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エターナル リング  作者: 夏葉 篤維
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第1試合、ハナとオズワールの試合の結果はオズワールの勝ちだった。ハナの土魔法を主体とした攻撃に対し、オズワールは水魔法で応戦していた。ハナは土魔法が一番得意なのに対し、オズワールは得意な魔法は炎、次に水。両者の力が同じだったら得意な魔法を使っているハナが勝つが、土と水の相性を差し引いてもオズワールの力はすごかった。ハナは口では、負けちゃった、と苦笑いしていたが、内心はすごく悔しがっているだろう。ハナは内気だけど負けず嫌いな子だからな。


第2試合はラミとジンの試合、ラミの圧勝だった。ジンは魔法を使えるようになって日が浅く、幼い頃から鍛えてきたラミには及ばなかった。ラミは容赦ないやつだし、ボコボコにされたジンが少しかわいそうだ。俺は人が負けた後あいつのところへ行ってからかってやったら、ジンは、お前なんて俺より弱いだろ、と軽口を返してきた。長らく忘れていた人との関わりをあいつは教えてくれる。俺があいつを気に入っているのは、そういう点を含めてなのかもしれない。


そして俺とルストの試合がやってきた。


「ふふ、貴様のような下賤な輩がこの俺と手合わせできるのだ、感謝しろよ。」


ルストは王族で他の貴族より人一倍身分制度に対する意識が高い。そのため、おれやハナをバカにしている。おれはムッときて言い返す。


「じゃあ、俺に魔法ってもんを教えてくれよ、王子様。」

「き、貴様…。いいだろう、泣き叫ぶまで教えてやる。」


ルストは王族といっても第7夫人の子で王座が回ってくることはない。だから、この魔法学園に入れられている。そして、そのことをルスト自身は不快に思っている。と、全部ラミが教えてくれた。




ミリア先生の合図とともに試合が始まる。クロスにとって魔法での戦いはこれが初めてとなる。新しいことをする、クロスはそれが大好きだった。


「炎の(デスファイヤー)


開始の合図とともに轟く轟音。叫ぶルストの声。ルストの手から吹き出るのは巨大な火の渦だった。


「すげぇ、火と風の合体魔法だ。」


遠くでジンの声がする。ルストの手から火が出た瞬間、思いっきり左へ飛んだおかげで、火の渦は服の先をこすり、間一髪避けることができた。


「今度はこっちの番だ。」


そう叫び、魔法を使う。さっき練習した水魔法。周囲に水玉を作る。それを操り、思いっきり飛ばす。


水の弾は勢いよく飛んでいきルストまであと10センチというところで消えた。いや、消えたのではなく、蒸発した。よくみると、ルストの体の周りが揺らいで見える。


「くそっ、火を纏っている。」

「この程度か。お前の一番得意な水魔法ですら、相性のいい俺の火魔法を打ち破ることすらできない。興ざめだな。」


確かに現状俺があの火の鎧を超えた水魔法を使うことはできない。もうダメか、そう思った時ある一つのことを思い出した。


あれは3日前のことだった。ハナとラミと一緒に中央街にいった。中央街はこの魔法学園の中心部にある大きな商店街で、なんでもある、そういっても過言のないようなところだ。その時ラミはこういった。


「私がね、去年専攻してたのは魔法進化学っていうのだけどね、先生の話によると魔法は進化するの。例えば、その一番簡単なのは合成魔法。これは二つの魔法を合わせ練り一つの魔法に変えたものなの。そして次は、性能変化なの。これはね、例えば水魔法なら…。」



「そうか。そうだったな。水魔法なら状態変化だったな。」

「何をぶつぶついっている。早く負けを認めたらどうだ。」


イライラしているルストに俺は言った。


「勝負はまだ終わってないぜ。」

「もう手加減はしない。死んでもしらんぞ!炎の(デスファイヤー)。」


そう言って、ルストは先の火の渦を打ってきた。


水魔法と光魔法、まだ光魔法は攻撃として使うことはできない。得意な魔法でもない限り合成さすのは至難の技だ。なら俺がルストに勝つには一つしか手段はない。一番得意な魔法。水魔法を進化させる。


向かってくる大きな火の渦を前に神経を研ぎ澄ます。目を閉じ、想像する。水が氷になるイメージ。硬く、冷たく、炎を打ち砕くイメージ。


自陣の神経が研ぎ澄まされていくのがわかる。先ほどまでの喧騒は消え、静かだった。後3秒で炎の渦があたる。思考が加速していく。身分なんて関係ない。大事なのは為人(ひととなり)だ。そうルストに伝えたい。後2秒。だから、俺はここで負けられない。周囲に水を生成する。青くきらめくそれは、とてもとても美しかった。後1秒。


氷弾(アイスガン)


放たれた水は白く変わり、炎の渦を突き進んでいく。炎に晒されてなお氷の塊は、突き進んでいく。そして炎の鎧とぶつかる。


「いけーー!」

「くそっ、俺が…負けるかー!」


2人の叫びに呼応するかのように炎の勢いは増し、氷は大きくなる。


ぴちゃ


放たれた氷は溶け、残ったのは服についた水跡だけだった。


「そこまで!」


ミリア先生の声が響き渡る。


「勝者、クロス・グロス。誰かルストを医務室へ運んでやれ。」


その声でオズワールとラミがルストを抱え演習場を出て行く。


ハナとジンが駆け寄ってきた。2人とも矢継ぎ早に喋りかけてくる。


「すげーな、氷どうやって出したんだ。」

「すごい、クロスなら勝てると思ってたよ。」

「落ち着けって、それより、どうして最後ルストは倒れたんだ?」


最後俺の魔法は破られ、ルストは火の渦を打てば、俺は負けていた。だけど、俺たちの魔法の衝突の後、ルストは倒れた。


「そりゃーね…、あんだけ魔法使えばね…」

「そーだよ。魔力は命そのものだからね。」

「それより俺はクロスが平気なのが驚きだぜ。あんなに大技バンバン打ってなのにな。魔力量多すぎだろー。」


本当にな…。俺は知らないことが多すぎる。魔法を使えても、魔法について何も知らない。人類の英知に復讐するためには、俺は何も知らなすぎる。ても、だからこそ俺はここに来て、魔法を知ろうとした。まだ、始まったばかり、焦らなくていい、はやる気持ちを抑えそう言い聞かせて、ゆっくりと歩き出した。


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