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赤い月  作者: 望月蓮
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嘘のいばら

こんにちは!

時間が空き、申し訳ありません!!

どうぞお楽しみ下さい(=゜ω゜)ノ

未来が奏を『好き』となり、また『嫌い』になった日から丁度一週間が過ぎたある日のこと。校内では、とうとう『赤い月』がその姿を現すという話題でもちきりになっていた。当然のことながら、未来達もその話題に支配されているところだった。

未来はあの一件以来、奏と話すのを無意識のうちに避けていたので久し振りに奏と話す機会が出来て、嬉しさが半分。そして、悲しさが半分といった状態である。

「五年に一度なのに、一日しか現れないなんて!」

奏から知らされた新事実に驚きを隠せない。『赤い月』は一週間位続くとばかり思っていた。一日だけなんて…つまらない。

「まあ、だからさ皆で見に行こーぜ」

「え、何を?」

「何とぼけてんだよ!『赤い月』だよ。島の一大イベントなんだから。行かなきゃ損だって。」

屈託なく笑う奏。当然、瑠衣にも同じように振る舞うわけで。自分の気持ちに気づいてしまった以上、もう前のように瑠衣を…奏を見ることは出来ない。奏の一つ一つの言葉に操られてるような自分が凄く嫌だ。でも、嫌いにはなれない。だって、好きだから。

そのまま奏の方を見つつ、ぼーっとしていると。

「ねぇ、未来。」

先程まで、私の真正面で洸といちゃいちゃしていた凛が、いつの間にか私の真横に来ていた。そして、そっと耳元に手をもってきて囁かれた。

「奏の事……好きなんでしょ?」

いきなり放たれた爆弾に驚いて、思わず飛び上がってしまった。真っ赤な顔の私を見て、凛がニヤけている。

「ばっ……そ、そんなんじゃ!!凛の馬鹿っ!!」

混乱しすぎて自分でも考えられないほど大きな声を発していたらしく、教室中の視線が集まっている。何が起こったか分かっていない洸と奏は首を傾げていた。

「やっぱり……だ・い・す・き…なんだぁ〜」

更に追い討ちをかけるように、凛が囁いてくる。そして、凛がニヤついたまま逃走したので、その後を追いかけ回した。


その光景を見て、暫くしてから洸はポンと手を打った。なんだ、そういう事か。わちゃわちゃと騒ぎ立てている凛が何を未来に話して、また、今何を喋っているかを分かってる俺はやっぱり…凛が好きなんだな。それにしても、とちらりと横を見る。奏は追いかけっこをしている未来と凛を見て首を傾げるばかりだ。当の本人がこれじゃあな…。このまま見てるのもそれはそれで面白いけど、流石に未来が可哀想だしな。

「もういいんじゃん、凛。からかったら、未来が可哀想だろ?それに、未来も。そこら辺にしといたら?当の本人は、何も気づいてないみたいだから。」

洸は奏に聞こえるか聞こえないか位の声で、凛と未来に伝える。

「別にいいじゃん!洸のケチ。」

「誰がケチだ誰が!」

「未来の反応見てると、ついついやりたくなるの!」

「今の俺の発言はスルーするんだな…ったく。未来が泣きそうになってるから。苛める相手は俺で十分だろ?」

「いつ、誰が、誰を、苛めたって?ん?もう一回言ってみ?」

「あははー、冗談だよ冗談(棒)」


奏は、暫くその茶番劇を見つめていたが。

「チャイム鳴るから席につけ」

「おお、そうだそうだ。凛、拳を降ろせ!なっ?」

凛は不服そうだったが、渋々拳を下ろすと、静かに自分の席へと戻っていった。後が、怖いな。うん。

未来にも同様に声を掛けると、何故か一瞬だけ戸惑ってから頷き、自分の席についていった。先程の騒動は、俺に関係のある事なのだろうか。洸が俺にだけ話が聞こえないようにしていたのは、多分そのせいだろう。それにしても、俺……何かしたかな?考えても分からない事を考えていても意味がないな。俺は、すぐに考える事を放棄した。そして、授業開始のチャイムが鳴った。


***

放課後。辺りが静寂に包まれている中、私は一枚のドアの前に立っていた。プレートには『生徒会室』と達筆な文字で書かれている。何故、私が此処にいるかという経緯を話すと……。それは、昼休みの事。購買部からパンを買って戻ってくる途中、廊下でキョロキョロと辺りを見回す奏を見つけたのが全ての始まりだ。話しかけるのを躊躇ったが、困っているようだったし気合いを入れて近づく。すると、私に気付いたのか奏が寄ってきて。

