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デートなんだからちゃんと可愛くして来てよ?としつこく言われ、とりあえずお気に入りのワンピースと靴で出掛けることにした。


待ち合わせ10分前、着いたよーと春ちゃんにメールをする。

そのまま携帯ゲームでハムスターにご飯をあげていると、前に人影が出来た。


「その服前買ったやつ?やっぱ似合うね」


聞き慣れた春ちゃんの声に、携帯に落としていた視線を上げる。

え、誰だこのイケメン。


「うわぁ何その反応。雫の大好きな春ちゃんですよー」


イタズラっぽく笑うその顔が春ちゃんと重なった。

いや、本人だわ。

カッターシャツにズボンという普通の服装なのになぜか輝いて見える。

ま、眩しい!


「え、ホントに春ちゃん?双子のお兄さんとかじゃなくて?」


髪は変わってない。うん。

顔も化粧はしていないけどよく見たら春ちゃんだ。

てか、化粧してないのにまつ毛長いんですけど、マスカラはしてますよね?してるって言って下さい。

1人で動揺していると爆笑された。


「さぁどうでしょう?」


もちろん本人だと分かっているが、確認したくもなる。

春ちゃんはいつも薄化粧だ。だからすぐ分かると思ったのに、今日はちゃんと男の人に見えてしまう。


「詐欺だ!信じられない」


どっちにしても綺麗な顔に変わりはない。化粧をしても代わり映えのしない自分と比べてしまい地味に凹んだ。

酷いなーとケラケラ笑う春ちゃんを、気が付けば周りの女性がチラチラと見ている。

うわぁ本当にいるんだなぁこういう漫画みたいな人。


「ま、ここでずっと突っ立ってるわけにもいかないし、行くよ」


ナチュラルに差し出された手にうっかり掴まってしまい、自然と手を繋いでいた。

この人慣れてる。

あと、周りの視線が痛いので手を離してもらえると嬉しいな。


その後は映画を観に行き(私がずっと観たかったやつ!)、ご飯を食べ(私好みの店だった!)、雑貨屋さん(これまた私好みの店!)をブラブラした。

その間はずっと手を繋いでいた為、雑貨屋の店員さんに仲良しカップルと間違われた。

1人で慌てて「違います!」と否定しても、店員さんからは照れ屋の一言で片付けられた。誤解だ。

ちなみに春ちゃんは店員さんに「照れ屋で可愛いんです」とか言って爆笑してた。

私の好みを全部把握されているからか、なんかデートプランが完璧なんですけど。

あと、今日初めて春ちゃんの口から「俺」っていう一人称を聞いた。

なんかもう怖いわー。




「どう?楽しい?」


すっかり遅くなった帰り道、にっこりと春ちゃんに言われ、頷くしかなかった。

何となく悔しいけど今まで経験したデートの中で一番楽しい。


「まぁ当たり前だけど。俺も楽しかったし、今度またデートしようね」


最初の一言が余計である。


「いつもの春ちゃんでいい」


なんか知らない人みたいで戸惑う。

思わずそう答えると困った顔で春ちゃんが私を見た。


「なんで?楽しくなかった?」


「いや、楽しかったけど」


ドキドキする。その言葉は飲み込んだ。

今さら春ちゃんにドキドキするとか、ほんと困る。

今までの関係が崩れるのも嫌だ。

春ちゃんはオカマさん!

これは春ちゃんの気まぐれなデートなの!

自分にそう言い聞かせてスッと手を離した。そうだ、最初からこうやって離せば良かったな。なんだか寂しくなった右手を誤魔化すように代わりにギュッと鞄を握りしめた。


「えー?じゃあいいじゃん。俺はまたデートしたいな」


この人確信犯なんですかね?キラッキラな笑顔で言われると頷くしかないじゃないか。

しかも、さっき離した筈の手がいつの間にかまた繋がれている。

どんな早業ですか。

完敗でいいです、もう。


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