おわりのはじまり
<pattern 1>
男「……とうとう、終わりが始まるな」
女「何言ってるの、始まりが終わるのよ」
男「始まりは終わらないさ、いつだって終わりが始まるんだ」
女「あら?始まりが終わらないことを、あなたは証明できるの?」
男「終わりが始まらなければ、始まりは終わらない。そういうことだ」
女「何言ってるの…始まりが終わるなら、同時に終わりも始まるのよ。」
男「流石にそれは屁理屈だろう。終わりが始まりを迎えるから、終わりは始まるんだ」
女「そうかしら…でもはお前はもう終わりよぎゅえっ」
男「そうだよ…お前も終わりだよあがががが」
女が男の胸を斧で裂くと同時に、男は工具用レンチで女の頭を叩き潰した。
二人の人生は終わった。
<pattern 2>
飼い主「すまんなポチ、お前を隠して飼っているのが大家にバレた。これからお前との生活を終えなきゃいかん」
飼い主「俺らは今までの生活の終わりを始めなきゃなんねえんだよ…」
ポチ「ならば貴様の人生の終わりを始めよう」
飼い主「ぽちおまえしゃべれゲパッ!」
ポチは飼い主の喉に噛み付き、引きちぎった。
飼い主の人生は終わった。
<pattern 3>
休日の朝方、人通りの多い交差点で殺人鬼が現れた。
「ぎゃはははは、貴様らのこれからの人生の始まりは、終わりを迎えるのだ!」
手に持ったショットガンを四方八方に撃ち、殺人鬼は叫んだ。
流れ弾に当たり、大勢の人が負傷していた。
その中には、運悪く死んでしまった人も居た。
殺人鬼が現れて10分後、殺人鬼の視界を青年が一礼をして横切った。
160cm程しかない身長に、整った黒い礼服を着ている。すこし栗色を帯びたショートヘア、白い肌と、整ってはいるが、おっとりした顔つきからか、青年というより高校生に見える。薄く開いている瞼から、綺麗に澄んだ黒い瞳が垣間見え、口元は淡い微笑を湛えていた。
「あ、こんにちは。今日は良い休日ですよね。因みに僕は滝沢圭一といいます。」
「お前も死ね!」
そう叫び、殺人鬼はショットガンの銃口を滝沢と名乗る青年の胸にあてがえ、ゼロ距離で発砲した。
轟音と共に、滝沢の胸に大きな穴があいた。
血液が大量に溢れ、ズタズタになった臓器が落ちる。その中には半壊した心臓もあった。
だが、本人はそれを気にすることなく、
「実は今日ここに初めて来ましてね…迷っちゃったんですよ。○○デパートにはどこ行けばいいのかわかります?」
と申し訳なさそうな顔で尋ねた。
殺人鬼は驚き、
「う、うわあああああああ」
と情けない声を上げ、顔面めがけて、再び発砲した。
滝沢の頭が吹き飛んだ。顔面の上半分が無くなり、露出した舌がだらしなく垂れている。
「宇和亜有在?それは一体どっちに行けばよろしいので?」
だが、変わらない口調で滝沢が話しかけてきた。
舌が微かに震えるだけだったが、しっかりとした発声だった。
滝沢の言葉を聞いた後に、殺人鬼が銃を落として、背を向けて逃げ出した。
「お、わざわざ案内してくれるんですね。待ってくださいよー」
滝沢は銃を拾い、逃げる殺人鬼を追って発砲した。
殺人鬼の人生は終わった。