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「で?今回の男とは何が原因で別れたの?」
あれからきっちり2か月後、私はまた別れたのである。
男運誰か分けてくれないかな。
「相手に奥さんがいたの。もう私このまま結婚できないんじゃないかな」
このまま結婚せずに会社でお局様になって新入社員とかいびり倒す嫌なおばさんになるんだ。きっと。
そうぼやくと「ドラマの見すぎよ」と春ちゃんは鼻で笑った。
「そもそもあんたは男を見る目がないのよ」
まぁそうなんだろうけど。
春ちゃん程の美人ならこんな事で悩んだりしないんだろうな。
男だけど。
一度、春ちゃんがナンパされている現場を目撃したことがある。
春ちゃんは近づいてくる男をクールに無視しながら携帯を覗き込んでいた。
それを見ながら私もこうなりたいなぁと思ったものだ。
「仕方がないわね、私が良い男の見本をみせてあげるわ!」
どうしてそうなった。
妙案とばかりにはしゃぐ春ちゃんを横目にグラスの氷を突いた。
そもそも春ちゃんは自分の姿を鏡で見てくるべきである。
薄いが化粧をしている春ちゃんは男には見えない。
中身が男だろうが外見は完全に美人なお姉さんである。
私の疑っている視線に気づいたのだろう、春ちゃんはぷーっと頬を膨らませた。
「失礼ねぇ。私会社ではカッコイイ!!って言われているんだから!」
完全に拗ねた顔で春ちゃんは言った。
その言葉に、会社での春ちゃんを想像してみる。
・・・どう考えてもオネェ口調で話している春ちゃんしか出てこない。
自分の想像にちょっと笑いそうになる。
春ちゃんとは5年近く友達をやっているが、春ちゃんが化粧を落としている姿を見たことがない。
実は本当は女性なんじゃないかと考えたことがあるぐらいだ。
「会社の春ちゃんとか見てみたい!!」
「会社は無理ねぇ。代わりに今度デートでもしましょう?」
私の言葉にニッコリ笑いながら春ちゃんは言う。
会社の春ちゃん、本当に想像できないわ。
「春ちゃんとのデートって、いつもの買い物じゃん」
デートと称して何度も春ちゃんの買い物に付き合わされたことを思い出す。
春ちゃんとの買い物は最終的に私の服選びになり、マネキンのごとく着せ替えられるのだ。
そしてその数点は当然のように春ちゃんが精算して私のタンスへとお招きされるわけだが。
ちなみにその服代は受け取ってもらえない。
それじゃあいつもと変わらないと不満を漏らすと、春ちゃんは悪戯っぽく笑って「当日のお楽しみよ」と囁いた。