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第9話 群れの恐怖


「今日は森の中を探索をするわよ」


 始まりはこの言葉からだった。


 突然何を言い出すのかと思いオレはファナリアにどうしてだ? と聞き返す。


「そんなの決まっているわ。あんただってドライガーを倒したいんでしょ。この辺りにいるってことは分かっているんだから、探さなくちゃあるものは見つからないわよ」

「……確かにそうだな」


 オレもファナリアとの訓練でドライガーと戦った当初よりもかなり強くなった。今のオレならドライガーを倒せる可能性がある。なら、さっさと見つけて戦った方がいい。それならば、ファナリアの言葉にも一理ある。


「よし、分かった。なら、早速手分けして探すぞ」


 オレはすぐに準備を整えて、出発しようと思ったのだが……。


「だめよ」


 ファナリアの言葉に足を止める。


「どうしてだ?」


 手分けして探したほうが効率も良いし、互いに足を引っ張らなくて済む。なのになぜダメというのか?


「今回は一緒に探すわよ」

「はあ? オレは十分に実力もあるし一人で十分だ」


 逆にファナリアと探索するとなると邪魔にしかならん。


「確かにあんたの実力だったら一人でいけると断言するわ。でも、念のため。一人で森に向かって死にましたなんてことになるのは嫌でしょ?」


 ……確かにこれも言っていることは正しい。


 一人でやるよりみんなでやるって方がいいってことだろ。協力してやっていく方が自分でも気づかなかったことに気付いてくれるかもしれない。そう思えばいい提案に思える。


「あっそ、オレは一人で行く」


 だが、ファナリアの提案を無視してオレは小屋の中に準備をしに戻っていく。


「ちょっと待ちなさいよ! あんただって死にたくないんでしょ。なら、一緒に行きましょうよ!」


 ファナリアが急いで駆け寄って来てオレを抜き去ると行かせないように立ちふさがる。


「確かに死にたくはないがオレは一人で十分だ」

「どうしてよ?」

「お前に来られると足手纏いになるからだ」


 だから、すぐにどけと手をしっしっとやって退けようとするのだがファナリアは一切動こうとしない。


「確かに私はあんたの速さにはついていけないわ。でも、私だってある程度だったら戦えるの。だから、どかない」


 はぁ……なぜここまで頑なになるのだろうな。


「勝手にしろ」


 オレはこれ以上話しても無駄だと悟り、ファナリアの横を通り過ぎて小屋の中から必要な装備を取りに行った。




 ★★★




「待ちなさいよ!」


 滝の向こう側を探索することに決めたオレは滝を超えた先の森をうろついてドライガーに関する手がかりを探そうとするのだが、ここでファナリアに肩を掴まれて足を止めてしまう。


