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問題山積!

 生徒会長に半ば言われるがまま発足が決まった部活。しかし、すぐに問題が発覚した。

 明くる日の放課後。鞄に教科書をしまっているところに、隣のクラスの生徒会長が突然私の席までずかずか入ってきた。


「おいババァ。忘れていたが、顧問はどうする」


 いきなり人のクラスに来て、開口一番『ババァ』とは……。

 周りのクラスメイト達が、さぁっと潮が引くように離れていく。無理もない。『ババァ』などと、まかり間違っても口に出すようには到底見えないのだから。

 実際には、ただ喋らせてもらえなかっただけのようだが。


「生徒会長よ。少しは人目を憚らないか。あなたは仮にも全生徒の代表なのだから、模範になる行動を取るべきだ」

「何だ、ババァまで生徒会役員達と同じことを言うのか。全くやりにくいな」

「……あなたが何故会長になったのか、不思議でならない」


 いくら成績が学年トップクラスと言っても、このような性格の人間を組織のリーダーに据えるとは、役員会の見識を疑う。


「ふん、他に誰も立候補しなかったんでな。無投票当選だ」


 やる気がないのか生徒会は!


「皆能力はおしなべて高いのだが、如何いかんせん目立つのが嫌いなのだ。その点、俺は見た目が良いから嫌でも目立つ。広告塔にもってこいなのさ。副会長曰く、にこにこしていれば良いそうだ」


 自分で自分の見た目が良いなどと言うところは好かないが、人が嫌がるポジションを自ら引き受けるとは、良いところもあるのだな。

 

「しかし、それならば尚更言動には気をつけるべきでは?」

「俺と役員達は持ちつ持たれつなんだ。だから、文句があるなら俺を会長にした役員会に言ってくれ。それと役員会のメンバーを決めた教師陣にもな」


 そうだった。我が校の生徒会の人選は先生方に一任されている。そうして選ばれた役員達の中で投票をして会長を決定するのだ。

 ……先生方も見る目がなかったな。


「そんなことはどうでも良い。顧問だ顧問。ババァ、当てはあるのか」

「昨日の今日であるわけないだろう」

「何だ使えないな。校長から信頼されてるというお前だから聞いたのに」


 本当に強引な男だ。そうまでして我々の仲間に入りたいのか。


「あ、適任がいるじゃないか」


 何かひらめいたように彼が言う。


「適任? 誰だ」

「司書がいるじゃないか」


 おいおい……この男は何を寝ぼけたことを言っているんだ。


「まさかとは思うが、幽霊司書と呼ばれていることを知らないわけではないな?」

「そのくらいは当然。だがいつまで幽霊扱いで済ませておく気だ。いい加減きちんと仕事をさせろ」

「そんなことを言ったって、学校にほとんど来ないのだから仕方あるまい」


 私でさえ、この一年ちょっとの間に一、二回しか見ていない。大体いつ現れるかも定かでないのに、どうやって顧問にするというのだ。それ以前に、そんな人間を顧問として申請して通ると思っているのだろうか。


「月に一度、職員会議に参加しているぞ」


 ……何!? 嘘だろう!


「まあ、会議の時間は生徒が帰宅した後だから、知らないのも無理はない。俺は生徒会長として、会議で報告しなければならないから残っているが」

「な、な、ならば何故、とっ、図書館へ来ないのだ!」


 学校に来ているなら、自分の持ち場へ来ないなんておかしいだろう!

 私はあまりの衝撃にパニックになってしまった。


「知るかそんなの。……金魚みたいになってるぞ」


 口をぱくぱくするが、言葉が出て来ない。頭がくらくらする。


「次の会議は……おっ、丁度良い。明日だ。会議の前にとっつかまえて、顧問を了承させるぞ」


 生徒手帳のカレンダーを見ながら、簡単に言ってのける。


「し、しか、しかしだな」

「良し、決まり。あ、それから部長はお前だからな」


 ……はぁ?


「な、何故私が……」

「何をとんちきなこと言ってる。あの図書館を管理してるのはお前じゃないか。それに俺は生徒会長だから、他の肩書きは付けられんのだ。なんちゃってロリは一年だし、空気に至っては論外だ。となれば、お前しかいないな。頼むぞ、ババァ」


 こうして押し切られる形で(と言うより有無を言わさず)私が部長ということに。

 ……どうしてこうなった。


「さて、図書館に行くか。ババァ、さっさと仕度しろ」

「何? あなたは生徒会室に行くんじゃないのか」

「馬鹿者。俺が行ったとてすぐに追い返されるわ」


 偉そうに言うことか?


「なんちゃってロリを愛でるのだ。急げ」

「なおのこと来ないでもらいたいな」


 昨日、子猫は怯えきって私の後ろに隠れて出てこようとしなかったからな。

 あれが毎日続くなど、面倒で仕方ない。


「ロリは何という名前だ?」

「何だ唐突に。本人に聞け」

「名前くらい減るもんじゃなし、教えろ」

「……少し事情があってな。私の口からは言えんのだ」


 ご存じの通り、子猫は珍妙な名前を付けられた。本人も嫌がっているので、私や鈴木は『きてぃ』ではなく『こねこ』と呼んでいる。

 そんな本人も嫌いな名前を、彼女が苦手な人間に勝手に教えられるはずもない。


「ふうん。ならば仕方ない。ロリをイジメて聞き出すとしよう」


 ……この場合、言うか言わないかどっちが正解だ!?

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