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河菱組

作者: 尚文産商堂

日本最大のヤクザ組織となった河菱組の現組長は、実は私の大親友だ。

表立って出会うことは、ほとんどできないが、年に数回、例外として会うことができる。

私は、手野グループの持株会社である手野産業株式会社社長にして、現在の手野家副当主の地位にいる。


彼と出会ったのは小学校の頃。

いろいろな人と出会うことが、見識を深めるという当時の手野家当主によって、公立小学校に入学した時だ。

彼はすでに日本でトップファイブに入るような巨大ヤクザ組織である河菱組の組長の実子であった。

本来なら出会うはずもないのだが、そこは子供同士の無邪気さだ。

あっという間に仲良くなった。

互いの家に遊びに行ったこともある。

それぞれの家では打算的な動きもあったようだが、最終的にはなにも言われないまま、私は手野家副当主となり、彼は25歳の時に、直系組長の全員一致によって河菱組第4代組長となった。


「どうも、手野です」

彼の家は相変わらず巨大で、私は警官に睨まれながらも普通にインターホンを押した。

彼らが暴走しないように、私が見張りをしているとも取れるだろう。

「上がってください」

すぐに係りの組員が玄関を開ける。

勝手口らしいのだが、どう見ても立派な玄関だ。

そして、ただ一人で家の中を歩いていき、彼がいる主室へとついた。

「お邪魔するよ」

「おう、鍵は開いてるぞ」

声を聞いただけで安心するのか、すぐに部屋へと入れてくれる。

小学校、中学校、そして高校と一緒だったが、その時とほぼ変わらない格好をしている。

違った点はメガネをかけるようになったことか。

今はパソコンに何かを打ち込んでいるのだけが私から見える。

「どうだ」

机の引き出しからブランデーを取り出す。

「一杯だけな」

さほど酒を飲まないが、この時だけは別だ。

拳ほどの大きさがある、ガラスでできたコップがことんと2つ並び、そこに琥珀が注がれる。

「ほら」

コップを渡され乾杯だ。

「互いの健康に」

彼が言う。

「互いの家業に」

私が言う。

カチンと音がわずかに響いた。


1時間ほど、結局3杯ほど飲んでから、私は辞去した。

「今度はいつ会えるかね」

「いつも通りさ」

「そうか。なら連絡を待ってるよ」

帽子をかぶり、私はそれから握手を交わして、彼の家から出た。

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