復讐、末路
○ 復讐、末路
――ここは、いったい。
たしか神の奇蹟が勝手に発動して……そして、どうなったんだっけ?
「ああ、ようやくじゃ。ようやく……妾の復讐が完遂する」
「? ネメシア様?」
「おお! 未央! よくやってくれた! おかげで………妾はこの呪縛から解き放たれる!」
「……え? アッ、ガァッ」
ネメシア様のほうへ近寄ろうとすると、急に息苦しくなる。
なんで、どうして……どうして、……僕がネメシア様の姿で、ネメシア様が僕の姿なんだ? 訳が、分からない。
「では、まずいちから説明しようかのう……まず、妾は復讐神……かつて復讐に走ったたった一人の人間じゃった」
――だが、妾は神に出会い、そして力を授かり……復讐を成し遂げた。
「じゃが……その代償は、空席となっていた神の座席に座ることじゃった」
「っ、それとこれに何の関係が――」
「神というのはな……なんでもできるが、なんでもできないように設定されているのじゃ。それゆえに、力があっても振るうことができなかっか」
「………」
「じゃが、この体――未央という存在は、いま復讐神の力そのものを手に入れ、そして神の呪縛から解き放たれている! ああ、最高じゃ! この神の力を思う存分振るうことができるのじゃからな! ……ああ、もちろん。お主という存在は、妾にすり替わっておる。この現世にお主の居場所はなく、神の力も妾が持っているから……まあ、不滅の存在だけということじゃな」
「な、ぁ……ふざ、けるな! 僕は、まだ復讐を終えてなんて――!」
「……はぁ、知らんのじゃ。妾はこの自由を手に入れるためにどれだけ苦心したことか。不幸な体質、波長の合う精神、そしてなにより……復讐の神に相応しい復讐心。それらすべてを兼ね備えたのがお主、未央じゃ。まあ、性別は妾に会わせて変えさせてもらったが」
「……っ」
「さあて、と……ではな。せいぜい、永劫の時を楽しむとよい」
「ま、待て!!」
しかし、ネメシアは立ち止まらず……どこかへと消え去ってしまうのだった。
―――あれから、どれだけの時が流れただろう。
もう、体内時計は狂って、神の目――世界を覗き込みことができる力だけは残っていたようで、あいつらの末路を眺めたり、真央さんを見ることしかできなkった。
あいつらは、それぞれ進路が上手く行かず、落ちぶれている様で……まあ、そんなことどうでもよかった。
真央さんは、よく分からない。
時々、姿が見えなくなるし……でも、幸せそうでよかった。
ああ、でも……。
「これは、あんまりだよなあ」
鎖につながれて、僕はなにもできない冷たくて暗い牢獄の中に囚われていた。
なんでも、あの変死事件の真相はネメシア様が渡した神の奇蹟が生み出した歪みのようなもので……人の身に神の力は分不相応ということだろう。
その責任を問われて、『永劫牢獄』に閉じ込められるという刑が執行された。
「……でも、いっか。やりたいこともやるべきこともないし……このまま、腐っていくのを待つのも」
達観した心情で、そんな思ってもいないことを考える。
でも、そう思うのは事実だし……なにもかもがどうでもよくて。
真央さんは、幸せになるだろうか。
陰から、こっそりと見守ることしかできないけど……僕は祈っている。
神の身なのに、どこに願うのか……それは分からないけど、ずっと永遠に、永劫に。
この暗い牢獄の中で―――
「やっと、見つけた。いやあ、苦労したよ……こんなところにいるなんて」
「えっ……」
―――その声が聞こえたときには、そこは暗く閉ざされた牢獄ではなく……花が満開に咲いている美しい庭園で……目の前には、変わり果てた……真央さんの姿。
いったい、どういうことなのだろう。
「さあ、行こう。ずっと、永遠に二人きりの世界に」
「あ、ああぁ……はい」
何故、とか。どうしてなんて要らない。
僕はこの人さえいれば、他のことなんてなにも―――
要らないんだから。