「なんだ?」

「なんだ? じゃないでしょ! 勝手にしろっていっておいて置いていくなんてひどいじゃない!」

「はぁ? 確かに勝手にしろと言ったがそれでお前に合わせるなんて一言も言ってないだろ」

「うっ……確かにそうだけど! 納得できないわよ!」


 面倒だな……。


「しゃあないか……」


 これ以上邪魔されるのも迷惑だし連れていくしかないか……。


「後ろの警戒だけ頼む。それ以外は全部オレがやる」

「まかせない!」


 突然、ファナリアのやる気がマックスになったのかものすごい勢いで首を左右に動かす。


「そこまでしなくていいぞ。というか首を痛めることにな……」

「うっ! くびが!」


 はぁ……やっぱり置いていこうか。


「もう行くぞ」

「いたたたたって……え! 待ちなさいよ!」


 後ろが騒がしいので一つ文句でも行ってやろうと振り向くとファナリアが地面に落ちている石に躓いてオレに向かって倒れかかってきた。


「おっと……何してんだよ」


 オレは横に移動して避けるが、代わりにファナリアはオレの前にあった木にぶつかる。


 危ねぇ。オレが振り向いていなかったら巻き込まれるところだったぞ。


「どうして避けるのよ!」

「邪魔だったから」

「邪魔とかの問題じゃないわよ!思いやりとかないの!?」

「ない」

「即答!?」

「いい加減にしろよ。くだら……おいどうした?」

「うしろ……」


 ファナリアが唖然としてオレの真後ろを指差すので何事かと振り返る。


「ボァアアアアアァァァァァァァァァァァァ!」


 うん……恐竜がいた。


「っ! まじかよ!」


 オレは急いでその場を身体強化フィジカルアップを利用して離れる。ファナリアと身体強化(フィジカルアップ)は発動済みなようでオレの横へと移動する。


「恐竜がこの世界にいるんだな……」


 改めてまじまじと見てみるが体長だけでもざっと十五メートルはあるであろう大きさがある。色とかは恐竜のイメージに合うかは分からないが濃い緑だ。


 緑色の恐竜はその首を伸ばすと高い所にある葉っぱをむしゃむしゃと食べた。草食なのだろうか? それなら襲われずに済むのだが。


「……逃げた方がいいわ」

「そうなのか?」

「早くしないとまずいこと……」


 ファナリアが喋っている途中、ドン! と足音が鳴り響いたせいで声が聴こえなくなる。


 慌てて振り向くとそこにはまたしても緑色の恐竜がいた。それも明らかにオレ達を狙っているのか視線をずっとオレに固定したままだ。


「これはやばいな……」


 ファナリアが不味いといった意味が分かったかもしれない。


「おい、こいつの弱点とか特徴って知らないか?」


 何か役立つ情報があればいいなという希望に基づいてファナリアに聞いてみる。


「あの巨大な魔物の名前はタンバティだと思うわ。何よりもあの長い首が何よりの特徴だもの」


 どうやら、ファナリアは恐竜の事を知っているっぽい。


 なら、都合がいいとファナリアに恐竜の魔物に関する情報を聞く。


 どうやら、タンバティと呼ばれる恐竜の魔物は上級に分類される魔物らしい。タンバティの巨体から繰り出される体当たりや首を振り回すのはかなり攻撃力が高いらしく、身体強化フィジカルアップをしていても骨折するぐらいのダメージは受けるらしい。


 じゃあ、もう勝てなくないかと思うが巨体のせいなのかスピードがかなり遅いらしい。


 だから、避けつつ攻撃すれば意外と簡単に倒せるらしい。ちなみに顔や足を狙ったりするのが弱点だったりする。


 更に、この恐竜。物凄い金額の金にもなるらしい。冒険者たちの中では動く宝と重宝されていて、上級の魔物の中でも意外と金になる。この恐竜の魔物を狩る専門の冒険者までいるらしい。


