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どどど、童貞ちゃうわ!  作者: 100均のルーズリーフ……
6/13



寿さつきとのファーストコンタクトを終えた俺は、流石にいたたまれなくなってそっと彼女の前から姿を消した。


寿は特に引き止めることもせず、というかあの場で一度も口をきかず、俺を見送った。いや、正確には俺を見ていたのかも怪しい。終始目が合わなかった気がする。


しかしあのタイミングてチャイムはないわ。



俺は沈黙とともに教室に入り込み、ゆっくりと椅子を引いた。


無言で自分の机に座り、じっと拳を見つめていたら不思議なことに放課後になっていた。あれ? 現国と現代社会は?


どうやら自分が思ってた以上に昼休みのあれは恥ずかしかったらしい。授業がまったく耳に入ってこなかったみたいだ。


変わったことといえば、その日元木が何回か俺のところに来たらしいが、何の反応もよこさない俺に腹を立てて帰って行ったらしい。ということを後でクラスのやつに聞いた。知らんがな。


ついでに俺の奇行がわりと皆に理解されているので、休み時間から微動だにしない俺を心配すること者が誰一人としていなかったことも付け加えておこう。寂しい。



行きとは逆にマイバイクルをかっ飛ばし、ボロ、もとい趣深い我が家へと帰ってきた。


てんじんてんじんてんじんー、と叫ばん限りに階段を駆け上がり、急いで自室の鍵をかける。


ちょっとエッチな本を買ってきた時の対応に酷似しているね。


通学カバンから取り出したのは例のスライム。くそ、なんか糸引いてやがる。シシガミの首かよこいつ。


文字通り机の上に叩きつけ、乱暴に学習机に座った。


俺の前に相対するのはおじゃまぷよ、もとい謎のスライム。コンドラチェフとかいったか。


こいつの生態について俺は知らないことが多い。


例えばこいつの粘液だけど、触る時はねばねばしているくせに離したらなんともなくなっている。アルコールのように蒸発でもしているのかもしれない。そういったもろもろの生態も気になる。


なぜだか知らないが言葉も通じるようだし、俺はこいつとおしゃべりしようと思った。


ちょうど両親と妹が帰ってこない暫くの間、こいつを理解するのも悪くはない。


「あのさ」


俺はどう切り出そうか迷った。


朝から流れに身を任せてこいつの存在を受け入れてはいたが、冷静になってみると不気味で仕方がなかった。


危害を加えるとは考えにくいが、相応の緊張感をもって俺は投げかけた。


「ちょっと質問とか答えてくれるか?」

【おー、いーぞー】


似合わないアニメ声がスライムから響く。うーん、オタマジャクシの二等兵っぽい声だな。


すうっと息を吸い込む。


「じゃあいくぞ」


俺は数え切れない質問をこいつに浴びせた。まとまっていない言葉も絞り出して、とにかく疑問符を浮かべ続けた。そしてこいつは律儀にも全て答えた。抜粋するならこんな感じで。


「じゃあ質問。お前何者?」


【ものかりぷすー】


「ものかりぷす?」


【このちきゅーになーい】


「宇宙人ってことでいいのか?」


【ちがうけどそれでいー】


「あっそ、じゃあ質問。性別は?」


【おとこー】


「うそぉっ!?」


……などなど、大体は要領を得ない話だったのだが、その中で一つ、興味深い話が出てきた。


それはそろそろ喋り疲れたなと思い、一息ついた時だった。


そろそろ母ちゃん帰ってくるかなーとか、そしたらこいつどうしようかなー、などとぼやーっと小休止していると、


自発的にスライムから口をきいた。



【たぶんそろそろてきくるー】



「てきくるー?」


【えねみー、てきー、わるものー】


敵? 悪者?


