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ある日のバレンタインデー

作者: でんか

処女作です。若干描写不足かもしれない…

バレンタインデー。それは全国の女子達にとって一大イベントである。

女の子達は丹精込めて作ったチョコレートを男の子達に渡し、その気持ちを伝えるのである。

彼女達にとっては毎年2/14は戦の日なのである。


「うーん・・・うまくいかないな・・・」

彼女、大里理実はチョコレートと格闘していた。何回やってもうまく固まらずにヒビが入ったり、

型から取り出すときに割れたりしてしまう。もうかれこれ数時間熱々のチョコレートと格闘している。


理実は昨日学校でクラスメイトの大迫健一とバレンタインデーについて話す機会があった。

「明日ってバレンタインデーだぜ、大里は誰かにチョコレート渡す予定とかあるのかよ?」

「はぁ?別に大迫には関係ないでしょ?」

「なっ・・・!!そんな言い方することないだろ!!そんなんだからモテねーんだよ!!」


理実は健一のあまりに無神経な一言で彼女の頭の中の水が一気にグツグツと音を立てて沸騰する。

それはもう信じられないくらいの音を立ててつい先ほどまでに水だったそれは一瞬にしてお湯へと姿を変えた。そりゃもうまるでポットでお湯を沸かすように


「はぁ?はぁ?なんだって?今なんつった!?」

理実は健一の胸倉に掴みかかり、掴んだ襟をぐっと持ち上げる。

理実の身長は157cmほど、健一の172cmとだいぶ差があるが、それでも彼女の両腕は確実に健一の袖を捕えていた。

「う・・・うぐっ・・・大里ちょっと待て・・・くるし・・・」

「しるかバカ!!わたしがどんな気持ちなのかも知らないで・・・」


理実の中では怒りと愛情が入り混じった複雑な気持ちがゆらゆらと揺れ動いていた。

彼女、大里理実は大迫健一にひそかに恋心を寄せていたのだ。

彼女たちは現在高校2年生。1年の頃から同じクラスで同じ高校に通う仲

その上家も割と近所なのだ。


健一は理実の手をゆっくりと払いのけると落ち着いたトーンで言った

「じゃあ相手に手を出してもいいってことになるのかよ?」

「う・・・それは・・・ごめん・・・」

「確かに俺も失礼な事を言ったかもしれないけどさ・・・手を出すのはダメだろ」

「・・・」


理実は何も言い返せずにいた。確かに怒りにまかせて彼に手を出してしまったが、

冷静に諭されると自分が悪いことをしてしまったことにようやく気が付く。

さっきまで頭の中で沸騰していたお湯が急激に冷め、水へと変わっていく


「でも・・・!!それは健一があんな事言うからでしょ!!」

「うっ・・・それは・・・」

「お互いに気まずい空気が流れ・・・」


キンコンカン☆コーン!!


二人の空間を無理やり引き裂くように次の授業を知らせるチャイムが流れる

「ふん!!」

二人同時に憤怒し、お互いの席へと向かっていく。それから放課後まで目は合う事はあったが、

お互いに話さないまま学校を出た。


そしてわざと同じタイミングにならないように遅れて帰宅し、今に至る

「健一のアホ・・・」

理実は心の中で彼の襟を掴んでしまったことを少し後悔していた・・・

自分が今作っているチョコレート、この作品を全否定されている気がしていてもたってもいられなかった。

「はぁ・・・メッセージも来てないし・・・本気で怒ったのかな・・・」


そういいつつ彼女はポケットからスマートフォンを取り出すとロック画面に目をやる。

そこには彼、健一と1年の頃に行った社会見学の時のツーショットの写真が壁紙として設定されていた。

「はぁ・・・見たってメッセージが来るわけじゃないし・・・」

彼女がそういいつつ画面を眺めていると


ピロリン★



スマートフォンにメッセージが送られてきたという通知が表示される。


健一:今日はごめん 誰にあげるのか知らないけどチョコレート作り頑張れよ


そこには健一からの謝罪と誰にとも言えない励ましのメッセージが表示されていた。

「もう・・・何よ」

彼女はあえて、メッセージを見てスマートフォンの画面のスイッチを切る。

恐らく健一の画面には既読と表示されているが、そこに彼女からの返事はなにも表示されていないだろう。


そこには彼女の明確なメッセージが込められていた。 会って謝りたい、手作りのチョコレートを渡して

彼を驚かせたい。そういう思いが彼女の中にはあった。

「もうちょっとだけ・・・頑張ろうかな・・・」

彼女はそういうとコンロのノブを回して再び火をつけた。


まるで彼女の心にもやる気の火をつけるかのごとく、カチッという子気味いい音の後にボッと火が灯る

。その熱が鍋に固まって張り付いたチョコレートを溶かしていく。

理実の心に張り付いたモヤモヤを溶かすかのごとく。


「健一・・・気に入ってくれるかな・・・いや・・・もし気に入らないとか言ったら・・・」

彼女はそういいつつ容器に固まったチョコレートを入れていく。

「ビンタしてやるんだから・・・」

彼女はそういいつつチョコレートを黙々と溶かし、同時に夜も更けていった。


・・・翌日・・・


今日も学校でいつもと同じように授業を受け、お互いに話さないまま時が過ぎていった。

放課後の教室、帰り際に理実は健一を引き留め、話があると言って校庭の隅へと呼び出した。

「なんだよ・・・昨日の事まだ怒ってんのか? 謝っただろ・・・」

「そうじゃないの・・・」


理実はもじもじしながら鞄に手を入れる。

「ん・・・?」

健一が鞄の中身を探す理実の手を見つめると、彼女の手が止まった。

どうしようもない恥ずかしさ、自分が作ったチョコレートをバカにされたらどうしよう

そんな気持ちが心の中へ広がっていく。


「あの・・・ごめん!!やっぱいい!!」

理実はそう言って鞄を抱えてその場を立ち去ろうとする。

「まっ…待てよ!」

健一がとっさに理実の手を掴む。

「あ・・・」

「う・・・」


そういうと二人はその場に固まってしまう。

「その・・・なんていうか・・・ごめんな大里の気持ちに気づいてあげられなくて」

「何よ・・・急に・・・」

「チョコレート・・・作ってきてくれたんだよな?」


健一がそういうと理実は急に真っ赤に頬を赤らめた。

「つ・・・作ってなんてないわよバカ!!」

「じゃあ・・・」

健一がそういいつつサッと理実の鞄からチョコレートの入った透明な袋を取り出す。

その袋にはハートや星など様々な形をしたチョコレートが詰まっていた。


「返して!!それ!!」

理実は健一からチョコレートを取り上げようとするが、健一はサッと手を高く上げる。

「せっかく作ってくれたんだろ?食べていいよな」

「違うわよ!!健一のために作ったんじゃないんだから」


「でもこれ袋に健一って・・・」

袋には白いテープの上に細くて小さな字で健一と書かれていた。

「うっ・・・それは・・・」

「ありがとな理実・・・手作りなのにヒビとか全然入ってないし、スゲーなって思う!!」


「・・・特別よ」


2/14 バレンタインデー、それは女子にとっては戦の日であり、恋の日であり、運命の日なのである。

今年も多くの女子が多くの男子と恋の花を実らせ、また一方で多くの女子が戦いに敗れ、涙で頬を濡らす。

男子にとっては可愛い女の子からチョコレートがもらえる日、あわよくば女の子と繋がる事の出来る日でしかない。


しかし女の子達にとっては自信の愛を伝える運命の日なのである。


「理実・・・おいしいよ」

「・・・ありがと」


チョコレートのように甘い恋の香りは空へと広がっていく









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