見抜かれた
職員室から出たあと、私は今碧斗に怒られている。
「最初はよかったよ。後のやつなんだよ!何で本当のこと言わなかったんだ。これじゃあまた倒れるぞ」
「倒れないよ」
そう、倒れない。意地とかでもなく、普通に倒れるわけがない。私だって対策はしてあるのだ。職員室の危険人物達をお掃除しようかなと思って。
「あんな教師らにやられて終わるのは嫌だから、私だって対策はしてあるから」
あんな生徒の言葉も信じることも出来ない教師なんかこの学園にいなくていい。めんどくさいと思いながらも今日呼び出されるのを薄々感じていた私は、今日がお掃除をするいい機会だと思ってボイスレコーダーを持ってきていたのだ。
さっきの発言は全て録音してある。うちの学園の校訓は、生徒の意見を尊重し、一人一人が自分らしく生きていける、過ごしやすい学園。だったからこのボイスレコーダーを理事長に届けたら一発だろう。この事を全て碧斗に話したら
「…はぁ…お前らしいな。今なら丁度父さんは理事長室にいると思うけどいくか?」
と言ってくれたので今から行こうと思う。早く帰りたいのも事実だけどお掃除がまず先なのでチャチャっと終わらせるのが本望だ。
「行く」
「ついてこいよ」
碧斗は理事長室まで案内してくれるらしい。まぁ、今までそんなところに行くことがなかったし、道が分からなかったから助かる。
彼は慣れた感じでずんずんと進んでいった。歩く速さは私に合わせてくれているみたいだ。ゆっくりですみません。
結構遠い場所にあった理事長室だけど、そこだけ無駄に豪華だった。理事長だしこんなものなのかな。
「ここだ」
そう言って碧斗は理事長室に入る扉を指差した。木で上品に作られた扉に、金のプレートがついていて、理事長室と掘られていた。
「ありがとう。碧斗も来るよね?」
私の問いに碧斗は軽く頷いた。私は扉を2回ノックして「失礼いたします。1年の鈴野亜莎紀と申します。話したいことがあるのですが、お時間よろしいでしょうか」と丁寧に言った。
今の私は亜莎紀お嬢様だ。ご令嬢になったつもりで(一応私は令嬢だけども)挨拶をした。
「どうぞ、入ってください」
返事が帰ってきたので私は扉を開けてもう一度「失礼いたします」と言った。
「君はテストで花影恵利華を抜いて一位になった人だろう。今回は一位が二人いると言う珍しい事になったからね。一位が揃ってどうしたんだい?」
理事長は優しい笑顔を向けながら用件は?と聞いてきた。手短に終わらせよう。
「理事長は私が前回のテストが中間位だったのを知っていらっしゃいますか?」
「あぁ、知っているよ。頑張ったね」
さすがは理事長。話が早く終わりそうな勢いですらすらと事が進んでいく。この学園の理事長なだけあって生徒の意見を尊重する人なのかな。
「私は今まで本気を出していませんでした。それが疑いを呼んだのか先ほど先生方から職員室に呼ばれていました。これが証拠です」
私はそう言ってボイスレコーダーを出し、それを再生した。
これを聞いた理事長はあまり動じてはいなかったから、よくあることなのかもしれない。
「このレコーダーで私は本気を出したら先生よりも上と言っていましたがこのテストで百点を取るのが私の限界です。ですがこの先生方の態度は如何なものかと思いまして」
真実を嘘を混ぜてみた。余りに天才過ぎると、良いことは起きないから。それを私は身をもって知っている。
「そうだね、これはいけない。私の落ち度だ。少しの間、このレコーダーを預かっていてもいいかい?」
「はい」
「…花影恵利華がこの学園のトップだと思っていたが、どうやら鈴野亜莎紀と言う天才が隠れていたようだ。あと鈴野さん。」
「何でしょう」
「嘘をつくのは駄目だと思うよ」
「…え?」
「君はあの言葉の通り教師よりも上の頭脳なんだろう。どうして今まで隠してきたんだ?実は本気なんて出していないんじゃないか?」
図星をつかれた。本気を出していないのは本当だ。今までは手を抜いていて、それを私本来の実力に戻しただけであって本気ではない。けどそれを理事長に見破られるなんて思っていなかった。これは答えを教えてもいいだろうか。
「そうです、私は本気を出していませんでした。今まで手を抜いていて、それを元の実力に戻しただけです。」
「ははっ、君は面白いね。うちの学園にこんな天才が眠っていたなんて。まぁ君は初等部からいたけど高等部からしか来ていなかったからね。君はもっと上を目指せるだろう。こんなところにいるのが勿体ないくらいだ。碧斗、鈴野さんを守るように。難しいようだったら私の名前を出しても構わない」
「鈴野さん」
いきなり名前を呼ばれてビックリしてしまった。そして返事を忘れた。
「君の実力、期待しているよ」
凄く重い圧がかけられた気がする。
「頑張ります」
「亜莎紀っ行くぞ」
碧斗に小声で言われた。時間が少しかかってしまった。すぐに終わると思っていたのに。お父様やお母様やお兄様に心配をかけてしまう。
「失礼いたしました」
そう言って扉をしめた後、彼が
「鈴野亜莎紀…、あんな子に会うのはこれで2回目だ」
と言っていたのを私は知らなかった。
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