あまり表立って使ったことのない言葉だ。こいつのいう敵ってのは人間関係で発生する嫌な奴って意味じゃないんだろうな。


言葉の意味をさして深くも考えず、俺はスライムに向き直った。


【ことぶきさつきをねらってるー】


「アメコミ的展開ってことか?」


【ちがうー。ふつうにひとがことぶきさつきをうばいにくるー】


「なにそれ修羅場? 俺勝てる気しねえんだけど」


何せNTRの経験しかねえからな。


【ぶつりてきにおまえころしにくるー】

「はは、ワロス」


しかしこいつの声どうにかならんのかなー。軍曹じゃないだけマシなんだがいかにもアニメ声だからなぁ。


しかもなんかころすとか言ってるしさ。全部棒読みで言ってるからいちいち似た語感の言葉探すの大変なんだぞ。


……さっきなんつったかな。


えーと、確か、え、あれ?


え、いや待て。さっきなんつった? 条件反射で返したけどなんかとんでもないこと言わなかったか?


「殺しに来るっていったか?」


【そー。ちかいうちにひとりくるー】


「それって……」


『ただいまー』


母親が帰ってきた。


「飯食ったらそれ教えろ。ちょっと下行ってくる」


【おれのもめしー】


「食いもん、食うんだな……」


またこのスライムの余計な知識が増えてしまった。




…………………………………


「ただいまー」


「おかえりママン。お土産はモス? マック? そ、れ、と、も?」


どんどんどんと階段を降りる。相変わらずいつ崩れるかわからない恐ろしい階段だ。


「なに言ってんの? 疲れてるから後にして」


母親との小粋な冗句を交わそうとして失敗した俺は、素早く玄関に置いてある母親の鞄とかをリビングに運ぶことでポイントを稼ぐ。あの、親の高感度的な話な?


「小遣いあげないよ?」

「普通に感謝しねえの?」


俺がひねていると仮に言われるのだとしたら、それは間違いなくこの人の影響を受けている。



男性から見てもだいぶサバサバした性格で、物事をはっきり言うタイプがうちの母親だ。


よく言えばキレイ系。悪く言えば近寄りがたい系。面は悪くないから昔はそこそこモテたような話は聞いたことがあるが、なにぶんその性格のせいでいろいろと問題もやらかす。


外面は完璧だから外では完璧なお母様を演じるのだが、家に帰るとその反動ですごい態度が横暴になる。特に帰宅直後はやばい。腹減ってるからダブルで俺への当たりが辛い。


「晩御飯食べた?」

「いや、母ちゃん待ってた。なんかつくってけろ」

「めんどくさ、自分で作って、ついでの筑紫の分も作って、さらに私と父さんの分も作っといてくれたら良かったのに」


「それ俺が夕飯全部作ってね?」


筑紫とは妹の名前な。念のため。


リビングに着くと荷物を隅っこに適当に置き、弁当箱を中から取り出て流しの中に解体して突っ込んでおく。その間母親はきゅるきゅるきゅるーと雨戸を締める。最近物騒だからな。


