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お兄様は怖い



「まあ、僕は弱った妹に鞭打ってまで話させるつもりは無いから、取り敢えず家に帰ろうか」


せっかく学園に来たのに、結局お兄様に連れ戻されるなんて…。少しだけとはいえど花影さんと話せたのはよかったとして、これほどまでに自分の体の弱さを憎んだことはない。


それに石城莉鈴の事を聞かれてしまったのはまずい。ずっと自分に関わって来なかった妹がいきなり関わってくるようになって、私は転生者なんだと言われたらいくらお兄様でも信じてはくれないだろう。


どうしよう。いつかは話そうと思っていたけど、こんなタイミングで話すことになるなんて。


はぁ、こんなことなら最初からお兄様の言いつけを守って寝ておけばよかった。


「亜莎紀、帰ろうか」


そう言ってお兄様は私の事を抱き上げて…つまり、お姫様抱っこと言うやつだ…。え、これで移動するの?


凄い恥ずかしいのだけど…。


降りようと思って身じろぎするも、がっちり捕まれていてびくりともしない。お兄様の方を見てみると、「ん?」と言って私を見返してくれた。けど、その笑顔には怒りがあった。


お兄様怖い。お兄様怖いです!


「え、鈴野さん帰るんですか?」


花影さんが納得いかないような顔で言った。ごめんなさい。もう少し話したかったんだけど…。


「また、後日話しましょう」


私は花影さんに聞こえるくらいの声でそう言うと、もういいでしょうとばかりにお兄様が私を抱き上げたまま、保健室を後にした。


「亜莎紀、寝てていいからね」


お兄様は私の頭をあやすように撫で、寝かしつけてきた。これが案外心地よくて、私はいつの間にか寝ていた。


◇◇◇


「くぅ…、すぅ…」


すぐに寝てしまった僕の妹。


「ふぅ…、手のかかる妹だなぁ…まぁ、何かしら事情があるのは確かだよね。」


亜莎紀の体温が感じられて、彼女がまだ生きていることに安心した。あと、石城莉鈴とは誰なのだろうか。保健室にいると聞いて、行ってみると中から声がしたから少し盗み聞きをしていたら、亜莎紀は私が石城莉鈴だと言っていた。自殺した天才少女、とも言っていた。けど僕はそんな人を知らないのだ。そんな人がいたなら僕も知っているだろう。


亜莎紀は僕の妹だけど、秘密を抱えているから、それに関係するのかもしれない。親の愛情を受けて育ったはずなのに、絶望を知っているような目をしていた。


まるで、僕達の事を家族と認識していないような。


今は家族だと思ってくれているみたいだけど、亜莎紀の瞳に光が宿っていない。守りたい。秘密があるなら共有したい。その小さな体一つで抱え込まないで欲しい。


家族を頼って欲しい。


「僕は何があっても亜莎紀の味方だからね。今は体を休ませておいて…。絶対に、失いたくはないから」


眠っている亜莎紀にそう語りかけた。亜莎紀は、元々長くは生きられないと言われてきた。だから目一杯可愛がった。亜莎紀は僕達にとって大切なお姫様だったのだ。どんな亜莎紀でも受け入れる自信がある。


亜莎紀にはこの事を伝えていない。この前、亜莎紀に言おうとしたんだ。したんだけど、亜莎紀は笑っていた。僕を見て、笑ってくれたんだ。「どうしたの?お兄様」と。やっと取り戻した笑顔なのに、その笑顔を曇らせたくなかった。だから僕は亜莎紀に伝えられなかった。


いつか知ってしまうときがあっても、その時幸せだったと思って貰えるよう、沢山の幸せを贈ろう。


僕はそう思って亜莎紀の額ににキスをした。



さて、亜莎紀の体調が整ったらどうやって亜莎紀の事を聞いていこうかな。秘密も洗いざらいはいてもらおう。


自分の寿命を縮める行為をした妹に、少し…いや、だいぶ腹をたてているのでもう二度とそんなことしないようにしておかないとスッキリしないのだ。



「んん…」


その時、亜莎紀は謎の寒気を感じたのであった。






お読み頂きありがとうございます。これからも頑張ります。やっぱりお兄様名前つけないといけないですよね…。

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