『それから』の章~時が過ぎるのはあっというまだ~
ちょっと頑張って長いのかきたいと思います。
「シン君、後ろお願い」
「何で僕が!!」
「シン!!」
「わかったよ・・・」
何も見えない暗闇の中、うごめく影が3つ、背の高い男、いやまだ男と言うには若い少年が一人と同じく少女が2人。ここはこのセイス学園内のとある公園、まだ人が起きだすには早い時間に3人は身を潜めていた。彼らの名は順にシン、鳴海、美琴、3人ともこの学園では魔力レベルが30を超える有名人だ。なぜそんな3人がこんなところで身を潜めているか、それはすぐにわかる事になる。
3人が身を潜めてから20分ほどたったころ、突然公園の真ん中に黒い影が差した。その影はじょじょに形を変え、人間に近い形になった、でもそれだけではなく、また背中の辺りが盛り上がり羽になった。
「やっと出てきた、この僕を待たせるなんていい度胸じゃないか」
悪魔の姿を確認したシンはつぶやいた、季節はもう冬、雪までは降らないものの外で待つにはいささか寒い、そう考えればシンのつぶやきも仕方ないといえよう。しかし、その声に悪魔は気づいたようだ、その何色かわからないほどに濁った色をしている目で真っ直ぐ3人を見てから不適に笑った。
「やば」
「気づかれちゃったね」
抜けたことを言う美琴、ほかの2人もそうだが、美琴たちに焦ったようすはない、それどころか余裕さえうかがえる。
『ダレダ』
悪魔の声はとても聞き取りにくくおまけに単調だった、しかしそんなことはこの3人には関係ない。なぜならこの3人に課せられた『任務』は、この悪魔を倒すこと、ただそれだけ。
3人は早速戦闘態勢に入る、しかしこのままでは勝ち目はない
「美琴」
「わかりました」
彼なしにでは
~健一(アッ君)~
俺がエクソシストの一員になってからもう半年以上が過ぎた、あの日からの俺の生活はとてもハードなものだった。
朝は普通に学園に行き、夜になれば悪魔としてまたエクソシストとして悪魔や鬼退治時々朝も呼ばれるが無視している、美琴たちも同じ任務をこなしてきたが、彼女たちの場合は特別休暇がとれ、学園を休んでも単位はとれる。しかし俺は違う、エクソシストはあくまでアッ君であり俺ではない、だから休暇も取れないのだ。おまけに疲れて休んだりしたら正体がばれる可能性がある、ピークイと一緒に暮らしてるだけでも鳴海にばれる確立があるというのにこれ以上めんどくさいことになってほしくない、クリスタルも家に置いていけないので持ち歩いてる。俺の正体隠しとおせるか心配だ。
『アッ君』
今夜もお呼び出しのようだ。俺は『停止状態』だった体を起こし闇を纏っていく。俺は浅野健一から悪魔のアッ君へと意識を切り替える、さあ任務に出かけよう。
「あ、来た」
「美琴、どうかしたか?」
「こんな時間に呼び出してごめんね、でもアッ君1度も自分から来てくれないから・・・」
美琴は少しすまなそうな顔をしている。美琴の言うことも一理ある、確かに俺が自分から任務に参加したことはない、というよりこれないのだ、浅野健一からアッ君としてみんなの前に出るのに一番正体がばれにくいのが美琴に召還されることだったのだ、だから俺は自分から任務にいくことはない。おかげでほかのエクソシストやナイツには『サボリ常習犯』と呼ばれている。そんなことを言われているわりには毎回美琴に呼ばれている。なんか・・・・・・いや言わないでおこう、おかげで定期的に寿命を確保できるからいいとしよう。最近わかったことだが、鬼を食べてもあまり寿命は延びないらしい、簡単に言うと気晴らし程度にしかならない量だ。
「そろそろ始めたいんだけど」
動かない俺たちを見ていたシンが話しかけてきた。どうやら敵さんがこちらに近づいてるらしい。
「わかった」
俺は俺の仕事をする
「契約発動」
美琴、鳴海、シンのクリスタルが光る。これが俺の仕事だ。俺がエクソシストになった時、3人の加護をするための天使が居なかったので俺が3人分引き受けることになったのだ。そのとき佐紀にやめとけと言われていたが、俺の魔力レベルを見て何も言わなくなった。ちなみに今も順調に魔力は増え続けている、これも定期的に『食事』をしているからだ。でも毎回思うが