「そういえば筑紫帰った?」

「いや、多分まだじゃね? 自転車なかってし、帰った形跡もなかったし」


自分の部屋に荷物だけ置いて出かけたというのなら話は別だが。


母親は「あー、疲れた」とかいいながらアクセサリーの類をぽいぽい外して風呂場へ向かう。いつものパターンだ。


「母ちゃーん」

「あー?」

「風呂洗ってねー」

「今から洗え。ていうかくたばれ」


そういえばスライムとトーキングしてて湯釜洗うの忘れてた。

我が家では時間があるものが風呂を掃除するというルールがある。


母親は仕事で帰宅は六時、親父は八時、筑紫はクラブや塾やらで安定しない。必然的に部活もやっていない俺が実質風呂洗い担当になっている。


掃除をしていると母親からなにやら声がかかった。


「そういえば今日なんかあった?」

「いや、特に何も。かあちゃんは?」

「上司がセクハラしてきた」

「息子にんなこと話すなよ」


幽霊通りのことは言わずに逆に聞き返したらドン引きする答えが返ってきて困った。歳のわりには綺麗なのを認めるがそんなこと息子に話すか普通。


「いやー、これはもう一回殴るしかないかな、なんつって。あのハゲキモいんだな」

「しかも話続けるのかよ!」


なんて母親だ。


「うーん。なんていうかこう、やられっぱなしじゃ虫が収まらないというか」

「刑事罰に問われることはしないでくれよ」

「あんたじゃないんだからしないわよ」

「し、信じられん……」

「あ? なんか言った?」


どうしようもないちゃらんぽらんな母親だが、一つだけ尊敬している所がある。それはさっきみたいにいつも帰宅すると俺に今日どうだった? と聞いてくるところだ。


中学の時とかうぜえって思っていたのだが、そうやって家族との調和を自分から取ろうというところは素直に感心できる。


これは本当に気づくか気づかないかなのだ。


家族が自分に関心を向けている、お前のことが知りたいんだと、見ていてくれる。


多分無意識でやってるんだろうけど、そこがまた俺の中の評価を上げていた。


「あ、そういやさ、母ちゃん幽霊通りって分かる?」


よし。風呂ピカピカ。市販の洗剤すげえ。


濡れた手を制服のカッターで拭きながら居間に戻ると、母親は夕飯の支度を始めている最中で、まな板の上にはキャベツが一玉のっている。おい使い過ぎだろ。


「幽霊通り? 知らないけど」

「ほら、あの小学校の近くの暗いところ」

「あぁ、あそこね。あそこがどうかした?」

「いや、あそこの占い師の怪談聞いたことない?」

「うーん、ない」

「はっきりと言いやがって」

「私はほら、そういうの興味ないから。なんだったら筑紫に聞けば? あの子ならわかるでしょ」

「あいつが俺とこんな話するかなぁ」

「そろそろ仲良くしなさい」


ざくざくとキャベツを細長く切り刻む母親の姿を見ていると、玄関の扉が無言で開いた。母親はフライパンでなにやら炒めながら反応する。


「おかえりー。筑紫帰ったー?」

「ただいま」


我が家の妹様の帰宅だった。


スクールバッグを肩に担ぎ、髪の毛は少し茶色に染めている。薄く化粧もしているようで、いかにも女子中学生のテンプレのような装備だ。


出迎えてやろうか。


どたどたと玄関まで走り、ふんふん鼻息を荒げて筑紫の面を拝む。うんうん俺きめえ。


「よう、筑紫お帰り! 今日も学校楽しかったかい?」


「おかーさん。私今日外で食べてきたから晩御飯いらない」


「はぁ? そういうことは先にメールしろつったろ」


おかしいな。筑紫ちゃん俺の方見てないよ?


道を譲り、柑橘系の清涼剤が俺の鼻腔を擽った。クラブ帰りなんだろうな。


筑紫は現在中学三年生。部活もそろそろ引退に近づいていて、最後の大会が来月の頭にあるらしい。


部活に塾。この二つを両立させるのは大変だろう。


労いの言葉でもかけてやろうと思ったが、筑紫はどうも俺のことを嫌っているらしく、今まで仲良く会話したことがない。大抵俺のことを無視し、その隣にいる母親とだけ仲良く喋る。


