表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『非正規社員 石田三成』~ショートストーリー集~  作者: 坂崎文明
第二章 安土上洛編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/99

魔王降臨

「幸村さん、どうか『真田丸』を退去してくれませんか?」


 石田三成は真剣なまなざしで頭を下げた。

 そこは鬼ノ城跡に築かれた難攻不落『真田丸』の一室にある茶室であった。


「石田殿、あなたが謝ることでもないし、俺の決心は変わりません」


 真田幸村は静かに言い切った。

 畳の上に茶器を滑らせて三成に抹茶を勧めた。


「真田、三成がこれほど頼んでもダメか?」


 幸村は無言で首を振り、島左近にも抹茶をふるまった。

 神沢優は三成たちにすべてを任せて輸送ヘリで待機している。


「幸村さん、僕たちがこの現代に転生してきたのは何か意味があると思います。ここで篭城すれば自衛隊の通常兵器では持ちこたえられますが、秘密結社<天鴉(アマガラス)>は必ず衛星兵器の<天照(アマテラス)>を使ってきます。それを防ぐ術はありません。無駄死になります」


 三成はその戦略眼で今後の展開を読み切っていた。

 もちろん、幸村もそれを予測しているはずである。


「三成、お前は関ヶ原の戦いを何故、起こした? 勝てぬかもしれなくても戦わなくてはいけないと思ったからではないか?」


 幸村は痛いところをついてくる。


「そうですね。私も人のことは言えなかったですね」


 三成はそう言って破顔した。

 静かに立ち上がると、島左近もそれに従った。

 

「ダメだったようね」


 輸送ヘリに戻った時の神沢優の言葉は不思議と優しかった。

 三成は晴れやかな表情でそれに答えた。

 三人は『真田丸』を退去した。



   

     †




「織田信長である。真田幸村、そなたの命貰い受けにきた」


 幸村が茶室で感傷に浸っている間に、物騒ぎな男が訪問してきた。

 黒いマントに裏地は真紅、洒落た皮のブーツで畳にすっと立っている。

 細面の顔にどじょうひげ、ちょん曲げ姿は相変わらずだ。


「―――お会いするのは初めてですね。信長様」


 幸村は再び茶を立てて信長にすすめた。


「近々、大戦(おおいくさ)がある。そなたの力がいる」


 信長は胡坐(あぐら)をかきながら言った。


「それはどのような戦ですか?」


「イエズス会の魔女ベアトリスが復活する」


 幸村の表情が変わった。


「―――参りましょう」


 魔女ベアトリス、大阪城の戦いもその者のために引き起こされた。

 真紅の鎧に身を包んだ幸村はすっくと立ち上がった。

 幸村は本当の死に場所を見つけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