科学の子 1
うー、喉が渇いた。
朝のようだ。 ぼーとまわりを見渡す。
ばあちゃんに声をかけ、木の檻から出してもらい、水をもらう。
テーブルのいつもの席によじり登り、イスから外を眺める。
いつもの目覚め時間より、太陽から見て遅いようだ。
9時を過ぎていそうだ。眠りに落ちた時間からから12時間近いのに、まだMPは全開ではなさそうだ。
因みに、両親はベッドで二人ともあられもない姿でまだお休みだ。
昨日は祭りの後、お楽しみだったのだろう。
同じ部屋に、ばあちゃんもいるのに・・・と0歳児の頃は思ったものだが、この世界の田舎じゃ当たり前のようで、昼間でも村でよろしくやっているのを、だっこされて外に出たときに見かけたりした。
とてもそこら辺はおおらかなようだ。
朝ごはんの離乳食を食べさされているとき、
「うさぎ のお肉」
と言ったら、昨日の祭りの残りを少しお皿にのせて出してくれた。
ふと、MP不足は二日酔いの朝みたいなものだな、と思った。
「トイレ」と言ってばあちゃんに連れて行ってもらう。
本当は1人で出来るが、1歳半の偽装である。偽装でつらいのは、オムツの中におもらし、特に大の方である。一人で早くトイレに行きたいと思うが、あと半年我慢だろう。
家に入ろうとするのを、
「お外にいたい」とカタ言で要求したら、
「お庭だけよ」と念をおされて許してくれた。
お庭遊びをするふりをして、庭でMP回復と考え事をする。
科学とは、古代 単なる知識 scientiaに過ぎない。
でも、現代人の俺からすると、ある現象に仮説を立て、実験や観察による実証によって理論を構築することである。
信じられないような魔法が存在するこの世界。
科学の変わりに魔法がある世界。
魔法に科学的にアプローチするしか方法はない。
完全に文系の俺が出来ることが喩え少なくてもだ。
とりあえず、魔法を使えば精神的に疲れる現象は、あやしいファンタジー知識だが、MPというものが魔力、精神力、マナという Magic,Mind,Mana のM Point として、それが減って起こされるものという仮説をたてる。
実験を繰り返し、観察を続けなければいけない。
魔法現象は、何らかの理由で現代人の、あるいは元の世界では起こりえない、起こすことの出来ない現象である。
観察できたものは、【治癒】【計量測定】の2つ。
【治癒】は、人の回復能力を劇的に上昇させ、【計量測定】は、人の計算・認識能力の上昇・・・親父は手をかざし、そこが光って発動していたので、経験的感覚・把握能力の上昇かもしれない。
発動させるときに、意識を集中させることと、精神力が関係する。
そして、望む能力を上昇させるのだ。
元の世界は、たとえば怪我や病気を直すのに、人の体の仕組み、病原菌の解明等を科学的に行ってきた。こちらはそれを魔法的に行ってきたと、理解できなくもない。
ものの計量や測定も、元の世界は数学や計算機、果てはコンピュータのようなものまで作り、科学的に発展したのを、こちらは魔法でやっているとも言える。
SF作家アーサー.C.クラークの「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない」の言葉の反対なのかも?「充分に発達した魔法技術は、科学と見分けが付かない」
この世界でも物理法則は通用している。
ものは重力で下に落ちる。運動の法則もそのままだ。
「エネルギー保存の法則 から魔法がおかしい」との話も聞いたことあるが、もうそんな言葉が魔法の呪文と同じで、俺レベルだと元素レベルのことは理解できるが、原子の中の中性子・陽子・電子になると何のことやらさっぱり?というのと同じだ。
水素(H)がヘリウム(He)に変わるのだから、科学が超発展し、原子核内も電子も操作できれば、銀(Ag)が金(Au)に変えることできるようになるんじゃないの?それって錬金術だろうが。とも思えるわけです。
原子爆弾ってウランの原子崩壊 ここまではある物質をちがう物質に変える錬金術である。その陽子か何かがどうにかなる副作用でものすごい大量の熱を出す。その副作用(もちろん現代人は逆にこちらを主たる作用と考えているのだろうが)の方を利用している。と言えるのでは?
誰かにきっちり教えてほしいのですが、科学と魔法、ついでに錬金も同じだと個人的思えるのは間違っているのだろうか?
こちらの世界に考えがなれすぎたのか?
方法論と発展レベルの差に過ぎないのかも?
あまり賢くない頭で考え事をしていると、正午を過ぎているのを木の影で知った。
MPも完全な気もする。
科学の子リベリオ君としては、実験の基礎となるデータを数値化することにしました。
パチパチパチ。
今、使える魔法【計量測定】の一回の使用MPを1とします。
毎回同じ量を使用しているかどうかも検証していないですが、何も決めないことには仮説も立てられません。
現在をゲームのステータスのように、【計量測定】3回でMP切れになることから、MP(3/3)という状態とします。
MPも筋肉や学力のように成長と訓練で上昇すると仮定して、回復量にあわせて使用し、鍛えることにします。
と、あれこれ考えていると かあちゃんに呼ばれたので、
「あ~い」と返事をし、素直に家に入った。
家に入ると、親父が、
「小屋を作るぞ」とみんなに宣言した。
確かに収穫した小麦はじゃまだ。
何より、去年まで動けなかった俺が歩き、より大きな空間を占めるようになったたのが最大の理由とわかっているが、もともとあった方がよかったんだよと思う。
宣言が必要だったのは、その後の親父の話でなるほどと・・・
村の共用地から木を切り出し、板も作り、鍛冶屋の【ドワーフ】オロフさんから釘や必要なものを買ってそろえる。他の村人にも手伝ってもらうが、いくらかの謝礼も必要。
明後日くる徴税人に税の分の小麦を引き渡した後、必要分を残した後は同じく来る行商人に売りさばく。それでも少し足りない分は蓄えから出す。
ざっとこういう話だった。
1歳半の俺には話がわからないだろうと話していたが、俺は全部理解したし、女性陣二人が金のことですっきりしていない雰囲気をかもし出していたので、
「おとーたん ちゅごーい!」
と言って拍手した。心の中で、そうだよルイージ 女は金のかかるというのがイヤで、合理的判断しないものだ。頑張れよ・・・と上から目線で応援しておいた。
俺のお茶目なセリフで場が和み、家庭の方針が決定した。