カオスな現象が起きています
「はぁ……はぁ…」
あれから走り続けているが、先生が見つからない。どうしよう。体力ももう底をついているし。
「どうしたんだい?」
後ろから声が聞こえた。この声は前に聞いたことがある。後ろにいる人は、理事長だ。
なんで理事長がいるんだろう。気にしている場合ではなかった。理事長でもいいからついてきて欲しい。
「あの、ついてきてもらえないでしょうか」
ぽかんとした顔をされた。まぁそうだろうな。
「今、事件が起こっているもので」
「事件?」
「大人の力が必要なのです」
私が光を切断したかのような瞳で真剣に彼を見つめた。それを見た理事長は若干微笑みながら
「力を貸そう」
と言ってくれた。ありがたい。早くしなければ。碧斗に危険が及んでしまう。息を整えながら理事長に事情をささっと説明。
「とりあえず急いで屋上まで走ってください。私の事は待たなくても結構です」
私がそう言った瞬間理事長は四十代だと思えないような速さで屋上まで走っていった。予想外だ。私も後に続こう。
「あら?亜莎紀さん、どうしたんですか?」
オーバットタイミング。花影さんと楽しい仲間たち。(攻略対象)
「すみません、今急いでいるので」
私はそう答えると走るのを再開した。
「ええ!?ちょっ、亜莎紀さん?」
花影さんの言葉なんて今は無視だ無視。わたしは今暇ではない。
「って遅っ!!遅いですわ!」
うわっ、なんか追いかけてきた。
「さっきの話、聞いておりましてよ」
花影さんはにっこり笑顔でそう言うと、
「夕陽、亜莎紀さんを運んで欲しいの」
オー上目使い。運ぶと言う言葉が聞こえたのは、幻聴ではないようだ。助けなんて求めていないと言いたいところだが、走るより担がれた方が手っ取り早いのは事実だ。はぁ…絶対今日からランニング始める。
「恵利華が望むなら」
私は攻略対象の中で一番がたいのいいイケメンに担がれた。と言うか花影さんにどっぷりはまっているな。うーん、とりあえず頑張って。私は何も知らないぞ。彼が走り出す。花影さんも笑顔でついてくる。速い。花影さんはまだまだ底が知れないな。
彼はがたいがいいだけあって走るのも速い。私を担いでいるのに。けど事件発生。少し走った先によく見知った人がいた。
「亜莎紀っ!」
お分かりですか。彼は鈴野和帷人。私の兄、つまりお兄様だ。そういえばさっきメールを送ったな。後何気に本名初公開?いや、現実逃避はよそう。
「お兄様」
お兄様は私の夕陽から奪い取ると、お姫様だっこをした。これはさすがに恥ずかしい。身動きがとれない。
「屋上でしょ?早く行こうか」
素晴らしいスマイルで走るお兄様。やっぱり彼女達はついてくるんだな。なんでついてくるんだろう。正直戸惑っている。
「君、確か亜莎紀をいじめていた花影恵利華だよね」
あ、険悪な雰囲気。
「……いじめてなんか!……いや、すみません。いじめていましたわ」
花影さんもお兄様の圧にはたえられない模様。
後ろの人達も何かを言いたそうだけど、お兄様が怖くて言えないようだ。内容は大体予想がつくけど。
「亜莎紀、顔色が悪いけど大丈夫?」
走ったからかな?それともデフォルト?いつも青白い気がする。
「普通です」
「そう。ならいいんだ」
「…………」
沈黙が続く。沈黙ってなんか気まずいわ。碧斗は大丈夫だろうか。ヤバい奴はおとなしくしてる?心配しすぎて口から血が出そう。
……後少し。後少しで屋上だ。どうか死者が出ていませんように。あ、でも理事長がいるか。
理事長生きてるといいな。お兄様が屋上の扉を開けた。
「鈴野さん。ついたんですね」
そこには笑顔でヤバい奴のことをしめている理事長と、端でそれを見ている碧斗と文月さんがいた。理事長、何者?手を軽くはたきながら理事長が
「ついさっき決着がつきました。この人は警察に届けますね」
と爽やかに言った。
「……はい」
もう、これしか言葉が思い付かない。
碧斗が私の方へ来た
「…亜莎紀、お帰り」
「うん」
「頑張ったな」
碧斗は頭を撫でてくれた。やっぱり碧斗といると落ち着く。碧斗の撫で撫ではお兄様によってすぐ中止されてしまったけど、そこは気にしない。
「亜莎紀はまだまだ僕のものだよ?」
お兄様は帰り際に碧斗に言っていた。なんかお父様みたいな発言だな。文月さんの話は、また明日聞こう。あ、でも自殺してたらどうしようか。
「文月さん」
「は、はい!」
「私に事情を話すまで、自殺は許さないですよ?」
「はい、わかりました!!」
文月さんは何で怯えているのか?とりあえず今日のところは自殺しないだろう。
「亜莎紀は、やっぱり僕の妹だね」
お兄様の意味深な発言が心に残った。どういう意味だろう。
……理事長がすごい。お兄様の名前、やっと出しました!和帷人くんです。
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