おうち幼稚園設立 入園式
もしも幼稚園が在宅だったら
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203×年、通信教育の幼稚園、おうち園が設立されました。初年度の受け入れは、3歳児、年少さん24名のみ。
通園の必要はなく、自宅パソコンから幼稚園の教育が受けられるという、日本初の試み。一年間やってみて、うまく行ったら文科省の認可が下りて、晴れて「おうち幼稚園」となります。まだ無認可の幼稚園なので、「おうち園」です。
今日はおうち園の入園式です。24組の親子が自宅パソコンの前で、入園式の開始を待っています。親はスーツ着用が多いようですが、リアル幼稚園と比べると、私服率が高いです。子どもの制服はスモックのみ。スモックの下や、スカートやズボンは私服です。
午前9時、おうち園の開門です。パソコンの画面には、レンガ造りのおうち園の門と、入園式と書かれた看板が写っています。門の前に、エプロンを着た先生が何人か立っています。先生は、笑顔で手を振っています。
マウスの矢印を門に持っていき、クリックすると名前と暗証番号を入力するフォームが出てきます。そこで、子どもの名前と、入園試験の際各自に告げられた暗証番号を入力します。入力するとフォームが閉じ、一人の先生が画面に映ります。先生が言います。
「〇〇ちゃん、入園おめでとう。○○ちゃんはあか組だよ」
組名と名前の入った名札が画面に現れます。その名札を、親がダウンロードしてプリントします。あらかじめ送られていた名札プレートに、名札を差し込み、子どもの制服に付けます。
入園式が始まりました。画面は70歳くらいの園長先生が段に上って何か話しています。園長先生の話が退屈なのは、昔も今もあまり変わらないのでしょうか。
続いて、先生紹介、園児は8名ずつの3クラスに分けられます。
あか組の赤先生。40代くらいのベテランの女性の先生。
しろ組の白先生。若い女性の先生。
あお組の青先生。若い男性の先生。
この他に、補助の先生が何人かいるそうです。
赤先生から、明日からの登園についての説明がありました。明日の持ち物の説明と、慣れるまでは親子登園でお願いしますと言っていました。
さて、ここはおうち園から800キロ以上離れている北海道です。
おうち園のあか組、Yちゃんのお母さんは臨月です。もうすぐ赤ちゃんが生まれるので、お母さんの実家の北海道に、YちゃんとYちゃんのお母さんは来ています。入園までに生まれて自宅に戻る予定が、なかなか生まれずにいるようです。
普通の幼稚園ならば、赤ちゃんが生まれ、自宅に戻るまで休園となるところですが、ここはおうち園。インターネットがつながれば、世界中のどこからでも登園できます。
でも少し困った事があります。Yちゃんのお母さんは、明日から入院する事になりました。残されたおばあちゃんはパソコンに詳しくなくて、トラブルがあったらどうしようと困っているようです。
トラブルがあったら、おうち園のサポートセンターに電話すればよいのですが、サポートセンターの電話がつながりにくいのは、昔も今も変わらないようです。
明日からおうち園始まります。どうなる事でしょうか。