祭りだワッショイ
驚いているのは何も親父が魔法を使えた。という事だけでない。
無詠唱だった。ということだ。
魔法に詳しいわけではない。
元の世界で俺が中学生だった頃に、RPGゲームというのがあった。
その頃の俺は、むしろシミュレーションゲームといって正六角形に地図が仕切られた盤上に部隊を動かし、サイコロを振って戦闘結果を判定する、当時ウォーゲームといわれるちょっとマイナーなゲーム愛好者だったが、RPGもシミュレーションゲームの一部といっていいくくりにあって知ってはいた。
好みでなかったのでやらなかったが、「D&D」とか「トラベラー」、「AD&D」といった今ではTRPGというジャンルのものが日本で発売されはじめた。
TRPGのTとは、テーブルという意味であることも転生前の1月前に知ったぐらいだ。
その後、わりとすぐにPCゲームやゲーム専用機で、複雑な戦闘結果判定と、RPGに必要なゲームマスターいらずの RPG物が大流行した。
「ドラクエ」や「ファイナルファンタジー」ってやつだ。
まあ、「ドラクエ」は大学途中の ⅣかⅤぐらいまではしたかな?
シリーズのどこまでやったかを忘れる程度。
それと、転生前に2ヶ月ほど、ネット上の「ラノベ」サイトをいい年して読み漁った。という経験による知識だけだ。
魔法とは、世界にある マナ をどうにかして、MPつかって「ちゅど~ん」
端的にそうなんじゃねーかと・・・
科学の代わりに魔法がある。
という認識で、あっているのか間違っているのかすらわからないし、勝手に魔法無詠唱というのが主人公チート俺Tueee-の源だと思っていたのです。
親父がスゲェーのか、あまり珍しいことでもないのか?
かあちゃん は【治癒】呪文を詠唱していたのに!
わからないことを考えても仕方ないと思い。
収穫されて袋につめられ、山積みにされている小麦粉に近づく。
親父はかあちゃん、ばあちゃんと、今年の収穫量やお金にまつわるような話をしている。
大人の目をよそに、
袋の形態、大きさ、山積みの縦横の長さ等を歩きながら調べる。
山の高さが知りたいので、離れてテーブルのいつもの席のイスによじ登る。
ばあちゃんが気付いて、落ちても大丈夫なように手をはなして落下に備えてくれる。本当に1歳半ではないので心配無用だが、「のぼれてやったー!」という顔を ばあちゃんに見せて安心させる。
高さは110cmほどで、平積みにすれば、8段ぐらいか・・・
たてに14・・・横に10・・・だいたい四角錐台の山の形から・・・
山の上側のたてが10・・・横が・・・
だいたい・・・
750袋~800袋で、すきまがあるからその1割弱をひいて・・・
680~730袋?・・・
1モディウスが 6キロ ちょっとだから・・・
いや!逆にあの袋が 大きさからいって 1モディウスだ。
だっだ だから、718 モディウスなのか・・・
こんな感じの計算?それとも計量を瞬時にできるのか。
いま、ヒッシノパッチ で頑張って、5分くらいかかったぞ。
鉛筆も紙もなしで暗算つかれたぞ。
魔法ってほんとにすごいもんですね~
「【計量測定】ってか」
大人たちに聞こえぬよう、小さく冗談でつぶやいた。
すると、頭に突然 イメージというか数字?
うっすらと青白いあの光と、目で見たわけでない、脳の中でだ。
《 4523kg 》
聞こえたわけでなく。
つまり、視覚・聴覚を通じてではなく、もっと直接的にわかった。
なんじゃぁ?!
慌ててまわりを見渡す。
大人たちの様子はなんら変わらない。
ぬわぁぁぁ もしかしてぇぇぇ~~
ちょっともう一回やらねば、と思い。
大人たちの様子を見て、ばれないタイミングを図って、
「【計量測定】」
とつぶやいてみた。
今度は何が起こったかがもう少しわかった。
頭の中に青白い光がひろがり、
脳が直接《 4523kg 》と対象物を計測し、その量や重さを認識する感覚をつかんだ。
4523kg うーん 718 で割ろうとしても意識が集中できない。
と、いうよりダルい。
これ MP切れ・・・ってやつかな・・・
眠いわけでないが、テーブルにつっぷした。
ぼーっと30分くらいしてると、かあちゃんが俺に気付き、近寄ってきて、
「リベリオ ねむいの?」
と言って、抱きかかえベビーベットに連れて行ってくれた。
1時間後離乳食を食べさせられたが、普段よりマズイ。
ベットで、起きたまま ぼーっとそれから2時間すごした。
少し楽になったが、全快ではない。
明日は祭りだ。 もうこのまま寝るとしよう。
朝起きたら、スッキリしていた。
今日は祭りだ。
MP切れはマズイので、【計量測定】を試すのはやめよう。
昨日の宿題を庭でやることにした。
家の外に出て、木の枝で地面に、
4523kg ÷ 718 筆算する。3桁の暗算は無理だ。
答えは、6.29・・・ 1モディウスは約6.3Kgと判明した。
怒られないうちに、家の中に戻る。
昼から大人たちは酒を飲んでる。
祭りの用意も楽しみながら、ってわけだ。
MP切れのと思われる現象が気分を盛り下げていたが、昼ぐらいから気持ちも復活してきた。
はじめて魔法も成功できたのだ。
これは俺にとっても大きな収穫だ。心の中に魔法というともっと「火」や「水」のすごいやつをできるようになって当たり前みたいな傲慢さがある。
だから大きな喜びになっていないのだが、何事もはじめの一歩が大事。
この収穫をしっかり祭りとともに味わおう!
懸案だった 兎や野鳥の肉 はあっけなく食べれた。
だっこされている かあちゃんの前にあった皿にあるのを、手づかみで食べても怒られもしなかった。
少し拍子抜けな感じ。
肉の持つ うまみ と 脂 サイコー!
お祭り気分に村のみんなが浮かれてる。
祭りだワッショイ。
とは、俺はならない。
日本でも、子どもの頃は、出店や盆踊りの音楽の拍子にうかれて祭りは楽しい。
しかし、大人になって子どもを連れて祭りにいくのは、出店の屋台を楽しむ子どもの「サイフ」としてだ。
こころは冷めてる。
そんな感覚と今の気持ちは似ている気もする。
村は総出で27家族130人ほど。
祭りでみんなが騒げば騒ぐほど冷静になってしまった。