死に損ねた
本日2回目の投稿です
どうして彼がここにいるのだろう。もしかして屋上は彼の場所なのだろうか。
ほっといてくれて構わないのに…。本当に人は面倒だ。雪野木碧斗も彼女の偽善者だったのか。彼女になびいてないから少し好感があったのにな。そんなこと考えたって人は変わらないけど。と言うか、早く落ちないと倒れてしまう。そしたら、生きてしまう。…さっきからなぜ彼は離してくれないのだろうか。離してもらわなきゃ困る。
「お願いです、私を離して下さい」
「無理だ。そしたらまた屋上から落ちようとするだろう」
即答だった。そんなに早く言われるとは思わなかった。そして図星だ。いい人ごっこは他を当たって欲しい。
「でも、私死にたいんです」
「はぁ……」
ため息をつかれた。本当に、今の季節は体が弱くなるのだ。それなのに彼奴らが私を殴ったりするから。トイレでの水は本当にヤバかった。それに…あ、息が苦しくなってきた。これだから病弱は困る。はぁ本当にめんどくさい。
「おい、鈴野?どうしたお前、息が…」
私の苗字を覚えていたことに驚いた。雪野木は私の様子に驚いたようで、力が弱まった。今のうちだ。雪野木の拘束から逃げると…あ、ふらつく…また、失敗した…。
「鈴野?!」
私の視界はフェードアウトした。
◇◇◇
「また百点をとったの?__は凄いわねぇ。私の自慢の娘よ」
「へへへー、すごいでしょ!」
「お母さん、また百点とれたよ!」
「__それって大学のやつよね?__は6歳でしょ?」
「お母さん、また百点!」
「__絶対に本気になってはダメよ。貴女は天才過ぎる」
「うん………わかった」
……………………………
目が覚めると、私は白いベッドの上で寝ていた。点滴も刺さっている。あぁ、ここはいつもの病院だ。死ねなかった。
さっきの夢は前世の私の夢だった。
私は昔から何でも人よりも桁外れで出来た。それを見たお母さんが本気になってはダメと言ったんだ。そこからかな、私が本気になれなくなったのは。いや、お母さんの言いつけを守らずに周りの皆から化け物と言われた時からかな。あの時から私は家族以外に心を閉ざした。
それからどんなことも信じれなくなって、ただ、全てがめんどくさくなった。どうして死んでしまったのかは忘れたけど、そんなの忘れていた方がいい。
それより、死なないと。そうしないと明日も彼女の周りの人達に何かされるだろう。彼女も未だに私に絡んできて、
「どうして仲良くなろうとしないの?」
「そうやって人を突き放すのはおかしいと思うわ」
と言ってきたり。彼女は正論なのかもしれない。でも、私の生き方に口出ししないで欲しい。自分が全て正しい訳がないんだから。
最初は私に優しく接していた彼女も、最近は
「亜莎紀さんは人として終わってるわ」
「亜莎紀さんを信じた私が馬鹿だったわ…」
「体調が悪いから休むなんて嘘をついて!!亜莎紀さんずいぶんと調子がいいじゃない!保健室は体調が優れない人が使う場所なのよ。今すぐ出ていって!」
「亜莎紀さんのせいで皆困っているわ。もういい加減にして!」
「ずっと無表情で、まるで人形のようね」
もう、後半はただの決めつけだ。女神や聖女の名が泣いている。ずっと引きこもると言うのも考えたがそれは親に悪い。
だから死を決意した。死ぬのは怖くない。ここは何階だろう。死なないと明日になってしまう。
私は立とうとしたけど、力が入らなかった。そう言えば、まだ体もダルい。頭も痛いし…。
「ここは一階だから死ねないと思うぞ」
またこの人か。
「それと、鈴野は体が弱いんだな。周りの奴等は病弱は治って今は普通なのに体育を休もうとして困ってるって言ってたがあれは嘘なのか?」
誰に聞いたんだろうか。
「嘘じゃないです。ただ、言っても彼女は信じないだろうし、めんどくさくて」
私は正直に話した。別に嘘だと思われてもいいし。
「それでいいのか?鈴野は体が弱いのにも関わらず体育に出されていたのか?最低じゃないか。嫌じゃないのか?」
さっきから彼は聞いてばかりだ。でも、私の話を信じたのは彼だけだ。
「別に、どうでもいいんです」
「どうでもいい?」
「はい、私はいつの間にか感情がめんどくさいとダルいだけになっていて、怒ることも泣くことも笑うことも出来ないんです。」
信じてくれなくていい。ただ、ここまで聞いてくれた彼に教えたくなった。
「そうなってしまった理由とかあるのか?」
「どうして私にそこまで聞くんですか」
ただ、気になった。そして、信じてくれたことに驚いた。
「どうしてそうなったのか気になったからだ」
きっぱりと彼は言った。この彼になら言ってもいいかもしれない。私は初めてそう思った。
「じゃあ、話します、嘘だとか言ってもいいですけど、その場合私が死にます」
「ああ」
彼がいいと言ったので、私は言うことした。
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