まったく。困ったやつだ。これはあれだ、思春期でいう「お父さんの後にお風呂使いたくない!」とかわがまま抜かすクソジャリの反応とかと一緒だ。


そうかそうか。貴様俺のことを父のように思っていたのか。あれ、となると我が家の大黒柱はなんなのだろう。うん、や、まぁどうでもいいか。


いずれ時が解決してくれるだろう。筑紫も今はまだ不安定な時期なのだ。だからいつか俺のことを受け入れる日が来る。人間はそういう風にできている。


笑顔を崩さないまま、俺は意気揚々と女二人の会話を邪魔しに入った。



………………………………………


本題だ。

隣には筑紫が部屋にいる。だから俺はなるべく小さな声で頼むと前置きして、スライムに対峙した。


「で、さっきの話の続きだけど」


飯のついでに風呂も入った俺は、夕食の時に失敬した唐揚げにむしゃぶりついてるスライムを促す。


夕飯は美味かった。殆ど冷凍食品だった気がするけどあの謎の味付けの野菜炒めはめちゃくちゃ美味かった。


ぶひひひとお腹を撫で回しているとスライムも食べ終えたようだ。げっぷすんなよきたねえ。


【るーるぶっくー】


スライムの言葉と同時に鞄がから光が零れた。中から本を取り出し、ページを開くと項目が増えていた。


でもなんだこりゃ、今回はルールとは違うようだ。


浮かび上がってきたのは手形。


ちょうど、習字のお手本で使う朱色の墨汁で象ったような手形が浮かび上がっていた。


「えい」


それに自分の掌を当ててみた。

何も起こらなかった。


「まあそりゃそうか」


苦笑しながら本を閉じる。すると光も小さくなって消えた。どういう原理なのかね。


【つかいかたはまちがってなーい。でもまだたたかいじゃないからできなーい】


「はぁ、さいですか」


使いかたってなんだろう。俺はあの信号前の止まれって書いてある足型のところに自分の足をピッタリ乗せて遊ぶ小学生みたいなことしただけなんだが。



「つーかさっきから意味わかんねえよ。自分の中で話展開してない? 伝わるように説明しろよ」


俺は少しいらついた口調で切れた。いちいちこいつの説明は遠回りなのだ。


【それぶきー】


「武器? この本が?」


見えないな。なに、これで人殴るの?

普通にバットとかの方が強そうなんだけど。


【はつどうじょうけんがあーる】


「なにそれ、心踊るんだけど!」


発動条件って何!? ていうか武器に発動条件とかいろいろ突っ込むところ多いけど、そのなんたらの条件って中二心くすぐんだけど! 俺もまだ青い。


【はじめにいっとくとなー】


「なんだよ」


さっさとその発動条件ってのを教えろよ。うわーなに起こるんだろう。テンプレとしては魔術とか? うひょー。炎とか出せちゃうのかな、かな。古いか。


【ことぶきさつきをねらってるのはおまえだけじゃなーい】


「マジかよ」


なんか一気に冷めたぞ。おい、占い師のおっさん。おい。あの言葉嘘か?


【だからうばいあいおこるー】


「まぁ、わからなくも、ない、けど。奪い合い、ねー、なんつーかイタいとかいうか、中学二年というか、それどこのスレタイですというか……でも修羅場とか勘弁だわー。ていうか武器の説明」


