表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/37

現在:12

 「ふふふふふ」

 「睦月、街中で不気味に笑うのやめろよ」

 フェイタス神聖国――『勇者』と『聖女』を召喚する事が出来るその場所に俺と睦月はようやく足を踏み入れた。

 とはいっても此処はまだフェイタス神聖国の端だ。

 まだサンティア帝国を出発して此処に来るまで二フィンも経過していない。だというのに睦月は三ケタにも上りそうなほどに人を消していた。

 まぁこの世界は『地球』のようなインターネットはない。

 一瞬で世界に情報を配信するだなんてこの世界の連中が聞いたら倒れそうな技術はない。

 そもそも一瞬で人を消せるほどの魔力を睦月が持っていると知るものもそんなに居ない。

 睦月と俺は『蘭』の一員として他国でも活動した事はある。だけれども睦月の力を実際に知るものは居ないといえる。

 なんたってそれを見た人間は高確率で死に扮している。

 死人に口なしって奴である。

 隣を歩く睦月は見るからにご機嫌だった。

 俺が許可を出してからあれだけ好き勝手人殺し(ストレス発散)を行ったのも一つの理由だろう。睦月はすっきりした表情をしている。

 それともう一つの重大な理由は、もうすぐ『勇者』―――向井光一の所にようやく、二年ぶりに行けるからだろう。

 睦月にとって向井光一に会える。

 たったそれだけで天にも昇るような気持ちになっているだろうから。

 本当睦月はわかりやすくて、真っすぐで、その思いは『純粋』と称するのがふさわしいかもしれない。

 どれだけ睦月が狂っていても、どれだけ狂気に侵されていても、それでも俺は睦月を純粋だと思うのだ。

 人が人に感じる感情なんて人それぞれ違う。

 周りがなんていっても俺は睦月の事を馬鹿みたいに純粋で、真っすぐだと思う。寧ろだからこそこんなに狂っているのだと思う。

 「いいじゃんか! 折角愛しい愛しい光一に会えるんだよー。それなのに興奮せずにいられるわけないでしょ。うふふふ、こーいち、私のこーいち、私が迎えに行くからね」

 俺に向かって興奮したように笑ったかと思えば、独り言のように睦月はそう口にした。

 「良かったな、睦月」

 俺は睦月に頷きながらも、口元を上げる。



 ああ、楽しみだ。

 今の睦月をあんなに正義感が強い向井光一が見たらどう思うだろうか。

 狂った睦月を一切見もしなかった向井光一の前で狂気を見せつけたら、どんな行動をとるだろうか。

 予想は出来る。

 それでも実際に見るのと予想をしているのとはまるで違うものだ。俺は楽しみで、わくわくして仕方がないんだ。

 向井光一が例えば俺が予想している通りの反応を示した時にもっと壊れるであろう睦月を見る事が。

 向井光一が例えば俺が予想もしていなかった行動をした時、俺はそれにきっと笑うだろう。

 どっちでもいいけれど、とりあえず睦月がもっと壊れた姿を見せるような対応を向井光一がしてくれればいい。



 俺はもっと狂って、壊れた睦月を見てみたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