「あ、あのさ!!……今日の放課後、空いてる?」

「え?あ…うん、空いてるけど。」

ここで嘘をついても何もならないので、素直に答えた。すると、彼の顔がたちまち明るくなる。

「あるんだったら、放課後に生徒会室まで来てくれない?」

「別に……いいけど。」

急にどうしたというのだろう。理由を聞こうか……。

「それにしても、何するの?」

「えっと……それは、今は内緒で。」

そして、ありがとと一言言って去っていった。

……どうしよう。何の用だろう…もしかして、告白とか。いやいやいや、無い無い。絶対に無い!そんなのは漫画の世界だけだもん。大体、奏は瑠衣が好きなんだろうから私なんかに告白なんて。……そもそも、場所が場所でしょ。生徒会室で告白って。生徒会の人間でも無い奏がそんな場所で告白なんて、するはずない。そう、するわけないんだ!!でも…本当に奏は瑠衣が好きなのかな…。事実を知るのが怖くて、凛や洸に聞かず終いだ。彼女達なら、きっと本当の事を知ってるんだろうけど。そっと、窓の外に視線を移す。騒がしい校内とは対照的な、もの寂しい外の景色がひっそりと佇んでいるのが見えた。


そして今に至るというわけだ。

「はぁ…よしっ」

深呼吸をして、ドアを二回叩く。

「どうぞ」

すると、中から麗の声が聞こえた。…入っていいん、だよね?

「失礼……しまーす」

恐る恐るドアを開け、中に入る。すると、未来の目の前に異様な光景が広がった。床は全て大理石で作られており、まるでホテルにいるような気さえする内装。様々な装飾が施された机と椅子が四つあった。一番奥に麗が座っておりその横に瑠衣が立ってきて、残る三つの椅子には本当であれば生徒会役員が座るだろう所に、凛と洸と奏が座っていた。

「あ、あの…奏に呼ばれてきたんだけど。」

何か言わないといけない気がして、口を開くと。

「なぁんだ。そうだったの?もう、びっくりした。」

途端に緊張の糸が切れたように、皆が話し出した。困惑する私を見てなのか、奏がこちらへ近づいてきた。

「来てくれたんだな、ありがと。」

「う、うん。あのさ、何してるの?」

麗はパソコンに向かってキーボードをカチカチと叩いてるし、洸達は紙の束をまとめていた。

「ごめん、ちゃんと説明出来てなくて。麗から生徒会がやる行事で使う資料のまとめを手伝ってくれって言われてさ。最初は、生徒会のメンバーでやれって言ったんだけど。」

「生徒会室が崩壊しかけたのだ。」

麗が苦笑する。まあ、大体想像はつくけれど。

「だから、人手が欲しいって言われて。でも、俺中々友達に声かけらんなくて。で、一番仲が良い未来達に協力してもらおうと思ってさ。あと、麗が『なるべく秘密裏に進めてくれ』って言うもんだから、詳しく話せなかったんだ。本当にごめんな。」

やっぱり、色々と期待した私が馬鹿だった。そうだよね……ですよね……。そんなわけ、ないもんね。

「ふぅ…何を手伝えば良いの?」

「まずは、資料の整理をしてくれぬか?それから…」

私は一通りの流れを聞くと、大きなため息を吐いて、真ん中にあるソファーに座る。皆と話をしながら手を動かす。

ちらっと奏の方を見ると、瑠衣と笑い合っているのが見えた。胸がどうしようもなくぎゅっとなって、私はすぐに目を伏せてしまった。…駄目だよね、こんな事願ったりしたら。でもやっぱり…奏の隣にいられたらなんて思ってしまう。我儘だって分かってる。だけど、この気持ちを抑えるのは辛いよ。ただ見ている事しか出来ないなんて、運命は残酷だね…なんて心中で呟いたが返事はない。……昔は返事をくれたのに。

「未来?大丈夫?」

いつの間にか手が止まっていた私を見て、凛が心配そうに見つめてきた。

「大丈夫だよ!」

精一杯の笑顔でそう告げる。暗く沈む気持ちを悟られないように精一杯笑って…今だけは。私が傷付くだけで奏が幸せになるんならそれでいいって、嘘といういばらの中に自分を置いて。皆の笑い声が、この空間がとても遠く感じてしまう……私は嘘つきだ。誰よりもずっと。


***

「よっしゃ、帰るか!」

全ての資料整理が終わり、日も暮れ始めた午後六時。奏のその言葉に賛同するように皆が立ち上がる。

「……未来?」

下を向いた私の肩を叩く奏。

「大丈夫、疲れただけだから。」

ありきたりな、それもいつも放っている言葉しか言えない自分に腹が立ったが、これが精一杯の言葉だ。そして、誰よりも先に生徒会室を出て走っていった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

また、続きをお楽しみにー♪( ´▽`)

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