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夜空のささやき

「俺、卒業したら、県外の専門学校に行くことにしたんだ」


「え!?」


そうなの?

全然、知らなかった…。


「家に居づらいっていうのもあるし、なりたい職業もあるし」


「…そう、なんですか…。

寂しくなりますね」


明らかに落胆したかのような自分の態度に、慌てて、


「でも、夢が叶うように応援してますから!」


わざと明るく振る舞った。


そんなあたしを優しく見つめていた彼も、暗い表情になると、


「けど…。

美月ちゃんと離れるのは、俺も正直、嫌なんだよね…」


ぽつり。

そう、呟いた。


「………」


「だけど、いつか離れて行く俺が、そんなこと言うなんて…勝手だよな。

ごめん。美月ちゃん。忘れて」


「いえ。

うれしいです。

うれし過ぎて、涙出そうです」


言いながら、本当に涙目になる。

今最高に、幸せな気分。


「ちょっ…」


「あたしもずっと、彰先輩と一緒にいたいな…って、思ってましたから」


すべてはあの日。

彼に一目惚れをしたあの瞬間から、彼の隣をずっと夢見ていた。


夢が叶うことを、心の中で願っていた。


「卒業しても、県外に行っても、ずっと俺の側にいてくれる?」


確認するような、彼の問い掛けに、


「もちろんです。

あたし、彰先輩の『北極星』になりますよ!」


自信満々で答えた。


「北極星!?」


無限の宇宙(そら)の星の中で、たった一つだけ。


毎日同じ場所にいて、変わらずに。そこに在る星。


『北極星』のように、あたしも一途に彼を見つめていたい。


「じゃあ俺が、美月ちゃんの『北極星』になるよ」


うん。って頷くと、フワッと、彼の両腕があたしの身体を抱きしめた。


緊張で、身体が固まってしまう。

思わず目を閉じた。


「ずっと、こうしたかった。

ずっと、言いたかった…」


耳元で、彼がささやく。


「美月ちゃんのことが、好きなんだ。俺と、付き合って欲しい――」


夢にまで見た、彼からの告白。


本当に夢見たいで、信じられない。


だけど目を開けると、そこには同じように緊張した面持ちの、彼の顔があった。


「はい」


その真剣な眼差しが、ウソではないことを物語っている。


「あたしも、彰先輩のことが、大好きです!」


二人の気持ちが、今。

ここで、ひとつになった。


「マジでうれしいよ。

美月ちゃん」


彼の肩の向こう。

重なるふたつの影を見守っていた、幾つもの星の瞬き。


『おめでとう』


そう囁いたように聞こえたのは、お父さんの星からの、祝福の声だったのかもしれない。


7月7日。

それは、忘れられない。

『記念日』



――END――






最後まで読んでくれたみなさん、本当にありがとうございます。 七夕企画参加作品、どうにか完結です。 星空の情景。執筆した日は厚い雲に覆われて星一つ見えず、うまく描くことができませんでした。 もっとロマンチックに、もっと感動的に、を目指していたのですが。 設定に関しても無理矢理な印象を受けるかもしれませんが、既に&ノベル組にて連載中のキャラクター達なので、設定変更できなかった旨をご了承下さい。 それでは本当にありがとうございました。m(__)m

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