初めての魔結晶 1
もう6月の終りです。こちらは本当に涼しい。
文系の頭で科学的に考えるのはとても大変なのですが、
90-(その場所の緯度)+23.4=南中高度
たぶん、夏至の日はこれであっていると思うのです。
地軸の傾きが23.4度であるもとの世界、地球と同じなのか違うのかは、次に秋分の日に地軸の影響が無くなるのでわかるはずです。春分、秋分には、
90-(その場所の緯度)=南中高度 となるはずだから。
1年が365日なのは確認しているので、違う惑星でなくここが地球だと思うのですが、地軸の傾きが違ったり、ポールシフトなんか起こっているかもしれません。
話がそれた。日付と、心の中で「リベリオ天文台」と呼んでいる(棒を立てただけの)庭の観察実験で、今日・明日あたりが夏至の日だと思う。
雪はあまり降らないのだが、涼しいというより、ここら辺はかなり寒い所なのです。だから緯度を調べて見ようと・・・一応、自称 科学の子リベリオ君なので。
もうすぐ正午だ。
三角関数は高校時代 ちょー苦手 だったので、南中高度を棒の長さから影の長さで測るのは俺の頭脳ではなく【計量測定】さんの出番です。
《 70.2° 》
角度も測れるのですね。凄いです。
と、いうことで。ここらの緯度は 90 + 23.4 - 70.2 = 43.2
43.2° って、札幌と同じくらい? (札幌市:43.05)
それにしては寒すぎるだろ。去年も最も温度の高く感じた日でも涼しくて快適だった。やっぱり地球じゃないのかな?
少なくとも俺の知識では経度は太陽から測れない。
あれ、勝手にイギリスが大英帝国で基準をグリニッジにしただけじゃねーの?
人の国を Far East 極東って オメーらから見て ちょー東 てことだろ。
なんか腹立つな。今度1900年頃に転生し、大日本帝国の世界制覇を成し遂げることによって、イギリスを 極西 と呼んでやる~~!
あれ?脱線した。
ここが地球上の何処かとは判断できない という話だけだったのに。
魔法の習得やLVアップは、まーたくすすんでおりましぇん。
あれこれ試してはおるのでごじゃりますが・・・
1週間に一度ずつMP保有量を調べるために、MP切れで意識が飛ぶまでMPを使うことにしている。現在は、成長なのか訓練なのかも検証できないが、MP6には成った。
しかし、MP回復は1日に4、逆にMP1回復するのに6時間かかる。
結局1日にMP4しか使えないので、魔法スキルのレベルが上げられないのだ。こんなことでは、将来凄い魔法を覚えても一生かけてようやくLV3程度にしかならない。
俺の人生、俺が主人公なのに・・・主人公Tueee~できない。
リベリオ予想仮説の発表です。
LV0 12回の失敗
LV1 13回目 スキルが身に付く
LV2 169回目 LVアップ体感
LV3 2197回目 次のLVアップ
もし予想仮説が正しいなら、「たのしい転生生活」っていう夢は「ラブラブ新婚生活」と同じくらい甘ちゃん「坊やだからさ・・・」ってことになる。
かあちゃんが言っていた。
「回復魔法が中級になったの」も予想に当てはめれるぞ。
LV0 素人
LV1 初級
LV2 中級
LV3 上級
26歳のかあちゃんが中級・・・結構、予想いい感じなのかもしれないが、人生の戦略を根本的に変えなければいけない。もう俺も2歳だ。(まだ2歳だろ!)
こちらの世界は「剣と魔法の世界」(まだ決まった訳じゃないぞ!)
これからは「剣の道」で生きていくのだ。(無理に決まってるじゃね~かよ!死亡フラグ立てる気かお前!)
