秋の招待状(第二章)
以前書いた「招待状」が、どちらかといえば海や浜辺、波などを想起させる内容でしたので、今回は野辺歩きを主題としてみました。田舎で暮らしていると、こういうときは素材がたくさんありますので助かります。反対に、洗練されたお洒落な素材はありませんが、それは致し方ありません。
詩の最後の一文の「あけもどろ」は、ご承知の方が多いと思いますが、沖縄・奄美の古代歌謡「おもろさうし」の中の言葉で「朝日の差し始めた美しく厳かな様子」というような説明がなされています。ここでは、暁から東雲、東雲から曙に移り変わっていく時間帯の表現として借用させていただきました。
秋の朝は暁の ゆるりゆるりと移ろえば
やがて来れる朝の陽に
先立ち、染まる紫の 空が明かれば、外に出で
きみを誘うて、朝靄の 中をふたりでゆきましょう
月は、いつしか西にあり
白みし空に東雲と
名残惜し気に後朝の 別れを悔いておりますが
もはや、落ちよと、暁烏 鳴いて褥を離れては
東へ飛んで去りました
野辺を歩めば、刈り終えた 稲を並べた稲架掛けが
あちらこちらに並び立ち
おもてに降りし秋霜の 朝日の端に煌めけば
見惚れるきみの横顔に しばし、見惚れて過ごします
畔には白や薄紅の 秋桜たちが風に揺れ
湛えた露は、きらきらと 差し染むる陽に散りました
風に流るる黒髪の きみは光に溶け入りて
一枚の絵画となりました
畔を離れて谷川に 下れば足が滑るから
後ろのきみに差しのべる 手にて、その手を絡め取り
繋いだままに、道なりに
黄葉、紅葉を愛でながら きみの温みも愛でましょう
谷に降りれば、朝靄の 名残が、きみを薄絹に
包み、奪ってゆきそうな 心持ちにもなるようで
繋ぎし腕を抱き寄せ
驚くきみのくちびるを 奪えば、強く抱きましょう
秋の朝は明ける頃
きみとふたりで、静けさに 身を任せては、ふたりして
ふたりの時を慈しみ
移ろう秋を移りゆく 暁からのひと時を
共に過ごしてゆきましょう
「後朝の別れ」は男女の朝の別れで、「暁烏」は、烏というよりは、その男女の眠りを妨げて別れを促す朝鳴く鳥の声全般を表しているようです。また、使ってはいませんが、源氏物語の末摘花のように深い関係にならなければ顔も見ることができない当時の貴族社会のありようからきている「相見て」なども、男女の関係を示す言葉ですよね。
こういうことを書きながら、ここでは月と明けてゆく空の擬人化的な表現で使っただけですが、この後書きも含めて、やはり、R15にすべきなのだろうかと悩んでいます。
マニュアルを読んでみても、かなり曖昧ですので、どなたがご指導いただけると助かります。