 要するにこいつは一攫千金になるということだ。


「なら、狩らないわけにはいかないな」


 この世界のお金に関する知識はないが、それでも金はあるだけ安心する。


 かなりの金額になるっぽいし一匹や二匹倒せないようじゃこの世界では生きていけないだろう。


 オレは戦うことにするのだが、ファナリアが依然として気まずそうな表情のままだ。


 なにか困ることでもあるのかと尋ねようと思ったのだが、それはタンバティに邪魔されて話は強制的に止めさせられた。


 後ろにいるタンバティがその長い首をオレに向けて振り下ろしてくる。


「チッ……」


 オレはタンバティの攻撃を避ける。タンバティの首が地面に当たりそこに大きな穴が出来る。


 最後まで話し合いはさせてくれないってか。いい度胸してんじゃねぇか。


「ぶっ飛ばしてやるよ!」


 自然とオレが後ろのタンバティ、ファナリアが正面のタンバティを相手にすることになって戦闘が始まる。


 タンバティの遅い首の攻撃を避けたオレは体の後ろ側に回り尻を全力で蹴り上げる。


「痛ってぇ!」


 何だよこれ。硬すぎるだろ。


 タンバティの体の表面をよく見てみるとうろこみたいのがあり、それがオレの攻撃の衝撃を分散させてダメージが通らないのだろう。


「なら、聞いた通りに足か顔を狙うしかないってか……!」


 タンバティの強烈な首のスイングを避けて距離をとる。


「問題はどうやって近づくかだな」


 ファナリアの方はどうだろうとふと様子を見てみると、彼女はタンバティ相手に善戦していた。


 もう既に足の一本を使用不可にしてかなり動きが鈍くなっている。


 元々があまりにものろまで、更に遅くなったことによって攻撃がかなり当たっている。この調子だとオレよりも先に倒すかもしれない。


「あいつなんかに負けていられないな」


 余り時間をかけて戦ってもこいつの一撃をくらったら終わりだ。


 なら一瞬の勝負で終わらせるしかない。


身体強化フィジカルアップ


 わざわざ声に出して魔法名を唱えるのだがこれは意外と意味がある。なぜだか無言で使うよりも暗示に似た感じなのだろうか……何時もよりも効果が全身にまで行き渡るのだ。


 それにオレ自身で考えて決めた戦法があれば負ける気がしない。


「ボアアアァァァァァァアアアァァァァ!」


 タンバティは首の攻撃ではオレに攻撃をかすることすら不可能だと思ったのだろうか首を低くして突進をしてくる。


「上等だぁ! 真正面から相手してやるよ!」


 真っ向からぶつかったら死ぬかもしれない。横に避けてちまちまと攻撃を与えて倒せば楽なはずだ。


 なのにオレは体の奥底から燃え滾る熱に影響されてオレから走り出す。


 神経を集中させてオレがやり遂げるであろう未来を想像しつつ化け物に接近する。


「ボアアアァァァァァァアアアァァァ!」


 タンバティの巨体がオレに迫る。


 死ぬ。本能が警告してくるがそんなの無視してタンバティの巨体をギリギリの所で避ける。


「オラァ!」


 オレは透かさずタンバティの足に向けて全力で拳を繰り出す。


 ドゴォンと音を立てて命中したオレの拳はタンバティのバランスを崩すことに成功する。


 その間にオレはタンバティのお尻から飛び乗り顔を目指す。


「ボアアアァァァァァァアアアァァァ!」


 自分の背中に異物が乗ってきたのを感じ取ったのだろう、タンバティは体を前後左右に激しく動かしてオレを背中方落とそうとしてくる。


「チッ」


 オレもタンバティののようにバランスを崩してしまい背中の上から落ちてしまう。


 直ぐに綺麗に着地をしてからタンバティの首が目の前に迫ってきていたので慌てずにしっかりと見極めてから避ける。


「ボアアアァァァァァァアアアァァァ!」


 不味いな。


 さっき背中に乗った時点で止めを刺そうと思ったのだが、思った以上に体の上はバランス感覚がとりずらい。


 加えて、タンバティが暴れることにより近くにある木々が倒れてきてオレに当たりそうになった。自分に攻撃が当たるにもかかわらずだ。こうなったら厄介だ。


 この数日間で色々な魔物と戦ってきたが一番恐ろしいのはしつこいまでの生への執着だ。それはオレにもないとは言えないけどそれを超えてタンバティは生に執着がある。自分の身を使ってもだ。


 オレはここでファナリアの様子を見る。


 彼女も最初は善戦していたのだが、今は苦戦していて険しそうな表情になっている。


 足の一本を切って動きを鈍くさせているにもかかわらずもう一匹のタンバティは最後のあがきとでもいうかのようにファナリアの剣を正面から受け止めてから首を振るっている。そうなると、ファナリアもどうにもならないのか防戦一方になっていた。まさに、捨て身の一撃だな。