まずは柔軟だ。大人になったときに1度は思ったはず、体の柔らかい小さいときから柔軟体操を続けていればよかったと。
肩・股関節の稼動粋を広げるのだ。2歳に過ぎないこの体、開脚したまま上半身を前の地面にくっつけるという荒業も出来てしまう。まだ体が固くない。このまま柔らかさを保てばいいのだ。
筋力は意識しない。小さいときに筋肉つけると背が伸びないと聞いたことがある。意識するのは俊敏さと瞬発力。ジャンプスクワットや反復横とび、もう少し大きくなってあやしまれなくなったら縄跳びなんかもいいだろう。
・・・1時間も持たない・・・
そんな根性があったわけでない。
せめて、毎日少しずつはちゃんとやろう・・・
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夏も終わりかけ、8月20日
かあちゃんはなんと妊娠6ヶ月位だそうだ。いつも夫婦でやることやっているし、2歳になった俺の世話はかなり楽になった。原始的な生活してる割にちゃんと家族計画しているじゃないか、えらいぞ親父。
元気で立派な体型のかあちゃんはこの俺に妊娠5ヶ月くらいまで、「また太ったんじゃね?」としか思わせなかった。
決して、かあちゃんをディスった訳じゃないぞ。
それより今日は、収穫前に総出で村周辺の害獣・魔獣狩りが行われる。
親父も出動だ。
去年と違い、広場まで様子を見に来れる。森と畑の間に広がる原っぱに、ビッグ・ラビットという兎の魔獣化した種族が出現するらしい。オークのような危険はないそうだが、収穫物を荒らされる可能性と、放っておくとゴブリンが湧きやすくなるそうだ。
楽しみの少ない村では、高みにある村の広場から1kmほどの所で繰り広げられる狩は一種の娯楽だ。爺さん共の解説も面白いし、たまには役立つことも言う。
まず、チームが2つに分けられている。村長のブルーノさんとその腹心ポンツィオさんに率いられるチームと、狩人のエラズモさんドワーフのオロフさんに率いられるチームだ。1kmほど離れると、誰が誰だかわかりにくい。オロフさんは背が低いので草に隠れてしまっている。
エラズモさんが指示を出し待ち構えている方に、村長チームが追い込みをかける。剣をスモールシールドにばんばん打ち付ける音や槍を地面に打ちつけたりして追い込む。
オークのときは追い払うのが目的だったので殺す必要はなかったが、今回は駆除が目的なので殺さなければいけないそうだ。
やれそこで右に回り込めだの、今度は左だ。弓を放てだの爺さんら興奮して叫んでる。突然、そんなんじゃ村の方に逃げてくるぞと、誰かが言った途端、確かに1匹が畑の方に逃げている。
村待機の爺さんグループが7人ほど飛び出した。
3人のじいさんが弓で矢を放ち、そのうち一矢がビッグ・ラビットの足を負傷させ、うずくまっている所に2人がかりで切りかかっていく。しっかり仕留めたようだ。200m位の所なのでよく見えた。
年齢は60超えているが、動きにビビらされた。現代日本のじいさんとは全然格が違う。こちらには実戦の重みがある。
狩をするときの人の動かし方は、結構爺さん共の言っていることは理に適っていて勉強になった。同時に、現場では全体を見る冷静さを保つのが難しいことも容易に想像できる。特に獲物が複数のときに翻弄されるのものだ。遠くからの高みの見物だったからこそ判断できる。
向こうの原っぱではまだ何やらやっているが、皆の視線は近くの爺さん共にある。
2人がかりでビッグ・ラビットの後ろ足を掴んで、引きずりながら帰ってくる。
ガキのように顔を紅潮させ、意気揚々だ。
「やれやれ、まだ若いもんだけには任せられんのう~」
とか言って、冷静ぶってはいるが、めっちゃうれしそう。顔がニヤ付いてるじゃねーか。でも、ばあさん、女・子ども達はやんやの喝采だ。
広場に横たわるビッグ・ラビットは名前のとおりデカイ。
外見は普通の茶色い兎だ。いや、顔つきがいくぶん邪悪さを持ち、歯が兎とは思えない鋭さを持っている。普通の兎は前歯2本が伸びてはいても四角いはずなのに、前歯2本が長くその他の歯もギザギザと犬のように尖っている。
問題は大きさだ。普通の2倍から3倍はありそうだ。
長めのナイフで胸を切り開き、動脈を切って血抜きのようなことをしている。死んでいると思っていたが、血抜きで死んだ。その前は死ぬ寸前なだけだったみたい。血抜きは生きているうちにやらないとダメなのを知った。
バケツに汲んだ井戸の水に、胸を切り裂いた爺さんが心臓あたりから何かを取り出し、丁寧に洗い出した。確かめるように指先程度の小さな石を太陽の光にかざした。
「ま、こんなもんだな」
何気に爺さんがつぶやいたが、周りの大きめの子ども達が、
「見せて~見せて~」
と駆け寄っている。
「順番にだぞ、ケンカすんなよ」
「はーい!」
子どもらは素直に返事した。