中学3年 秋
「帰ろう?」
あかりがひょこりと私の前に顔を出した。
そうだ。私が帰るはずだった子はこの子。
「うん。帰ろう」
あかりは目がクリクリしていてお人形みたい。髪の毛はサラサラで
顔も小さくて足もスラーっと長い
横に居る私がなんだかとても醜く感じる。自信をなくすほどだ。
靴を履いてるとあかりはちょっとまって。と
目の前にいた巨人に話しかけていた。
巨人とは 宮部なおきのこと
179cmで私とは30cmも差がある。バスケ部に所属していて
驚く程体つきもしっかりしていて同じ人間とは思えないので
巨人と呼んでいる。
「おい。かよ。またな。」
声が低く、高校生です。といわれても疑わないくらい大人っぽい。
「うん。」
あかりは私の腕を引っ張って
「ごめんね。いこっか。」とにこりと笑った。
あかりの履いていた靴に目が行く。
また新しい靴を履いていた。
先々週新しい靴を買ったばかりなはずなのに
なんかあかりの家は格別だな~と
しみじみ実感した。
あかりはあの巨人と3か月前から付き合っているらしい。
でも、そのことをあかりは私には話してこない。
だから私も聞かないでいる。あかりから話してくれるのを
待っているのだ。
あかりと巨人はお似合いだと思う
お互い中学生とは思えないし、何より美男美女だ。
どこの学校にもいるであろうカップルの理想像。
どっちから告白したんだろうな~とか
デートはどんな場所に行くんだろう。とか
いろんな妄想をして楽しんでいることは
巨人にもあかりにも内緒だ
でも、親友ってなんでも話すものだと思っていた私は
少しだけショックなのである。私には何も話してくれないのが。
そりゃクラスも違うし部活も違うから
あかりにはあかりの世界があるんだろうけど
あかりにとって私ってなんだろう。ただ一緒に帰る人なのかな。と考えてしまう
「ねえ。かよ。高校、どこ行くか決めた?」
寒そうに手に息を吹きかけながら質問をしてきた。
私の心配なんて全く気づいていないあかり。
その仕草もかわいくて ずるいなぁ。と思った。
「決めたよ。一応。あかりは?決めたの?」
う~ん。と首をかしげる。
「うん。一応。花園か白山高校。」
花園高校と白山高校は
県で3つある女子高の中の2つで、偏差値が高く私立ということもあり
俗に言う「お嬢様」が行く学校だ。という先入観がある。
周りも森で囲まれていて、なんというか
そこに通う人はみんな「ごきげんよう。」とか使うのかなって
たまに考えていたりする。
「すごいね。女子高じゃん。」
「うん。お父さんとお母さんが、どっちかに行きなさい。って…」
少し調子が悪そうだ。
「ホントは行きたくないの?」
え?とこっちを向く。
「いや~。別にどっちかでいいんだけど、公立でもいいんじゃないかな。って
でもお母さんが、公立より私立の方が設備が整ってるし、環境も私に合ってるからって。」
私もあかりは私立のほうがいい気がする。
なんとなくだけど人には合うもの合わないものがあって
あかりは私立の方が合う。
私、花園高校出身です。ってあかりが言ったら
デスヨネ~ってなる。
「そっか~いいとおもうけど。」
「うん。かよは?どこにするの?」
あかりは調子を戻した。
「私は菊川高校にしようかな。って。」
菊川高校は一言で言えば 中の下。
普通よりちょっと下。特に何の特徴もなく普通の高校
って感じの高校。私には普通の菊川高校があってると思う。
何から何まで普通の私にはお似合いの高校なのだ。
「そっか。菊川高校か。今年行く人多いね。」
「そうなんだ。倍率上がるのかな。ヤダな。」
勉強をなかなかすることができない私にとっては
倍率が上がることが何よりの恐怖である。
「菊川高校はやめたほうがいいとおもう。」