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神保町を愛した

作者: 水形玲
掲載日:2015/10/10

「私」はこの世の幸せから放り出されているのです。

 私は神保町を歩いていた。

 高校時代、この街の三省堂の二階の文庫のコーナーで、文学少女と知り合うようなこともなかった。

 消えた青春。

 私はもう四十一歳。もういいおじさんなので、ワンカップの酒を買い、スルメを買い、発泡酒を買い、道端の段差の上でそれらを飲み、食べた。

 涙も涸れた。あの恐ろしい精神病院でなされた虐待の記憶がいつまでも消えない。

 神保町を行く人々はみな忙しく、私の方になど目を向けないようだ。

 明治大学にストレート合格した。でもそれが何だというんだ。

 神経症になって、私は休学、中退した。

 そして後年統合失調症になった。

 この不条理は一体何なのか。

 私が何をしたというのか。

 ここ十七年、もう、朝起きて静かな空気の中で幸せに目覚めることがない。

 うるさい声が頭の中にいつも響いている。

 高校は共学高に行きたかった。両親と担任は結託して、私を理系の、偏差値の低い男子高に入れた。(私は文系だった)

 高校には恋はなかった。屋上で、灰色の街並みを眺め、恋を欲する胸の痛みに耐えていた。

 そして私は廃人になった。人生に絶望した。

 それでも人生にはまだ希望があるだろうか?

 希望は山のかなた? どこに?

お読みくださりありがとうございました。

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