですよ! 時間も限られている人間なので、プロ選手も人間ですから一つのことを極めている途中なのです。稀に才能を逸脱した方はいらしゃるかもしれませんが、そんなのは稀です」
「なるほどな てっきり箒に乗って楽しているから、魔術もそんな感じだと思ってた」
「楽してなんでも出来たら、あんなところで野垂れ死んでなんかいませんよ」
わちゃわちゃ話をしてうるさかったのだろうか
気を失っていた少女がゆっくりと起き上がった。
「ここは?」
どうやら目が覚めたみたいだ
「気が付いたか 痛みはないか?」
「だいじょうぶだけど… あなた誰?」
「俺は討間 得ト。君が湖の上で浮かんでたから助けたんだけど… 覚えてないよな」
「え… うん…」
まだ起きたばっかりだからなのか呆然としている少女にニャイナが
「お嬢さん! 私はニャイナ! みんなが憧れる魔女! そして可愛いくて愛らしいあなたのお名前は?」
「―――エネ。わたしはエネ!」
「ニャイって! エネちゃんか。うぬぬ 何処かで聞いたことあるような無いような…」
「いやいや。二文字なんだしそのくらいの名前聞くのが多くてもおかしくないだろ」
まともにツッコミを入れてしまった。
「ぬぬぬ。エネちゃんはさ、何処から来たの⁉ なんであそこの上にいたの? ご両親は? 好きなたべものは?!」
「ちょ! ニャイナ質問攻めし過ぎだって。エネが困るだろ」
「ははーん。もうお兄ちゃんぶってるんですか? エルトさん」
「しかも俺だってお前の故郷とかなんも知らないぞ。謎だ」
「私は最初の自己紹介の時言いましたよ? グレイハット家の者ですって」
「待て… まず俺はグレイハット家を知らないんだけど」
「ぬぬぬ! グレイハット家を知らないなんて!! ……まぁ当然ですよね。有名じゃありませんし」
ズル と俺の心がすべる音がした。
「でも 私もエルトさんのこと全然知りませんよ!」
「威張る事じゃないぞニャイナ」
俺達のやり取りを聞いていたエネが
「あはは お兄ちゃんお姉ちゃん面白い!」
最初は心配したけどこうやって笑える子で良かった。
その笑顔を見て、俺とニャイナも顔を見合わせると笑いが込み上げた。
人を笑顔にすることで今の俺は少し報われた気がした。
そう思いながら二人の笑顔を見ていたら――――――
自然と涙が溢れた。
「うッ―――」
あの時の… アルといた日々の記憶が蘇えった。




