私の思いは
短いです
あれから碧斗と別れ、今は家に帰っている最中。私の本気って、どれくらいなんだろうか。
努力したら報われるって言うけど、努力しなくてもできてしまう私はどうしたらいいんだろう。
他の人が聞いたら自慢に聞こえるかもしれないけど、私は私が怖い。
最初はお母さんが私の成績を見て喜んでくれたから。もっと上にいきたくなって、どんどん私の年では出来ないようなことを覚えていった。
その時私に努力なんて言葉は存在しなかった。それが普通だと思っていた。
いつしか、お母さんも、他の人も、私の事を気味悪がるようになった。
私の事を最初に化け物と言ったのはお母さんだった。いつもは穏やかに笑っているお母さんが、私に怯えていた。それがどうしよもなく悲しくて、心を閉ざしてしまったんだ。
学校にも行かないで、ずっと引きこもり。そんな私に唯一笑顔を向けてくれていたのは姉だった。
でも、姉が向けてくれていた好意を、私は踏みにじった。なのに姉は私が死ぬときまでずっと私に構い続けていた。
どうして私はあんなに近くにいた味方を突き跳ねていたんだろう。謝りもせずに死んでしまった。
今回も好意を向けてくれている人を突き跳ねて、死んでしまうところだった。めんどくさいやダルいと思っているのも、本当は私の逃げでしかないんだろう。
本当は何がしたかったのか。私は何をするべきなのか、全てに逃げ続けた私に神様はチャンスをくれたのかもしれない。ゲームのヒロインではなくて、ただの亜莎紀が碧斗と出会ったのも、きっと偶然だ。でも、偶然もある意味運命だ。私はそう思う。
碧斗は、私に沢山の事を思い出させてくれた。泣かせてくれた。今はまだ、本気が出せないかもしれないけど、ずっと学園に来ていなかった私が、彼の隣にいても文句なんか言われないくらいには私の実力を出す。
私が本気になるのは、いつだろう。そう遠くはないことだと思う。その時のことは予想がつかないけど、何故かそう感じた。
あと少しで家につく。私の、鈴野亜莎紀の家に。
私がテストで一位をとったことに、喜んでくれるだろうか。今日は喜んでくれるかもしれない。また化け物だと言われたら…?
家族の私に向けてくれている感情が、恐怖に変わってしまったら。
考えるのが怖い。
けど、その時はもう逃げない。それに、私の家族がそんな人だと分かってもいないのに色々と考えて怖くなるのは駄目だ。
皆、私の大切な家族だ。
家に着くと、私は「ただいま」と言った。何だか慣れなくて、少しむずがゆい。
「お帰り。いつもより遅かったけどどうしたの?」
お兄様が笑顔で私に詰め寄ってきた。これは、黒い笑顔だ。きっと私の帰りが遅かったことに怒っているのだろう。いつのものような優しい笑顔のはずなのに、圧を感じた。
「ちょっと…色々ありまして」
成績一位をとって先生から呼び出しをくらい、なにもしていないのに結構きつい言葉をくらったのでそれを録音して理事長に届けた。なんて言えない。
「はぁ、亜莎紀は隠し事が多いよね。兄としては少し寂しいな」
そんな顔がさせたかったわけではないのだ。言っていいかな…。チョロいのは分かっているけどお兄様がしゅん、とした顔をするから!
結局お兄様に洗いざらい話すて、怒られた。危ないことはするんじゃないよ。と釘も刺された。
「けど、一位をとったのはすごいね。自慢の妹だよ」
お兄様が一瞬、お母さんと重なった気がした。だからつい、
「お兄様は私を見捨てない?」
と聞いてしまった。あぁ、なんて事を。
「見捨てるわけないだろう。ただでさえ死のうとする妹なんだから。危なっかしくて守っていないと消えてしまいそうでね。」
「え…?」
なんでそれがばれて…
「亜莎紀の友人から聞いたよ」
碧斗か!と言うかいつから知り合いなんだよ。
「そうですか…」
「一人で抱え込まないでね?」
そう言って優しく頭を撫でられた後、抱き締められた。
「は、はい」
お兄様はもしかしてシスコンなのかな?こんなときに私は冷静にそんなことを思っていた。
その後お父様やお母様にも同じようなことを言われた。家族だなぁと改めて思った。
それと同時に、見捨てないと言われたことにほっとした。
私は、その時に思い出してしまった。私が死んだ理由を。
悲しくないと言えば嘘になるけど、終わったことだから思い出さなくてもいい。この記憶には蓋をしよう。
だから明日にはきっと、忘れている。
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