「無理なら直接やるしかないか」


 オレは腰を低く落とし右の腕を少し引っ込める。


「こいよ……一撃で決めてやる」


 オレは身体強化フィジカルアップを右腕に集中させる。


「ボアアアァァァァァァアアアァァァ!」


 タンバティがオレの声が聴こえたような反応をして攻撃を仕掛けてくる。もちろん、オレの予想通り首での攻撃だ。だがーー。


「それがお前の弱点だ!」


 タンバリンの顔がオレの目の前に迫る。そのままオレは攻撃を受けて遠くに吹き飛ばさる未来にタンバティが余裕のような表情を垣間見せたときにそれは起こった。


 体がふわりと浮いて次の瞬間には衝撃を伴ってタンバリンの方が吹き飛ばされていた。


「ふぅぅぅ……」


 息を吐いて体に入っていた力を全て抜く。完璧だ。


 吹き飛ばされたタンバリンの方はろくに受け身も出来ずに吹き飛ばされて幾つかの木々をなぎ倒して転がっていく。


 そして、オレは瞬時にタンバティに近づいて様子を見る。


「ボ、ボアアアァァァァァ……」


 タンバティはもう動くことが不可能なのか今にも死にそうな声を上げている。


「終わりだ」


 オレはそれだけ言うと身体強化フィジカルアップをした足でタンバティの顔を踏み潰した。後に残るのはあちこちに飛び散った緑色の血液と無駄にでかい死体だけだ。


「強かったな……」


 ふと、オレの口から無意識に言葉が漏れた。


 確かに強かった。


 攻撃は当たるのだが防御と一撃の攻撃量が凄すぎて全然倒すことが出来なかった。


 これが上級の魔物の魔物の実力か……改めてこの世界の厳しさを思い知らされたかもしれない。


 オレが倒そうと思っているドライガーはこの死んでいる魔物よりも一個上の階級、超級の階級だ。


 基本的に初級、中級、上級までは比較的弱い部類に入るらしい。人が連携して集団で襲っても一人で戦ってもこの三つの階級はギリギリのところで倒せると言われているらしい。


 だが、超級から上に入ると一人で倒すのは不可能と言われているくらい強い。それをオレはドライガーとの一度の戦闘でそうなんだと心に刻まれている。


 確かにあいつを一人で倒すのは不可能に近い。


 階級のことについては一通りファナリアから聞いたがその通りなんだろう。だから、オレはあいつと協力することになっているんだから。まあ、一番の理由はファナリアもドライガーを倒す権利がある……そんな感じがしたからだが。


 ファナリアか……と今、思い出し彼女の方に視線を向ける。


 そこではファナリアがもう一匹のタンバティを追い詰めていた。


「はあああぁぁぁぁ!」


 ファナリアから繰り出される研ぎ澄まされた一撃は本来硬いはずであろうタンバリンの皮膚に傷を負わせる。


「ボアアアァァァァァァアアアァァァ!」


 対して、自慢の皮膚に傷を負わされてたのが気に入らなかったのだろうかタンバリンは一度咆哮を上げるとその巨体をファナリアに向けて進める。


「……ファナリアが願う、火の精霊よ、火の魂をここに生み出したまえ『火球ファイアーボール!』」


 ファナリアの手から火の玉が出現してタンバティに向けて放たれる。だがーー。


 タンバティは小さな火の玉など気にした様子もなくそのまま突撃していく。しかし、それが悪手だったのだろう、次の瞬間爆発した火の玉によって視界を塞がれてしまう。


 その間にファナリアは斜め右の方向に駆け出していた。


 一体何をするんだろうか。オレはそんな思考と共に戦闘を眺める。


 タンバティは煙を吹き飛ばして先ほどまでファナリアがいたであろう場所に突っ込んでいく。だが、そこにあるのは一本の木だけだ。


 既にファナリアはタンバティの右隣にいて剣を振っていた。丁度首の辺りに剣が深く差し込まれる。


「はあああぁぁぁぁ!」


 掛け声とともにファナリアが剣を振り終える。そして、数秒後には地響きを立ててタンバティが崩れ落ちる。


 完璧に仕留めた。そう確信してオレはファナリアに近づく。


「意外とやるな」

「む……以外って何よ。あんただって倒せたんだから私に倒せないわけないでしょ」


 ファナリアはさも当たり前のように言うが身体強化フィジカルアップをしていないオレだったら勝てない相手だろう。


 最後の方しか見ていなかったがファナリアはこの戦いで身体強化フィジカルアップを使った様子はなかった。オレは使っていたのに。


 これではまだドライガーを倒すには力が足りない。そう思わされた。


「それよりも早くここを離れましょ……直ぐに逃げないと不味いことになるわ」


 ファナリアはまたしても戦う前と同じでどこかソワソワしている感じだ。何かあるのだろうか? そう考えた矢先ファナリアが早く離れた方がいいという言葉の意味を本当に理解することになる。