【それはあとなー。ことぶきさつきはいろんなやつにねらわれてるー】


「へえ、あ、そう。うんうんわかるわかる。去年だと新島とか、あと田畑か。先輩で言うと大林先輩とか? いやー、全員三日もたなかったなー」


懐かしい思い出だ。特に田畑なんて俺に電話してきたからな。よく覚えてる。

その当時寿なんてどうでもよかったから、へー、あ、そう、残念だったねー。みたいなことしか言ってなかった気がするが。


【ちがうー】

「なにが違うよ狙われまくりだぞあいつ」

【ねらわれるのいみがちがうー】


「意味、ねえ」


俺はスライムの言葉を反復しながら、ははぁと促す。


でも、なんだろうか。


根底から俺とこの生物の会話が噛み合っていない気がする。


今回の会話からじゃない。初めからだ。


俺はおっさんから言われた、彼女ができるかもしれないから、という理由で寿を狙うようになったのだが、このスライムはそのことをもっと重く考えているように見える。


違うな。もともと何か大きな事件の中に、何も知らずに放り込まれたと言った感じか。


狙うとか殺されるとか。普通言わない。


おっさんは何か隠していたのだろうか。蛇の件と言い、どうして俺はあの言葉をほいほい信じてしまったのだろう。


頭の中に浮かんだのは陰謀の二文字。


自分が非常に早まったことをしてしまったのではないかという冷たい汗が背中から流れた。それでもスライムの発言は止まらない。俺を置いてこいつは先に進める。


【ほんきでうばいあうー。おまえころされるー】


「さっきの話か。殺されるってどういう意味だよ。殴られたりすんの? 俺。ポリスメンにチクったら解決しねえの?」


自分でも何を言っているのかわからない。ただお調子めいた言葉を並べているが内心はそわそわしていて落ち着かない。


自分でも気がついてはいるのだ。


このスライムの言っていることは嘘ではないんじゃないかということに。


現に、半ば感覚が麻痺しているがこのような現実には存在しない謎のミュータントもこの場にいる。あり得ないという俺の言葉で切って捨てるのは危険だ。


【そういうじげんじゃなーい】


でもなんだろうな。このスライムだからかわからないけど、緊迫感ねえなー。


殺すとかいってるけどこれあれじゃね? 小学生が喧嘩で「ころすぞお前!」とか凄んで見せるあれじゃね? 言われると一瞬ひるむけど、現実的に殺すとか何を言ってんのかね君、みたいな空気になる。


ひとまず軽くいくことにした。


考えてみるとたかが一人の女にアタックかますだけでそこまでバイオレンスなこと起こる方がおかしい。一国の王女とかならまだわかるかもしれないけどたかだか女子高校生だ。


なんかやっぱり少し混乱してるのか? 俺。思考が変だ。


そうか。多分俺がこんな意味のわからない思想にふけるのはこのスライムのせいだ。


こいつの口調と存在が合わなさすぎて真面目に聞けばいいのか冗談で聞き流せばいいのかわからなくさせる。だから俺はこんなにも混乱しているのだ。


「俺の中の解釈だと、寿さつきを巡って修羅場が起きて、そんで寿を巡って殺し合い勃発、で、俺死ぬ可能性あり、と、らこんなんか?」


【しゅらばじゃないけどだいたいそー】


そこは譲らないんだな。


「なんかイマイチ信じがたいな」


特に殺し合いの所が。一瞬ビートたけしが頭に出てきたよ。


【そのときになればわかるー】


「ていうかなんで寿なんだよ。確かに可愛いけどぶっちゃけそれだけだぞ?」


寿のことを多少知っているものは彼女に深く関わろうとはしないはずだ。

俺のような例外は除いて。


世界の干渉を受けない唯一の存在。


占いのおっさんは確かにそう言った。


電波だなーとか思っていたが、ひょっとしたらそれが関係しているのか?

じゃあ、ひょっとして。


「ん? なぁ、ひょっとして奪いに来るってのは俺みたいなやつのことか? 俺みたいにおっさんに言われて、お前みたいなのと寿落とせみたいなこと言われた奴らなのか?」


ちょっとした仮説。


見方を変えてみた。

ただ殺すだの殺さないだのと物騒な言葉、というよりイタい発言の前に、ひょっとしたら自分のようにおっさんに何か言われて寿につきまとう輩が現れるのかと思ったのだ。


スライムはキョトンとした。

間違っていたのだろうか。


【さっきからそーいってるぞー】

「言ってねえよ!」


このスライムの説明能力にびっくりだった。おいおっさん。もうちょい知能指数の高いやつよこしてこいよ。


「じゃあさっきの手形はなんだ。あれもなんか意味あんだろ?」


【あるー、け、ど、きょ、は、むー】


「あん?」


なんだ。いきなりぶっ壊れたイヤホンみたいな飛び飛びの音になったぞ。


「おい! こら、ていうかさっきの武器の話もしてねえ! つか、おい!」


そしてスライムはピクリとも動かなくなった。


「おい、おいって」


恐る恐る触ってみるとやはり生暖かく湿っている。

規則正しく動く呼吸。動かなくなった体。


「寝たのか?」


どうやらこの観察員、寝るらしい。またいらん知識が……



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