「だるい」
「それくらい我慢しなさいよ」
「お前に何がわかる」
そう、だるいのだ。仮にも3人分の加護をしているのだ、これがだるくないわけがない。ふつう加護は1対1で交わすものであり、そんな何人もやるなんて例外中の例外、俺くらいしかできないだろう。おまけにこの3人の実力も考えて、通常の倍以上力を与えているのだ。感謝してほしい。
そんなことをいまさらグチグチ言うつもりはない、それより戦闘だ。といってもほとんどやることはない、はじめこそ俺がほとんど戦闘をしていたが、今回みたいに雑魚の場合はこいつらに任せ、戦闘訓練の代わりにしている、はじめに比べればいくらか余裕が出てきたし、今度もう少し強いのと戦わせることにしよう。
「シン!!じゃま!」
「邪魔なのは君だ!」
・・・・・・やっぱりやめとこうか・・・・・
俺が少し目を離した隙に『また』鳴海とシンが喧嘩を始めた。この2人はいつもそうだ、どうやら2人は思考回路が似ているらしくいつも同じ場所で居合わせてしまう。本当はどちらかが裏をかいてフォーメーションをつくるべきなのだが、この2人にそれを求めるのも酷だというものだ。
『うるさい』
どうやら鳴海とシンの喧嘩が相手さんを刺激したらしい。悪魔はすでに戦闘体制に入っていた。
「喧嘩は後にしろ」
一応は助言しておく、でもこれだけでは聞かないので『餌をまく』
「こいつをうまく倒したら、少しレベル上げてやる」
『本当!』(鳴海&シン)
どうやって移動したのか、2人はすでに俺の目の前に居た。さっきまで悪魔をはさんで向こう側で喧嘩していたと思ったのは俺の幻覚だったのだろうか。
「本当だ」
2人の目はとても輝いている。そんなに強い奴と戦いたいのだろうか、きっと鳴海が俺に暴行をくわえるのはきっとストレスが溜まっているからなんだな、今度からはもっと強い奴と戦わせることにしよう。
『うるさいうるさいうるさい!』
悪魔はどうやら痺れを切らしたらしい、いきなり襲って来た。
「シン、美琴」
「わかっている」
「私もいいよ」
鳴海の合図で3人とも構える。構えるといっても少し姿勢を低くする程度だ、3人ともまだ体術は未熟だがその代わり魔法をうまく使っている。
さっきとはまったく違う、悪魔を三角形に囲み油断なく悪魔を見つめる。悪魔はというと、3人が自分を囲んでいることで誰を攻撃していいかわからないようだ、しばらく誰も動かなかった。そんな中ではじめに動いたのはシンだった。
まず一歩前に出て砂を払い悪魔にかける。悪魔は瞬時にそのシンに反応し砂を羽ではらう。しかしそこで美琴が動き出す
「『ウェンター』」
水魔法のウェンターは、水を音速で飛ばしダメージをくわえる技であるがこの場合は少し違う、美琴が打ったウェンターに向かって放たれる赤い光、それは間違いなく鳴海のファイヤーボールだった。鳴海の放った炎は美琴のウェンターを直撃し水蒸気を巻き上げる、その水蒸気は悪魔の視界をふさぎ、3人の視界もふさいだ。
「シン君お願い」
「わかった」
そこでシンが出る、シンは呪文の要らない簡単な風魔法で霧を操る。だんだん3人の視界が開けてきて悪魔に霧がまとわりついてるような形になる。
「じゃ、今日はあたしでいいね」
鳴海のご機嫌な声、それに美琴は笑顔でYESと答えシンは「仕方ない」といいながらも鳴海に譲った。
「行くわよ」
鳴海は両手に魔力を集める。その魔力はどんどん膨れ上がりバスケットボールくらいの大きさになる
「『ウォール』」
鳴海は悪魔に向かいその膨れ上がった魔力の塊を投げつける。自然に霧が晴れ悪魔はやっと自分の状況が把握できた、しかし時すでに遅し、魔力の塊は悪魔を打ち抜き爆発。悪魔は地に落ちた。
今日の任務も無事終了した。俺は食事をすませ次の日のために眠りについた。
3日に1話程度で頑張ります。
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