 ドドドドドドドと遠くから地面を踏みしめて全力で走っているような音が響いてくる。近くに魔物でもいるのだろう。


 一応警戒しておこうと神経をとがらせる。そして、死体を回収してから移動しようとしたところで違和感を感じてその方角に顔を向ける。それは今もドドドドドドと足音が聞こえる方向だった。


 じっくりと見てみると遠くの方で土煙があがっていてその中を巨大な何かが走ってこっちに向かって来ていた。


「っ! おい、急いで離れるぞ!」


 オレはファナリアに一言かけた後にダッシュしてその場を後にする。


 だが、足音は離れることなくこっちまで迫ってきていた。


「くそっ! どうしてこっちに来るんだよ!」


 いくら走っても何かの集団はオレ達を追ってきている。


 何か原因があるはずだ。


 オレは辺りを見回し目印になるようなものを探す。だが、オレの視界には目印になりそうなものは何もない。


「おい、これはどういうことだ!」


 オレは横を走っているファナリアに何か知っていることはないか尋ねる。


「あんたが持っているそれよっ! それをすぐに捨てて!」


 それとはオレが今、持っているタンバリンの死体だ。引きずりながら走っていたのだが、これが追いかけられている原因なのか。


「なら、これはいらんな」


 オレは追いかけている魔物らしき陰に向かってタンバリンの死体を投げる。


 放物線を描いて飛んで行った死体は木に当たりバウンドし、先頭を走っている何かに吹き飛ばされ、また、木に当たりバウンドして――ファナリアにのしかかってきた。


「ち、ちょっと! 何置いていっているのよ!」


 オレはタンバティの下敷きになったファナリアをおとりにして走る。


「ああ、もう! 待ちなさいよ!」


 ファナリアは急いでタンバティの死体から抜け出すとあっという間にオレを抜いていく。あいつ……身体強化フィジカルアップを使っているな。


 オレはここで後ろを振り返る。そして、オレが追いかけられているであろう魔物の正体が判明する。


 やはりというか予想通りというべきか……オレ達を追いかけてきている魔物は数十は入るであろうタンバティの群れだった。


「こんなにいるとか聞いてねぇよ!」


 オレはファナリアの横に並ぶと非難する視線を向けてどういうことか問いただす。


「言ったでしょ、タンバティを専門に狩る冒険者集団がいるって!」

「クソッ! 四、五人くらいじゃないのか!」


 集団って数十人ぐらいのことを表していたのかよ。もう少し詳しく聞いておけばよかった。


「何であいつら追いかけてきているんだよ!」

「私だって分からないわよ! 上級の魔物と戦うのだった初めてだし」

「魔法で何とか出来ないのか!?」

「無理よ! あれだけの大群に魔法を当てても一部分が壊滅するだけでどうにもならないの!」


 ちっ、どうすればいいんだよ。


「しゃあねぇか……」


 オレはこの辺りで一番高い木を見つけるとそこまで駆けだしてから身体強化フィジカルアップで跳躍して一気に一番上の所まで登っていく。


「え!? わ、私も!?」


 ついでにファナリアも登ってくるように言っておく。


 ファナリアも慌てながらもなんとか登りきり木に腰を落ち着けていると、タンバティの群れはオレたちがいる木を通り過ぎていく。


「そういうことか……」

「どういうことよ……?」


 ファナリアが気になっている様子なので説明しておこう。あのタンバティの群れは元々集団で生活する生き物らしい。今回遭遇したのは群れからはぐれたであろう二体のタンバティだった。タンバティはオレ達を視界に納めると狂ったように攻撃してきた。


 これが答えへのヒントだ。つまり、タンバティには目に付いた生き物を攻撃する説があるのかもしれないと。どうやら、それは正しかったようで、今もオレ達の代わりに別の魔物が追いかけまわされていた。


「そんな性質があったのね……学園で勉強したけれどそんなこと習ったこともなかったわ」


 どうやら、ファナリアはタンバティの習性を知らなかったようだ。


「帰るか」


 もう、しばらくは魔物の集団は見たくはないなと思う今日であった。



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